第4話 月と逃げる夜
あかりの足は、地面から離れていた。
気づいたときには、身体がふわりと宙に浮いていた。いや、浮いているのではない。抱えられている。
月読命の腕の中だった。
「ちょ、ちょっと待って! 待って待って待って!」
あかりは思わず男の肩にしがみついた。
白銀の衣が手の掌に握り込まれる。見た目よりもずっと滑らかで、ひんやりとした冷たい印象だったが意外とそうでもない。
近い。何よりもまず、顔が近い。恐ろしく整った男の顔が、すぐそこにある。ついさっき出会ったばかりの、神様を名乗る男。その腕に抱きかかえられて、自分はいま、すごい速さで夜の神社の境内を駆け抜けている。何から驚けばいいのか、もう分からない。それなのに、混乱した頭が真っ先に意識しているのは、すぐそこにある月読命の顔だった。息がかかるほどではない。それでも、その存在そのものが、触れてもいないところにまで入り込んでくるみたいだ。
「なぜ待つ」
月読命は、あかりを抱き上げたまま、石段を駆け下りていく。
段差を下っているはずなのに、不思議なくらい身体は揺れない。まるで長いすべり台を一気に滑り降りているような感覚だった。夜風だけが、頬を勢いよく撫でていく。
ふいに、月明かりが一瞬だけ陰った。
見上げると、鳥居の横木が頭上を流れていく。鳥居を抜けると、遮られていた月明かりが再び降り注いだ。
見上げた先には、白い満月が浮かんでいる。
――ちゃんと、お邪魔しましたって言ってない。
いや、今それどころじゃない。
「ちょっと! 普通、抱き上げる前に一言ありますよね!?」
「そなたの足では、遅いと思った」
「失礼ですね! 走れます!」
「息が乱れていた」
「乱れてましたけど!」
「ならば、我が運ぶ方が早い」
「理屈はそうだけど、感情が追いつかないんです!」
背後から、車のドアが閉まる音がした。
あかりの言葉が、喉の奥で止まる。
月読命の目が、わずかに細くなった。
「来る」
「……さっきの人たち?」
「何者かは分からぬ。だが、只人が持たざる物の気配がする」
そう言った直後、景色の流れる速さが一段増し、あかりは思わず月読命の肩へしがみつく力を強めた。
けれど、月読命はそのまま道なりに走り続けることはしなかった。
ふいに進路を変え、道を外れる。
「え、そっちは――」
あかりが声を上げるより早く、木立が途切れ、その先に堤防が現れた。
月読命はあかりを抱いたまま、それを一気に駆け上がる。
目の前に、夜の川が広がった。
河原を覆う草が風に波打ち、その向こうで黒い水面が静かに流れている。対岸は遠い。見渡しても、すぐ近くに橋らしいものはない。
「ちょっと待って、橋――」
「遠い」
「遠いって、まさか――」
月読命は堤防を駆け降り、そのまま河原の地面を強く蹴った。
次の瞬間、二人の身体が夜空へ飛び上がった。
「――っ!」
あかりは悲鳴を飲み込み、月読命の首にしがみついた。
視界の端で、河原が一気に遠ざかっていく。
草むらも、堤防も、あっという間に小さくなった。
風が髪をさらい、火照った頬を撫でた。川面を渡ってきた風には、夏の夜らしい湿り気と、かすかな水の匂いが混じっている。
月読命の白銀の衣が風を受けて大きく後方へはためいていた。
眼下の川には、満月が揺れていた。
黒い水面を白い光が細長く貫き、揺れるたびに銀色の道がほどけては結び直されている。
そして、その光の真上を、二人は飛んでいた。
あかりは息をするのも忘れた。怖い。高い。何が起きているのか、まるで意味が分からない。
それなのに、目を閉じることができなかった。
視線を上げると、月読命の向こうに大きな満月があった。
月を背負うようにして、自分を抱いた神様が夜空を渡っている。
