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Moon Light Lover  作者: 巡
第2章 日常入門編

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第12話 神様、服を着る


 通りの向こうに、カジュアル衣料店の看板が見えている。全国どこにでもありそうな、明るくて安くて、大学生にも入りやすい店。


 月読命の今の格好は、かなり危うい。


 キャップとストールでごまかしているとはいえ、白銀めいた衣の気配は完全には消えていない。長い黒髪も、顔立ちも、立ち姿も、どうしても人目を引く。


 昨日の夜よりはまし。


 でも、ましなだけだ。


「よし」


 あかりは小さく気合を入れた。


「ツクを現代人にします」


「我は人ではない」


「そういうことを店内で言わないね」


 千晴が即座に言った。


「月読さん、今からはとにかく普通の観光客です」


 あかりは、そこで少しだけ瞬きをした。


 月読さん。


 昨日まで、千晴はずっと「月読命さん」と呼んでいた。少し距離を置いた、丁寧で、警戒も混ざった呼び方だった。


 それが今、自然に短くなった。


 月読命も気づいたのか、わずかに千晴の方を見る。


 千晴は、何でもない顔をしていた。


「何ですか」


「いや」


 月読命は静かに答えた。


「呼び名が変わった」


「変でした?」


「いや」


 月読命は少し考えたあと、言った。


「好きに呼べば良い」


 千晴は特に表情を動かさずに言った。


「じゃあ、それで」


 それだけだった。


 でも、あかりには分かった。これは、千晴なりの受け入れ方だ。完全に信じたわけじゃない。何もかも納得したわけでもない。それでも、昨日突然現れた危険な不審者ではなく、あかりの隣にいる変な人として、日常の中に入れ始めている。


