最後の嘘を
あの日から、僕達は恋人のように接しはじめた。
僕は、彼女の側にいると今までの自分が嘘のように、嘘をつかなくなっていた。
そんなある日のこと、僕と彼女は会う約束をしていた。
その日、珍しく彼女はまた乗る電車を間違えたと連絡が入った、あの日の喫茶店で待ち合わせることになった。
僕は、笑いながら
「まるで初めての待ち合わせの時みたいだ」
というと、彼女はまた申し訳なさそうな顔をする、そんな彼女がとても可愛く思う。
この日、僕は心に決めいたことがある、それは彼女に告白をするということだ。
僕達は、恋人のように接しはじめたと言ったが、それは、あくまで「ように」であって、恋人ではない。
そんな、曖昧な関係に今日、僕は終止符を打つことを決めた。
その機会はすぐにやってきた、彼女との話に一区切りついた時、僕はすかさず彼女に、
「僕は、君のことが好きだ。
あの日、出会ったことは偶然ではないと思う、あれはきっと運命だったんだ。
あの日から、僕の側に君がいることが当たり前になっていて、今後その当たり前がなくなるということはとてもじゃないけど、考えられない。
どうか、僕と結婚を前提にお付き合いしてください。」
彼女は、ポカーンと惚けた表情をして、顔を赤らめ、首を縦に振ってくれた。
ーーーその日、僕達は恋人になったーーー
幸せは、不幸の前触れなどと、どこかの学者が唱えていたな、確か「反転反応」だっけ、なんて捻くれたことを考えながら横を見ると、見えてないはずの指輪を撫でながら幸せそうにしている彼女がいる。
彼女は、何があっても不幸から守ってあげるなんてことを考えが自分から出てくるなんて、彼女に出会う前の自分は大層驚くだろうな。
そんな事を考えていると、向こうから大声を上げて走ってくる男がいる、手には刃物を持っていることに気づき、僕は咄嗟に彼女を抱き寄せかばった。
瞬間的に、背中に鋭い痛みが走る、クッソイッテェなんて心の中で悪態をついていると彼女が
「何があったんですか?」
などと不安そうな顔をしている、あぁ、彼女にそんな顔をして欲しくない、そう思った僕は
ーーーその時、初めて彼女に嘘をついたーーー
「大丈夫、なにもなかったよ。
あぁ、僕はさっきの喫茶店に忘れ物してきてしまったみたいだ。
君ともっと一緒に居たかったのに、ここからは一人で帰れるね?」
よくもまぁ、こんな流暢な嘘がスラスラと出てくるよなと思う。
その言葉を聞いた彼女は
「そうですか、何もないならよかった」
とフワッとした笑顔を浮かべ
「私を子供扱いしないでください、ちゃんと一人で帰れます。」
なんて頬を膨らませる。
あぁ、そんなコロコロと表情を変える彼女を最期に見れてよかったと思いながら、彼女に
「それじゃあ、さようなら。
僕の愛しい人、寄り道せずにちゃんとお家に帰るんだよ。」
と戯けて言う。
彼女はまたフワッと笑い
「はぁい」
なんていいながら、嬉しそうな足取りで駅へと向かって言った。
僕は、もう限界だった。
通り魔の男は、駅の方角とは違う方向に行ったのを見たから、そこは安心できるななんて思いながら、すぐそばのガードレールに寄りかかる。
ボーっとしていく頭の中で、彼女のことだけを考え、最後の最期で嘘をついたことを後悔しながら、意識が遠のいていった。
以上が、僕の最後についた嘘の話だ。
ってことで、冒頭につながるわけだが・・・・
なんだよ神さまも最後まで語らせてくれないなんて、大層捻くれてやがるな。
なんて、考えていると、身体がどんどん重くなっていくのを感じる、右手に暖かい何かを感じる。
「ん?
ここは、いったい?」
「よかった、本当によかった」
横を見ると、僕の手を握って顔をグシャグシャにしている彼女がいた。
「ああ、僕は生きていたのか。」
僕がそういうと、彼女は
「バカ!なんで、あの時何にもないって言ったの?」
話を聞いていると、彼女は駅に着く前に悲鳴が聞こえて戻って来たようだ、僕の嘘は意味なく終わったらしい
「ごめんね、僕はあの時死ぬことを覚悟してたし、最期は君の笑顔を見たかったんだ」
と言って彼女の顔に手を触れる、力が思ったよりも入らない
「結婚式はどこで上げようか?」
僕は彼女に問いかける、彼女はハッとした表情で少し悲しい顔をしながら
「・・・海が見えるところが、いいかな」
僕は、知っている嘘をつき慣れてない人が嘘をつく時は決まって今の彼女の様な顔をする。
「君は海はみえないのに?」
僕は聞く、
「・・・わ、私海す、好きだから・・・」
あぁ、そんな顔しないでおくれ
「・・・・だから、だから早く元気になってね」
君は本当に優しいんだね僕はそう思いながら
「僕はもう元気さ、だから笑っておくれ?
君の笑顔で僕はもっと元気になれるから」
彼女は戸惑いの表情を見せながら、笑顔を作ってくれた。
そして、僕はーーーーーー
海風が凪ぐ教会、そこに一人佇む女性がいた、彼女は少し儚げな表情をしている。
「おまたせ」
僕は彼女に声をかけてかける、
「もう遅いよ」
僕は彼女の側は行き、手を取る
「行こうか」
彼女は、頬を赤らめ
「うん」
そんな、やり取りをしながら、二人は教会の奥へと歩いて行く。
この話は、僕の最後の嘘の話だ。
え?思っていた物語の展開と違うって?
それは、君たちが僕の嘘に騙されたってことだ。
ーーーあぁ、やっぱり僕は嘘吐きだーーー
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
反響次第では、番外編などを考えております。
ご感想、御アドバイス等ありましたらよろしくお願いします。
というのが、お出かけ用の意見ですね。
今回、初投稿ということもあって、人に読んでもらえるのか、誤字脱字などのはないかなどの不安点がありすぎて、緊張がやばかったです。
このような拙い文章を最後まで読んでいただいた物好きさん達ありがとうございました。
以後、新連載などがあった時はよろしくお願いいたします。