あまりにも現実離れした光景だった。
夢なら、きっとこんなふうに感じるのだろう。
けれど、月読命の腕は確かに自分を支えている。衣を握る指には感触があり、耳元では風の音が鳴っていた。
あかりは、溜め込んでいた息をようやく吐き出した。
「月読命さん! 飛べるなら最初に言ってください!」
そのまま風に負けないよう、声を張って文句をぶつけた。
「飛んではおらぬ」
「え?」
「地を蹴って、跳ねただけだ」
あかりは思わず眼下を見た。
川がある。
しかも、自分たちは、その川にかかる橋よりも高い場所を進んでいる。
どう見ても飛んでいる。
「飛んでるってば!」
「鳥のように羽ばたいてはおらぬ」
「そういう分類の話じゃありません!」
「ならば、何の話だ」
「人間の常識の話です!」
「人の常識は、面妖だな」
「今それを言うのはこっちです!」
月読命は本気で分かっていないらしい。
あかりは言い返しかけた言葉を飲み込んだ。この人と今、常識について話し合っても仕方がない。
それよりも、もっと重大な問題がある。
その間にも、二人は川の中央を越えていた。
ほんの一瞬、風が弱まった。
あかりは月読命の肩越しに、もう一度だけ満月を見た。
月と川と、白銀の神様。
きっと、一生忘れない。
次の瞬間、対岸の堤防が迫る。
月読命はあかりを抱いたまま、音もなく地面へ降り立った。
ほとんど揺れなかった。
けれど、あかりの心臓だけは、空に置き去りにされたように激しく鳴っていた。
そして足音がしない。
着地したはずなのに、走っているはずなのに、月読命の足は夜そのものを渡っているようだった。堤防を駆け上がり、木々の影を抜け、住宅街へ続く細い道へ入っていく。
あかりは彼の首元に腕を回したまま、必死に声を上げた。
「ちょ、ちょっと……!」
「何だ」
「速い! いや、速いのに揺れないのも怖い! あと近い!」
「近い」
「顔です! 顔!」
月読命はあかりの顔を見た。
「近いな」
「近いな……じゃないんです!」
月読命は、まだよく分かっていない顔をしていた。
その顔がまた、無駄に綺麗だった。
月明かりを受けた睫毛が白く光り、顔の輪郭が彫刻みたいに整っている。そんな顔が、こちらをわずかに見下ろしている。距離が近い。近すぎる。
あかりの心臓は、逃走とは別の理由で限界に近かった。自分が今どういう状態にあるのかが問題だ。
女子大生が、月の神様にお姫様抱っこされて、夜の住宅街を脅威的な速さで疾走している。
どう考えても現実ではない。
現実ではないのに、首筋には汗がにじんでいた。つまり、現実だ。
月読命の腕は冷たいわけではない。衣越しに伝わる体温が、夢ではないことを嫌でも実感させてくる。
「……あの」
「何だ」
「一回、降ろしてください」
「危険だ」
「危険なのはこの状態です!」
「追われている」
「それは分かってます。でも、このまま街灯の下に出たら別の意味で通報されます!」
「通報」
「あとで説明します!」
月読命が辺りを見回すと、路地の先には街灯の明かりがあり、住宅の窓がいくつか並んで、その向こうには自動販売機の光も見えた。
人影はない。
けれど、誰かがカーテンの隙間から外を見るかもしれない。犬の散歩をしている人が現れるかもしれない。たまたま車が通ることだってある。
こんなところを見られたら、終わる。
いや、終わるというほどではないかもしれない。だが、あかりの社会的な何かは確実に傷つく。
こんなことを考えている間にも、夜の住宅街はものすごい勢いで後方へ流れていく。
「月読命さん」
あかりは、できるだけ真剣な声を出した。
「降ろしてください」
月読命は、あかりへ視線を落とした。
「月読命さん」