 あかりは、なぜか少し嬉しくなった。


「なに笑ってるの」


「いや、千晴が月読さんって言ったなと思って」


「深い意味はない」


「あるでしょ」


「ない」


「絶対ある」


「服、買うよ」


「話そらした」


「そらしてない。現実を見てる」


 千晴は店の入口へ歩いていった。


 自動ドアが開く。


 月読命は、今度は立ち止まらなかったけれど、開いたドアをほんの少しだけ見てから、中へ入った。


 ――成長している。


 あかりは心の中で、小さく拍手した。


     *


 店内は、コンビニとは違う明るさだった。


 白い照明。整然と並んだ色とりどりの服。壁に掛けられたシャツ。棚に重ねられたパンツ。ハンガーが触れ合う軽い音。どこかから流れる穏やかな店内音楽。


 月読命が周囲を見回しかけたので、あかりはすかさず小声で言う。


「そんなに見ない」


「またか」


「またです」


 千晴も言った。


「服屋で全部じっと見ると、完全に初来店の外国人観光客か、挙動不審な人になります」


「我は初めて来た」


「事実をそのまま態度に出さないでください」


 月読命は少しだけ眉を寄せた。


「人の世では、初めて見るものを初めて見るように見てはならぬのか」


「うん」


「難しいな」


「でしょうね」


 千晴が淡々と答える。


 あかりは店内を見回した。


「とりあえず、Tシャツとパンツかな。あと、羽織れるシャツ。靴は……今日は昨日のやつのままでぎりぎりいける?」


「靴も変えた方がいいけど、まず服だね」


 千晴が月読命を上から下まで見るその視線があまりにも冷静で、あかりは少しだけ感心する。まだ、月読命を正面から見るとどこか落ち着かないからだ。


 綺麗すぎるのだ。


 神様だと分かっていても、いや、分かっているからこそ、見慣れない。


 けれど千晴は違う。採寸でもするような目で見ている。


「背が高いから、サイズはLかXLかな。肩幅もあるし」


「肩幅……」


 あかりは思わず月読命の肩を見た。


 確かに広い。


 昨夜、あの肩にしがみつき、腕に抱えられていたことを思い出しそうになり、慌てて目をそらす。


 ――だめだ。思い出すな。あれは緊急事態だった。お姫様抱っこではない。人命救助。神命(じんめい)救助。


 いや、神命(じんめい)って何。


「顔赤いけど」


 千晴が言った。


「暑いだけ」


「店内、冷房効いてるよ」


「内側が夏」


「ああ、そっちね」


 月読命が、二人を見ていた。


「そなたは暑いのか」


「暑くない!」


「今、暑いと言った」


「そういう意味じゃない!」


「また不可解なことを」


「現代の常識です!」


「常識なわけない」


 千晴が横から小さく刺した。


 あかりは反論できなかった。


     *


 千晴は手際よくハンガーを取り、まずは無難な黒いTシャツを選んだ。次に、白いTシャツ。そして、薄いグレーの半袖シャツ。


 月読命の体の前に次々と当てていく。


「黒は似合うけど、ちょっと迫力が出すぎる」


「分かる。夜の神様感が増す」


「白は今の衣と近すぎる」


「神様感が消えない」


「グレーは?」


 千晴が半袖シャツを当てると、あかりは見入ってしまった。


 月読命の白銀めいた衣の上に、淡いグレーのシャツを重ねる。それだけで、ほんの少し、地上の人に近づいた気がした。完全に普通にはならない。


 それでも、隣を歩いてもぎりぎり言い訳ができる。


 ――服の力ってすごい。


「いいかも」


「うん。これ、よさそう」


 あかりも千晴も同時にうなずく。


 月読命は、自分の前に当てられた服を見ていた。


「これらは、そなたたちが選ぶのか」


「うん。自分で選べる?」


「選ぶ基準が分からぬ」


「ですよね」


 千晴が即答した。


「じゃあ、とりあえずこっちで選ぶ。月読さん、嫌な色とかある?」


「嫌な色」


 月読命は、店内を見回した。


 青、白、黒、灰色、緑、赤、紺。色とりどりの服が並んでいる。


 月読命は少し考えてから、あかりを見た。


「そなたが選べ」


「私?」


「そなたが、我を人の世に近づけようとしている」


「それは、そうだけど」


「ならば、そなたが見て、よいと思うものがよい」


 まただ。


 この神様は、どうしてそういうことを真顔で言うのか。たぶん、何も分かっていないのだろう。『服を選ぶ』という日常的な行為に、どれだけの親密さが含まれてしまうのか。


