第十話:武力と知力の、和解。
総大将を織嘉と定め、詠或が軍の参謀を努めた。
郭升が一万を率いて前線へ翔び、その他の兵には刀武の軍を挑発させた。
刀武の軍を翻弄しているその隙に斉誄が刀武の本陣を落とすという無謀かつ壮大な策を練った。
策は成功する。そう考えていた。
違ったのだ。
苦戦して、苦戦して、苦戦した。
まずは詠或の指示に従い郭升が前線へ出たが、刀武軍の精鋭には手の付けようが無かった。
このままだと織嘉の軍は劣勢から完全なる敗北へと陥れられてしまう。
そこで織嘉は軍配を振った。
斉誄の本陣制圧計画を潰し、斉誄に騎馬兵五百を統率させ前線へ送り出した。
兵糧も確実に減ってきている。
最後まで戦い抜くのは難しいだろう。
「私たちは負けてしまうのでしょうか…」
織嘉は焦っていた。
決して負けてはならない。
織嘉は立ち上がり、剣を手にした。
「私が出るとしましょう、城の守りを頼みますよ。我が家臣たち!」
城門を開け、戦場へと起ち上がった。
「織嘉将軍、お待ちくだされ!」
叫ぶ兵士たちの声は、織嘉の耳に届きはしなかった。
寧ろ今の織嘉には、戦う気しか無かった。
刀武には敵わない事を熟知している織嘉が。
一人の将軍が。
織嘉は駆けた、刀武のもとへ。
「刀武将軍!私と、一騎討ちを願います!西の地より織狗楓参ります!」
その声が響いた瞬間、刀武は振り返った。
「狗楓!決着は、武で争わなければいけないものなのか?今のお前は、真っ直ぐな眼をしているかもしれない。だが、今のお前の頭の中に、
和解したいという気持ちは…」
そこまで言い掛けて刀武は言葉を止めた。
「御免…俺は最低だ。事の始まりは俺が原因だったのにな。勝手なこと言ってすまないな」
剣を鞘に納めるとこう叫んだ。
刀武の口から予想もつかぬ言葉が放たれた。
戦場という舞台に起つ全ての戦士へ聴こえるように。
「我等刀岱夷軍は、これより狗楓の軍へ下る!異論は無いな!?」
場が粛清された。
異論のある者は、織嘉ただひとりだった。
「岱夷殿が私に下る理由が私には理解できません。私が、岱夷殿の下で戦います。貴方の戦い方をもっと知りたい、
学びたい。私の方こそ自重が出来ず、深く反省しております」




