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第七話:結果を得たり、辛勝のこと。

戦。それに勝ち、天を掴む。

 それが覇道なのだと、最初は誰もがそう考えていた。


だが時が経過するにつれ、考えが変わってきたのだ。


 争わずとも、天は掴める。

 泰平の世を目指すのでは無い。

 泰平の世を創造していくのだ。

 そしてそれを、持続していく。


そういった考えへと変わっていった。


造反者となった織嘉は、郭升の隣に歩き一言も話すこと無くただゆっくりと、城へ戻った。

その表情は、喜びに満ち溢れていた。


 天下に一歩、近づいた。




刀武の軍勢が辛勝しんしょうしたと気付いたのは、抵桧が織嘉によって討ち取られてから十刻じっこくほど経った頃だ。

刀武軍伝令のひとりが城内へ戻った際に、生々しく首が転がっているのを見た。

背中にも一つか二つ程剣で斬りつけられたようなきずあとがあったが、その太刀筋たちすじは明らかに織嘉のものだった。

その斬り方を以前織嘉直属の配下に伝授していたのを見たことがあるが、ここまで完璧に斬れるのは織嘉以外に誰も居ないだろう。

伝令はすぐに刀武のもとへ疾走しっそうした。

「伝令でございます!敵軍総大将抵桧、織嘉将軍により首級を討ち取られた模様!城内に屍が残っておりますゆえ、ご確認の程を

お願いいたします!」

刀武は抵桧の残党ざんとうを眺めた。

敗北したことを誰一人として知らず、ただ勇猛果敢ゆうもうかかんに奮戦していた。

士気が上昇している。

このまま力押しに押せば完全撃破できるような軍勢だったが、ふと刀武の頭の中に織嘉の言葉がぎった。

『兵たちを何だと思っているんですか!?きちんとわきまえてください!』

と。

刀武は「さらに奮戦せよ」と号令を出す前に思い踏みとどまった。

床に転がり落ちている抵桧の首級のほどけた髪を掴み、拾い上げる。

「狗楓が…俺の軍から離反したな」

「面白い!いや……」

刀武はそのまま城外へ出て、大きく息を吸い込んだ。

「全軍、撤退せよ!俺たちの勝利だ!」

残った織嘉の軍と、刀武の全軍は自分たちが負けたものだと思い込んでいた。

それに対して総大将が離反した織嘉によって討ち取られた事を知らない抵桧の軍は、自分たちが勝ったものだと思い込んでいた。


 全てが、逆だった。


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