 自分が選んだ服を、月読命が着る。それだけのことだ。ただ、それだけのことなのに。


「……じゃあ、これ」


 あかりはグレーのシャツを少し強く握った。


「これがいいと思う」


「うむ」


 月読命はうなずいた。


 迷いがない。


 それもまた、ずるい。


「はいはい」


 千晴がハンガーを取った。


「じゃあ、試着しましょう」


「しちゃく」


「着てみること」


「ここでか」


「ここでは着ない」


「では、どこで」


「試着室」


 千晴が店の奥を指差した。


 月読命は、カーテンで仕切られた小さな空間を見た。


「小さき部屋か」


「服を試すための場所」


「店の中に、衣を替えるための小部屋があるのか」


「着替えるからです」


「ここで衣を替えるのか」


 あかりは一瞬だけ固まった。千晴は、言葉を選ぶように視線を斜め下に落とし、それから、月読命を見据えてはっきりと話した。


「月読さん、とりあえず中で着替えてください」


 千晴は、月読命の手に下げられているコンビニ袋を指さした。


「まず、さっきコンビニで買ったものから。靴下と、肌着。袋から出してください」


「肌着」


「人の衣の下に着るものです」


 千晴は、淡々と言った。そして、あかりが服の着方を月読命に教える。


「上は、肌に近いところに着るの。前後を間違えないようにね。タグがある方が首の後ろに来るように頭を通すんだよ。下は……」


「下は?」


 月読命が静かに聞き返した。


 あかりは、その時点で固まった。


 頬が熱くなる。


 耳まで熱い。


 なぜ自分は、服屋の試着室の前で、月の神様に下着の着方を説明しているのだろう。


 千晴が平然と続きを説明してくれた。


「下は、腰で穿くものです。足を左右に通して、引き上げます」


「腰で、穿く」


「そうです。細かい説明はしません」


「なぜだ」


「しません」


 千晴がきっぱり言った。


 あかりも、赤い顔のまま何度もうなずいた。


「とにかく、肌に近いものから順番に着てください。肌着、靴下、Tシャツ、パンツ、最後にこのシャツ。分からなかったら声をかけてください。ただし、カーテンは開けないで」


「開けてはならぬのか」


「絶対に」


 千晴が言った。


「絶対に!」


 あかりも思わず重ねた。


 月読命は、二人の反応を静かに見比べた。


「……分かった」


 月読命は試着室へ入って行った。


 そして、カーテンが閉まる。


 あかりは、息が荒くなっていることに気づいた。


 別に何もない。


 ただ着替えているだけだ。


 服を買いに来て、試着しているだけ。


 ――なのに、カーテン一枚向こうに白銀の衣を脱いだ月読命がいると思うと......。


「顔」


 千晴が言った。


「何」


「また変」


「......変じゃない」


「分かりやすいなあ」


「何が」


「いや、別に」


 千晴の口元を少しだけ歪めたその顔は、何かを分かっている顔だ。


「千晴」


「何」


「今、何か思ったでしょ」


「思った」


「何」


「言ったら怒ると思う」


「じゃあ言わないで」


「うん」


 言わないでくれるのはありがたい。でも、言わないことで余計に分かることもある。


 あかりは、手に持ったハンガーを熱くなったお腹の下あたりで、意味もなく持ち直した。


 カーテンの向こうで、布が動く気配がした。妙に大きく聞こえる衣擦れの音に、あかりの耳が熱くなる。


 ――だめだ。本当にだめだ。


 現代服を買っているだけ。ただの生活準備。ただの買い物。


 でも......、昨日まで月明かりの下にいた神様が、今は試着室の中で、素肌の上から......自分が選んだ服に着替えている。


「……あかり」


 カーテンの向こうから月読命の声がした。


「な、な、何ぃ?」


「これは、首を通す場所が二つあるのか」


「ない! ないよ! 一つ!」


「腕を通す場所と似ている」


「待って、今どういう状態!?」


「開けてはならぬのだろう」


「開けないで! 開けないでいいから!」


 千晴が肩を震わせ始めた。


「笑わないでよ!」


「無理」


「千晴!」


「だって、あんたテンパりすぎ!そして、神様がTシャツに負けてる」


「神様対Tシャツ!?」


 試着室の中から、月読命が反論した。


「負けてはおらぬ」

 