「なぜ、急に呼び方が硬くなった」
「本気だからです」
「本気で降りたいのか」
「本気です」
「そなたは、走っていないのに汗をかいている」
「誰のせいだと思ってるんですか!」
あかりは思わず大声を上げた。
月読命は、涼しい顔をしている。
あかりを抱えて神社からここまで駆け続け、しかも追われているというのに、息ひとつ乱れていない。汗もかいていない。衣の乱れもない。
一方のあかりは、走ってすらいないのに汗だくだった。
首筋にも、背中にも、額にも、汗が伝っている。
夏の夜の熱と、逃走の緊張と、抱き上げられている恥ずかしさが重なって、身体中から変な汗が出ている。
「……面妖だ」
「今の私を古語で片づけないでください」
「人は、運ばれているだけでも汗をかくのか」
「この状況なら、かきます!」
「暑いのか」
「暑いし、恥ずかしいし、怖いし、近いんです!」
「喚くでない」
「速いし、顔いいし、お姫様ぁ……もう無理!」
月読命は、ようやく足を止めた。そして、どこか不服そうに言った。
「……分かった」
「本当に分かりました?」
「降ろす」
「お願いします」
月読命は、あかりを驚くほど丁寧に地面へ下ろした。まるで壊れ物でも扱うような手つきだった。
あかりの足が地面に触れた瞬間、少しだけ体がふらつくと、月読命がすぐに腕を伸ばした。
あかりは慌てて一歩下がった。
「大丈夫です!」
「ふらついた」
「大丈夫です!」
「汗が多い」
「それ以上言ったら怒りますよ!」
「怒る」
「はい。めちゃくちゃ怒ります」
月読命は、あかりの顔をじっと見た。
あかりは手の甲で額の汗をぬぐった。目の前の月読命は、相変わらず涼しい顔をしている。それがなんだか腹立たしくて、でもおかしくて、あかりは息を整えながら小さく笑った。
「何を笑う」
「いや……神様って、ずるいなと思って」
「ずるい」
「走っても汗かかないし、息切れもしないし、顔も崩れないし」
「顔は、崩れるものなのか」
「人間はけっこう崩れます」
「そなたの顔は整っている」
あかりは月読命の顔から、何の含みも見て取れなかった。ただ事実を口にしただけなのだろう。
「……そういうのも、あんまり簡単に言わない方がいいです」
「なぜ」
「人間界では、危険なので」
「また危険か」
「はい。現代社会は危険が多いんです」
遠くで、救急車のサイレンが鳴っていた。夜の住宅街を縫うように、その音がかすかに近づいては遠ざかっていく。
「人の世は、難しいな」
「だいぶ難しいです」
あかりは一度だけ深呼吸をして、周囲へ目をやった。
住宅街は静まり返っている。普通の車が、住宅街をあのスピードで追って来られるとは思えない。けれど、もう安心できるほど離れたのかまでは分からなかった。
「ここからは歩きます」
「逃げ切れるのか」
「全力疾走より、目立たないことを優先します。追われているときほど、普通の顔で歩く。たぶん」
「たぶん」
「確信はないです。でも、現代では目立つ方が危険です」
「では、普通に歩く」
「そうです。できるだけ普通に」
月読命は自分の衣を見下ろした。
白銀の衣。広い袖。足元で薄く流れる裾。淡く重なる銀の模様。
どう見ても、普通とはかなり遠い。
「……できるだけ、その、光らないでください」
「光る?」
「服とか、髪とか、存在感とか、全部です」
「存在感を消せばよいのか」
「え、できるの?」
月読命は、わずかに目を伏せた。
次の瞬間、彼の輪郭が少しだけ薄くなったような気がした。
消えたわけではない。そこにいる。けれど、強すぎた気配がふっと遠のいた。白銀の衣も、ただの白っぽい変わった服に見えなくもない。
見えなくもない、程度だが。
あかりは目を丸くした。
