91
このまま一緒に俺んち行こうって真鍋先輩が言ってくれて、じゃあとりあえず荷物を取りにって、それぞれの家にバラけた。
まだ荷物をまとめてないから30分後ねって。
真鍋先輩は僕の家……僕の部屋。
ヤバい、何か………昨日のあれこれを思い出しちゃう。
「先輩ちょっと待ってて、すぐに荷物まとめちゃうから」
「おお」
僕はクローゼットを開けて、リュックや着替えを出す。
真鍋先輩はベッドにごろんってしてる。
あの位置なら見えないかな?
僕はこっそりと机の引き出しからラッキートランプを取り出して、真鍋先輩から見えないように1枚ひいた。
ハートの6…ラッキーアイテムはTシャツ。
Tシャツ?Tシャツね。長袖でもいいかな?パジャマがわりに持って行こう。
そうだ。このトランプも持って行こう。
忘れ物がないか確認しながらリュックに詰め込んで………あとは歯ブラシとか?
下に行って取って来なくちゃ。
「先輩、僕ちょっと下に行って来ますね」
「ああ」
僕は部屋を出た。
「真尋、ほら、ケーキできてるから、忘れないで持って行ってねっ。お母さん気合い入れて作ったからね!!」
「うん、ありがと。歯ブラシ新しいの持って行くよ?」
「洗面台の下に入ってるからー」
「はーい」
洗面台の下をがさごそしていたら、母さんがパタパタついてきた。
「ねぇ、真尋」
「な、なあに」
その猫撫で声が猛烈にこわい。
「頑張ってケーキ作ったからあ、母さん、ついてっちゃ、ダメ?」
「はいいいいい?何言ってんの母さん」
「おとなしくしてるから!!」
「いやいやいや、何で子どものクリパに母さんが来るの!?おかしいでしょ!?」
また母さん訳分かんないこと言ってる!!
もう、早く逃げなくちゃ!!
「だって真鍋くんのおうちでしょ?透くんも友弥くんも行くんでしょ?イケメンばっかりじゃない!!お願い、私を鞄に入れてって!!」
「無理!!」
「じゃあ隠しカメラで生中継!!」
「ダメ!!」
「パブリックビューイング」
「何言ってんの!?」
「せめて魂だけでも連れてって!!」
「それコワイから!!」
「真尋ぉ~」
「ダメって言ったらダメ!!無理って言ったら無理なの!!」
僕は母さんを振り切ってダッシュで階段をのぼった。
「いたたたたた」
「こら、走るな。大丈夫か?」
「だ、大丈夫です………」
思いっきり体重をかけて走ったせいで、怪我してる足が痛んで、部屋のドアを急いで閉めてから思わずぴょんぴょんした僕を、真鍋先輩が支えてくれた。
「どうした?」
「ううん、何でもない」
「捻挫、甘くみるなよ」
「うん、ごめんなさい。大丈夫」
もう、母さんが変なことばっかり言うから!!
って。僕。
真鍋先輩の肩につかまってる、けど。
顔を上げると、すぐ目の前に真鍋先輩の顔があって。
「……………っ」
その唇に、僕の唇が触れそうになったんだ、とか。その唇が、僕の首筋に触れたんだ、とか。
………思い出しちゃって。
「そこで照れるな。俺まで照れるわ」
「だって…………」
俯いた僕を、真鍋先輩がふんわりと抱き締めてくれて。
僕はうわって目を閉じた。
「だから、何でそんな身体ガチガチ?」
「だ、だって」
「そういうの、余計に煽られるって知っててやってる?」
「知らない………」
くすくす真鍋先輩は笑ってるけど、僕はドキドキで、それどころじゃなくて。
「準備、できた?」
「うん、だいたい」
「じゃ、あと5分、このままな」
「先輩………」
「ん?」
「5分だけ?」
真鍋先輩の背中に腕を絡めて。5分じゃ寂しいから。
「お前なぁ…………」
「先輩?」
「俺を暴走させるなっつーの」
「暴走?」
「天然ってマジこえぇ」
「僕は時々先輩が何言ってるか分かんない」
真鍋先輩がちょっと身体を離して、僕をじっと見つめる。
その目が熱っぽくて。僕は、恥ずかしくなって。真鍋先輩にしがみつく。
「真尋のせいだからな」
「え?」
何のことか分からなくて、真鍋先輩の肩に伏せていた顔を上げたら。
ほっぺたに。
キス、された。