 その一言は、妙に神様の矜持が出ていて、あかりは思わず吹き出しかけた。


「......ッ、ツク......、タグが後ろ。首のところに、小さい布ある?」


「ある」


「それを背中側にして」


「背中」


「うん。背中」


「分かった」


 しばらく、静かな格闘の気配が続いた。そして、カーテンの向こうが静かになった。


「できた?」


「おそらく」


「おそらく?」


「合っているかは分からぬ」


 千晴が一歩前に出た。


「月読さん、カーテンを少しだけ開けてください」


「分かった」


 カーテンがほんの少しだけ開き、まず千晴がその隙間から中を確認した。上から下まで、淡々と視線を動かすその顔は、冷静だった。


 冷静すぎて、逆に怪しい。


 あかりは、その横で息を潜めていた。


「……ちゃんと着れてる」


 千晴は相変わらず冷静に言った。


 ただ、その声には、ほんの少しだけ残念そうな響きが混じっていた。


「なんでちょっと残念そうなの!」


 あかりは思わずツッコんだ。


「いや、もう少し向きとか、重ね方とか、いろいろ間違えてる可能性を想定してたから」


「本当にそれだけ!?」


「それだけです」


「今、目がちょっと違った!」


「確認です」


「確認の範囲、広くなかった!?」


「安全確認」


「何の安全!?」


 千晴は、こほんと小さく咳払いをした。


「月読さん、開けて大丈夫です。全体を見せてください」


「分かった」


 カーテンが、ゆっくり開いた。


 グレーの半袖シャツ。中に覗く白いTシャツ。黒に近い細身のズボン。


 月読命はまったく違って見えた。


 神様ではない。いや、神様なのは変わらない。背筋の伸び方も、目の静けさも、どこか人間離れしている。それでも、さっきまでよりずっと、隣を歩ける人に見えた。


 京都に旅行に来た、少し目立つ男の人。黙っていれば、そう見えなくもない。


 黙っていてくれれば。


「……どうだ」


 月読命が聞いたが、あかりはすぐには答えられなかった。


 似合っている。とても似合っているのだ。


 それは間違いないのに、『似合っている』と言った瞬間、自分の中の何かが変な方向へ転びそうで怖かった。


「いいんじゃない」


 先に千晴が言った。


「かなり自然になった」


「自然」


「少なくとも、神様には見えにくくなった」


「それはよいことなのか」


「今は、すごくよいことです」


 月読命は、あかりを見た。


「そなたは」


「え?」


「そなたは、どう思う」


 完全に目を捉えられて、まっすぐに聞かれてしまった。


 あかりは、自分の頬が熱くなるのを感じて目を逸らした。けれど、逸らした先の鏡に映る月読命は、視線をあかりに注いだままだ。


 そんな視線を向けられ続けていては、もう言わざるを得なかった。


「……似合ってる」


 声は小さかった。


「そうか」


「うん」


「ならば、これにする」


 あまりにも簡単に決められてしまったことに、あかりは複雑な気持ちになる。正直、嬉しい。でも、本当に言われるがままに決めて後悔はないのか。


「いや、他のにしてもいいんだよ」


「そなたが似合うと言った」


「言ったけど」


「ならば、これでよい」


 千晴が横で、小さく息を吐いた。


「これはまた」


「何」


「いや、あかり、頑張って」


「何を!?」


「いろいろ」


「分かりたくないけど、何となく分かるのが嫌!」


 月読命の『何が問題なのか分からない顔』を見てあかりは少しだけ笑った。


 昨日までは月読命のことが正直怖かった。今も怖くないわけではないけれど、少しずつ日常が混じっている。


 自動ドア、入店音、ペットボトル、Tシャツ、試着室。


 月の神様が、ひとつずつ人の世を覚えていくその横に、自分がいる。


 そう思うと、胸の奥がくすぐったいような、苦いような、不思議な気持ちになった。


     *


 会計を終えて店を出る頃には、朝の涼しさはもう残っていなかった。


 通りには人が増え、店先のシャッターも上がり、日差しは建物の影を短くしている。アスファルトの照り返しが、夏の匂いを濃くしていた。


 月読命は、新しい服を着ていた。白銀の衣は、買った服と一緒に紙袋へ入れてある。


 夏の光の下で見る月読命は、夜に見た時より少しだけ輪郭がやわらかく感じて、あかりは少しだけ驚いた。もしかしたら当たり前なのかもしれないけど、月の神様が夏の光の中でも、ちゃんと存在している。


