第九話:友である故に、確信出来るもの。
「岱夷は…敗北を百も承知の上で我等への戦を挑んでいるのか。それとも策があるのか私には予測も出来まい」
刀武は晴らし切れない悲しみを、「戦」という形で晴らそうとしていた。
誰が見ても郭升らの軍が圧倒的に多く、強い。
それは一目瞭然であって、策を駆使しさらに大きな武力も備えていなければ刀武が大勝利を掴める戦では
なかった。
「大丈夫です。あまり余計な心配をしない方が宜しいですよ、忠葎殿。岱夷殿は、確実に降伏します」
堂々たる面持ちで織嘉は述べた。
「そう言い切れる理由は」
「…それは私と岱夷殿が友であるから、ですよ。少し苦手な部分もありますが、やはり同盟を破棄したのには少し後悔しているん
です」
「岱夷殿には岱夷殿の持つ考えがあります。いつまでも唯我独尊な世界を描きたいという願望だけでは駄目な
のだと、私は感じさせられました」
織嘉の純真無垢な心が、そう感じさせてくれたのだった。
「それでは狗楓。お前は私や雛覇、斉誄と同盟を結んだ事に対しての後悔は無いのか?」
先程の織嘉の言葉を耳にしたのなら当たり前のように誰もが浮かぶ疑問を、詠或は尋ねた。
「後悔は、しません。自分自身、私の考えや思いから決断したものですからね」
「貴方たちと同盟を組めたことには」
「この織狗楓、とても嬉しく思っています」
織嘉の眼は、雄々《おお》しい光を放っていた。
開戦前に織嘉と詠或の二人が交わした会話は、この位だった。
後は、北の地より侵攻を目的に進軍する刀武を待つのみだ。
兵士たちは、活気にあふれていた。
刀武が郭升たちの元へ侵攻してくる事に、大幅に時間が掛かった訳でもない。
やはり彼は武で戦を動かしたい者であり、特別な策を練ってはこなかった。
そして、前と同じように本陣を開け放ちただ突進あるのみだった。
その為、北の地は、今なら一匹の蟲が攻め込んでも落とせるような状況下に置かれていた。
刀武は、全軍を賭して戦に挑んでいるのだ。
刀武の軍勢は、およそ三万ほどであった。