「……便利」
「便利とは、褒め言葉か」
「現代ではかなり褒め言葉です」
「ならば、よい」
月読命は少しだけ満足そうにした。
その顔を見て、あかりはまた胸が変に鳴るのを感じた。
だめだ。
今のはよくない。
顔の良すぎる神様が、素直に褒められて嬉しそうにするのは、かなりよくない。
「行きますよ、ツク」
口に出してから、あかりは固まった。
月読命も、動きを止めた。そして、静かに繰り返す。
「……ツク」
あかりは顔が熱くなるのを感じた。
「いや、すみません。月読命って毎回呼ぶの、長いなと思って。あと、外でその名前を呼ぶのもまずいので。仮です。仮の呼び名です」
「ツク」
「嫌ならやめます」
月読命は、不思議そうに、けれど嫌ではなさそうに自分の胸へ手を当てた。
「……いや、構わぬ」
「神様相手に失礼でした?」
「分からぬ」
「分からないんだ」
「だが、悪くはない」
「じゃあ、ツクで。外では絶対に月読命って呼びません。目立つので」
「分かった」
「あと、私のことは、あかりでいいです。『そなた』って呼ばれると時代劇感が強すぎるので」
「時代劇」
「そこはあとで説明します」
月読命は少し考えたあと、静かに言った。
「あかり」
名前を呼ばれた瞬間、あかりは足を止めそうになった。
ただ呼ばれただけだ。
それなのに、あかりはまた胸がざわめくのを感じた。神社で感じたものとは少し違う。怖さでも、寂しさでもない。もっと近くて、もっと扱いに困るもの。
「……はい」
「行こう」
「それ、私のセリフです」
あかりは小さく笑った。 それから二人は、夜の住宅街を歩き始めた。
街灯の少ない道を選び、できるだけ人通りのない角を曲がる。コンビニの明かりが見えるたび、あかりは月読命の袖を引いて遠回りした。
「なぜ、あの明るい建物を避ける」
「コンビニです。便利ですけど、今のツクには危険地帯です」
「魔の巣か」
「だいたい合ってます。監視カメラがあります」
「かめら」
「人や物の姿を記録する道具です」
「記録」
月読命の声が少しだけ低くなった。
あかりは横目で彼を見た。
「どうしました?」
「我は、記録に残っているのか」
「え?」
「月読命という名は、人の世に残っているのだろう」
「ああ……はい。残ってます。古事記とか、日本書紀とか。あと、神社とか、伝承とか。正直、他の神様に比べると少ないですけど」
「少ない」
「でも、消えてはいません」
月読命は黙った。その沈黙は、あかりには少し痛かった。
神様で、古い神話の中にいる存在なのに、彼はまるで、自分が本当に忘れられていないのかを確かめる子どものようだった。
「……少なくても」
あかりは前を向いたまま、歩みを緩めた。
「私は、知ってましたよ」
月読命が立ち止まる。あかりも二歩遅れて足を止めた。塀の向こうで室外機が低く唸り、生ぬるい風が狭い路地を抜けていく。
振り返ると、月読命はこちらを見ていた。
「月の神様。夜の神様。あんまり出番は多くないけど、名前はずっと覚えてました」
「あかりが」
「はい」
「覚えていたのか」
「はい」
「そうか」
月読命が空を見上げた。あかりもつられて顔を上げる。
満月が住宅街の上に浮かんでいた。電線が月を横切り、建物が光を切り分けている。月読神社で見たときよりも、近くに感じられた。
満月を見ていると、胸の奥にまた水溜まりができるような感覚を覚えた。昔からある、理由のない寂しさ。
けれど今夜は、その水面に誰かの影が映っている。
隣を見る。月明かりに照らされた月読命の横顔は、きれいだった。
神聖な場所にいたはずの月を、日常へ連れてきてしまったような気がした。
――いや、月と一緒に逃げてきたのか。
「ツク」
「何だ」