「月読さん」


 千晴が言った。


「その服なら、かなりましです」


「まし」


「褒めてます」


「そうか」


 月読命は、服の袖を少しだけ見た。


「人の衣は短くて軽いな」


「動きやすいでしょ」


 あかりが言うと、月読命はうなずいた。


「だが、頼りない」


「頼りない?」


「風も、光も、すぐに通しそうだ」


「夏服だからね」


 月読命は、空を見た。


 白い雲がゆっくり流れている。


 昼の空に月は見えないけれど、月読命はそこにいる。


「人は、季節に合わせて衣を変えるのだな」


「うん。暑い時は薄くして、寒い時は厚くする」


「そのたびに、自分を少し変えるのか」


 あかりは答えに迷った。


 服の話をしているだけのはずなのに、月読命の言葉がなんとなく心の深くまで届いたようだった。


「まあ……そうかも。服って、自分を守るものでもあるけど、見せ方を変えるものでもあるし」


「見せ方」


「うん。どう見られたいか、とか。どこに行くか、とか。誰と会うか、とか」


 言ってから、あかりは気づいた。


 自分たちは今、月読命を『どう見られたいか』のために着替えさせたのだ。


 神様ではなく、人間に見えるように。月明かりの存在ではなく、夏の道を歩く人に見えるように。


「ならば、今の我は、どう見られる」


 どう見られる、か。


 神様、不審者、観光客、綺麗な男の人。


 あかりには、どれもが正しくて、どれも違うような気がした。


「……昨日より、近く見える」


 あかりはそう言った。そう思ったことが言葉に出ていた。


 月読命の目が、ほんの少しだけ揺れた。


「近く」


「うん。遠い神様っていうより、隣を歩いてる人っぽい」


 言ってから、急に恥ずかしくなった。何を言っているのだろう。


 ――隣を歩いている人って。


 それは単なる事実なのに、言葉にすると変だ。夫婦や恋人のような響きを持ってしまう。


 月読命は、しばらく黙っていたが、やがて静かに言った。


「それは、悪くない」


 あかりの胸が、小さく跳ねた。


 千晴が、少し前を歩きながら言った。


「はい。いい空気に水を差すようで悪いけど、次は髪」


「髪?」


 あかりと月読命の声が重なった。


 千晴は振り返る。


「服が普通になったら、今度は髪が目立つ。長い黒髪をそのままゆるくまとめてるだけだと、やっぱり目を引く」


「切るの!?」


 あかりは思わず大きな声を出した。


 月読命も、ほんの少し目を見開いた。


「切るのか」


 その声は、いつもよりわずかに硬かった。


 千晴は二人を見比べ、そして、ため息をつく。


「切らない。今日は切らない」


「今日は?」


「今後は知らない。でも少なくとも今日は、結び方を変えるだけ」


 あかりは、ほっとした。


 月読命の黒髪。月明かりに照らされて煌めいていた長い髪。あの夜、月読神社で見た月読命の一部だ。


 それが切られるところを想像して、胸が痛んだ。


「あかり」


 月読命があかりを見た。


「なぜ、安堵した」


「え」


「髪を切らぬと聞いて、安堵した」


 あかりは言葉に詰まった。千晴が、横からじっと見ている。


 逃げたい。


 でも、逃げ場がない。


「……似合ってるから」


 あかりは、また『似合ってる』と言ってしまったことに気づき、慌てて言い訳した。


「その髪、綺麗だから急に切るのは、もったいない気がしただけ」


 静かにあかりを見ていた月読命のその目が、柔らかさを帯びた。


「そうか」


 ――なんか、今の目、優しい......。


 千晴が、今度こそ本当に大きくため息をついた。


「もう一回言うけど、ここ、昼の京都の往来だからね」


「分かってる!」


「甘い顔してた」


「してない!」


「月読さんも、そこで嬉しそうにしない」


「嬉しそうにしていたか」


「してました」


 月読命は、少しだけ考えた。


「ならば、そうなのだろう」


「カマかけただけなんだけど、認めるんだ」


 千晴が呆れたように言った。


 夏の昼の道を、三人で歩く。


 月読命は、現代の服を着ていて、手にはコンビニで買った水のペットボトルが握られていた。


 昨日までなら、ありえない光景が現実としてここにある。


 あかりは隣を歩く月読命を見上げた。


 月の神様が自分の隣で、夏の京都を歩いている。

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