表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
66/78

【第16話】友との再会と、DIY大作戦

秋の気配が色濃くなった王都グラン・フォリア。


その中心にそびえる王城の会議室には、重苦しい沈黙が流れていた。


円卓を囲むのは、国王をはじめとする国の重鎮たち、そして王国騎士団長のヴォルガン、魔導師団長のリディアだ。


「……以上の理由から、ゼルディア帝国の動きは陽動であると判断する。彼らの狙いは、我が国の主力を国内に釘付けにし、同盟国ファルシアへの援軍を阻止することにある」


宰相ロベルの言葉に、多くの中臣たちが深く頷く。


しかし、ヴォルガンは鋭い眼光を崩さず、低い声で反論した。


「陽動にしては、魔獣の密輸から、エーテリス領での事件まで、あまりにも計画的すぎる。帝国はファルシアに意識を向けさせ、本命はこの王都を直接叩くつもりではないのか」


「私も同意見です。帝国のスパイと思われる、セリアという女性は5年前に学園に赴任してきました。どう考えても長期的な計画が進んでいると考えるべきです」


リディアも同意するが、戦争のない時代を生き、すっかり平和ボケをしている大臣たちは首を横に振った。


「慎重すぎるのも毒だ。同盟の信義に背き、ファルシアを見捨てたとなれば、王国の威信は失墜する。主力部隊の九割は、予定通り来月にファルシアへ向かわせるべきだ」


結果、多数決によって決定は下され、ヴォルガンとリディア、そして新兵中心の第十騎士団や近衛騎士団を王都に残し、残りの戦力はすべて一ヶ月後にファルシアへ出兵することが決まった。



ーー



一方、その決定から数日後の王立グラン・フォリア魔導学園、3年Bクラスの教室。


「えー、本日からこのクラスに、一時的に編入生が入ることになった。それじゃあ、全員入ってこい」



ガララッ!


「……えっ、みんな!?どうしてここにいるの?」



アルノが大きな目をさらに見開いて声を上げる。


教室の前には、かつての合同実習で死線を共にした、ファルシア公国のチームクラークの面々が立っていたのだ。


「ふふ、驚いたかしら?ファルシアでは今、避難が始まっているの。学生は優先的に同盟国へ送られることになっていてね。この私がいれば、王国のレベルを少しは底上げしてあげられるでしょう?」


ツインテールを揺らし、相変わらずの高飛車な態度で言い放つのはディアナだ。


しかしその視線が最後列のカイルの背後に置いてある漆黒の大盾を捉えた時、満面の笑みを浮かべた。


「ディアナ様、初対面の皆さまに失礼ですよ。皆さま、どうぞよろしくお願いします」


「ミラちゃん、シルフィアちゃん、放課後お茶しに行こうね!」


苦笑いする護衛のテレサと、人懐っこい笑顔を向けるニコラス。


「私たちはチームクラークです。みなさんよろしくお願いします。……再び君たちと同じ教室で学べるとは奇妙な縁ですね、アルノ君」


ユリウスも丁寧な礼を崩さない。


「チームクラークのメンバーは、本来Aクラスに編入予定だったが、本人たちのたっての希望で、このBクラスに入ることになった。色々と学ぶことが多いだろうから、みな積極的に交流するように。アルノたちは放課後に寮の案内をしてやれ。じゃあ、授業を始めるぞ」


思いがけない再会を喜び、チームガレオスの4人は彼らを歓迎した。


しかし、放課後になり、彼らが一時的に入居した学生寮を訪れると、ディアナが露骨に肩を落として溜息をついた。



「何よ、この建物……。石と鉄ばかりで、まるで監獄じゃない。ファルシアの温かい木の温もりが恋しくて、病気になりそうだわ」



王国の建築は、魔力耐性の高い石材や鉄骨を多用した近代的な造りが主流だ。


自然豊かな木造建築に慣れ親しんだ彼らにとって、王都の寮はあまりに無機質で冷たく感じられるのだろう。


「確かに、王都の寮は機能重視だもんね。……よし!それならボクたちで改造しちゃおうよ。ファルシア風DIY大作戦だ!」


アルノの提案に、カイルもやる気をみせる。


「いいな。ちょうど端材の木材や余ってる織物なら、カルミナさんの店や知り合いから安く譲ってもらえる。みんなが住みやすい部屋に作り替えようぜ」


こうして、男女の寮ごとに分かれての模様替え作業が始まった。



ーー



男子寮の部屋では、驚異的な作業効率で改装が進んでいた。


「ユリウス、その図面通りに柱を組んで。ニコラスは床の板張りを手伝ってくれる?カイルは最終仕上げをお願い」


「了解。この角度で組んでいいかな?カイル君」


「バッチリだ。それにニコラス、お前もけっこう器用だな」


アルノが指示を出し、几帳面なユリウスがミリ単位の誤差もなく骨組みを支える。


そこに要領の良いニコラスがテンポよく板を打ち付け、カイルが力仕事と細かな研磨を一手に引き受ける。


「よし、最後の仕上げだ。木の香りと温もりを保ち続けるルーンを……ここ、ここ、ここに縫い付けるよ!…ルーン・ステッチ!」


アルノが指先から極細の魔力線を放ち、木材の表面に、木目と重なる目立たないルーンをミリ単位で走らせる。


「そして、これで完成だ!」


スチャッ、……ビュインッ!


アルノがエーテルガンでルーンを起動させた瞬間に、殺風景だった石の部屋は、森のコテージのような柔らかな木の香りに包まれた。


「完璧だね。これならゆっくり眠れそうだ」


男子チームが余裕の笑顔で作業を終えたその時、寮の廊下に設置してある通信マギアが「ジリリリリッ、ジリリリリッ」と激しく鳴り響いた。



カチャッ、「はい、3年Bクラス、カイルです」


『あぁ、カイル君……助けて……。もう、どうすればいいのか……』



聞こえてきたのは、今にも泣き出しそうなテレサの悲痛な声だった。


「テレサ!?一体何があったんだ?とりあえず、そっちに行くから待ってろ!」


慌てて女子寮へ向かおうとする4人だったが、アルノがその足を止める。


「待って!女子寮は男子禁制だよ。特にこの学園寮の管理人さんは、厳しいことで有名なんだから」


窓の外を見ると、女子寮の入り口には仁王立ちで目を光らせる寮母、通称『鉄の管理人』の姿があった。


「どうする?このままじゃ入れないぞ…」


カイルの言葉にニコラスがニヤリと笑い、アルノの顔をじっと見つめた。



「なあアルノ、お前……前から思ってたけど、制服さえ着替えれば完璧に女の子だよな?」


「……えっ?」



嫌な予感にアルノが身を引くが、ニコラスの提案は止まらなかった。


「そして俺もユリウスもそこそこ顔立ちは整ってる。カイルは……まあ、後ろ姿ならなんとかなるかもしれない。ここは女装して潜入するしかねえだろ!」


「「「はあぁぁ!?」」」


絶叫する三人を無視して、ニコラスはどこからか用意してきた予備の女子用制服とウィッグを広げたのだった。


「……ニコラスお前、…最初から女子寮に潜入する気でいたんだろ…」


カイルの呆れた声の後ろで、アルノとユリウスも冷ややかな目でニコラスを見ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