「とりあえず、今日のところは生き延びましょう」
「我は神だ。死にはせぬ」
「そういう意味じゃないです。現代社会的に、無事に朝を迎えましょうって意味です」
「現代社会は、神より強いのか」
「ある意味では、かなり強いです」
「恐ろしいな」
「でしょう?」
あかりが笑うと、月読命もほんの少しだけ目元を緩めたような気がした。月の光が薄い雲に遮られたから、見間違えただけかもしれない。
やがて、あかりのアパートが見えてきた。
二階建ての小さな建物。築年数はそれなり。駅から少し離れている分、家賃は学生にもぎりぎり払える。外階段の鉄の手すりは少し錆びていて、夜は共用灯が頼りなく光っている。
あかりは建物の前で立ち止まった。
急に、現実感が襲ってきた。
自分は今、神様を部屋に連れて帰ろうとしている。
しかも、男性の姿をした神様を。
いや、神様だから男性という分類でいいのかは分からない。だが見た目は完全に男だ。背が高く、顔が整いすぎていて、白銀の衣を着ていて、現代常識がなくて、月の神域に帰れなくて、謎の車に追われている。
情報量が多すぎる。
「……あの」
あかりは、自分の部屋の窓を見上げると当然だけれど、そこは暗かった。いつもと同じ、ただの自分の部屋だ。けれど今夜は、その暗さがいつもより深く見えた。
「ここから先は、本当に現代社会なので」
「ここまでも、人の世ではなかったのか」
「今までは外です。部屋は、もっと現実です」
「よく分からぬ」
「私も、もうよく分かってません」
あかりは鍵を握りしめた。汗はだいぶ引いたはずなのに、手の掌はかなり湿っている。
「とりあえず、今夜だけです」
「今夜だけ」
「はい。今夜だけ、私の部屋に隠れてください。明日になったら、帰る方法とか、いろいろ考えます」
月読命は、あかりの部屋の窓を見上げた。
それから静かに言った。
「そなたは、我を匿うのか」
「そなたではありません、あかりです」
「……あかり」
「……はい」
自分から呼べと言ったくせに、月読命の声で名前を呼ばれた途端、頬が熱くなった。
「……顔が赤くはないか」
「……やっぱり、そなた、でもいいです...…」
なんとも見事な前言撤回をしてしまった。
あかりは、はっきり目を合わせられない。でも、月読命からの視線は感じる。珍妙なものでも見ているような目付きをしているのではないか。それよりも、自分は今どんな恥ずかしい表情をしていているのか。
「そなたは、我を匿うのか」
月読命は同じことを尋ねた。あかりは自分の表情をごまかすように、強く頷いた。
「はい。そういうことになります!」
話し始めてくれて助かった。あかりは心の底から安堵した。
「なぜだ」
なぜだろう。たぶん。
「ここで放っておいたら、私が一生気にするからです」
じっとあかりを見つめるその目は、月の光のように静かだった。
「そうか」
「それだけです」
「それだけか」
あかりは、返事に困った。
だから、階段の方へ歩き出した。
「行きますよ、ツク」
「うむ」
月読命は、素直についてきた。
あかりは外階段を上りながら、心の中で強く自分に言い聞かせた。
これは緊急避難。これは保護。これは人助け。
いや、神助け。
深く考えたら負けだ。そう思いながら、あかりは自分の部屋の前に立つと、鍵穴に鍵を差し込む。金属の小さな音がして、夏の夜にやけにはっきり響いた。
後ろには、月読命がいる。
あかりは一度だけ振り返り、言った。
「絶対に、変なことしないでくださいね」
「変なこと」
「その辺も、あとで説明します」
ドアの向こうに、あかりのいつもの生活がある。その生活の中へ、今から月の神様が入ってくる。
あかりは小さく息を吸って、ドアノブに手をかけた。




