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誕生日プレゼントって真鍋先輩がくれたのは、ペンケースだった。
このペンケース、知ってる。
僕も買おうかなって思ってたやつだ。
「俺が使ってるのと一緒。ここのやつ好きなんだ」
「先輩、お財布もここのでしょ?」
「真尋も好きみたいだな。今日持ってたワンショルダーのリュック、ここのだろ?」
「うん、そう!!」
高いんだよ、すごーく。でも本革で、カッコいい。
最初に教えてくれたのは父さんだった。
男ならこういうの持てよって。
だから真鍋先輩が同じところのお財布を使ってるのを見て、実は僕、すごく嬉しかったんだ。
「俺が卒業しても毎日俺を思い出すように、ちゃんと持っとけ」
「うん…………ありがと。大事にする」
卒業かぁ。
ペンケースをぎゅっと抱き締める。
3月まで、あと少し。
本当にあと少しじゃん。
「寂しいなぁ」
さっきより近くで座る真鍋先輩の肩に、こてんって頭を乗せた。
真鍋先輩が、そんな僕の肩に腕を回してくれる。
「春休みまではたくさん会えるから」
「たくさん?」
「会いに来る」
「…………うん」
あ、そう言えばさっき聞くの忘れちゃってたけど。
「先輩が行く大学って、どこ?」
こてんってしたまま聞いたら、身体を起こされて耳許で囁かれた、大学の、名前。
「ええええええっ!?」
「お前、驚きすぎ」
「だって!!だってさ!!」
そんな大学に行っちゃうの!?
超有名な、そんな、ところ。
はああああって。
今度は違う意味で真鍋先輩の肩にこてんって、なる。
「真尋?」
「先輩、きっとモテまくりだよね………」
呟いた僕を笑ってる振動が伝わってくる。
笑わなくたっていいじゃん。
大好きな人が超モテモテって、やっぱ気が気じゃないよ。
「そうでもない。どっちかって言うと真尋のがモテてるだろ」
「僕は16年間コクられたことさえないです」
「あーーーー、それはきっとアレだ」
「アレ?」
「鉄壁に守られてるんだよ」
「鉄壁って?」
「あいつらが居る限り安心だな」
「先輩、僕意味分かんないです」
「お前は分かんないままでいい」
「えーー、何それ」
真鍋先輩が笑うから、僕もつられて笑う。
真鍋先輩を見れば、僕を優しく見てくれる。
今までよりずっと。ずっと、近い、位置で。
「そろそろ帰るわ」
「……………うん」
「また明日な」
「うん」
僕から離れて帰る準備を始める真鍋先輩を、もうちょっと、なんて思いながら見ちゃう。
立ち上がって上着を着る真鍋先輩が、僕の視線に気づいて眉毛を下げて笑った。
「んな顔すんなって。明日があるだろ」
「どんな顔か分かんないです………」
「まだ帰らないでって、顔」
座ってる僕にほらって手を出してくれたから、それにつかまって立ち上がる。
明日があるけど、だって今日はもうおしまいでしょ?
「わっ…………」
ぐいってそのまま引っ張られて。
ダウンを着たもこもこの真鍋先輩に抱き締められた。
「いつになったら驚かなくなんの?」
「だ、だって、先輩、いつもいきなりなんだもん………」
「そりゃ予告したらおかしいだろ」
「そうだけど………」
僕と真鍋先輩の身長はほとんど変わらない。
だから、こうすると、真鍋先輩の首筋や耳が、すぐそこにあって。
僕は何だか、変な気分になっちゃう。
変な気分ついでに、いいじゃん!!
って、何でか急に開き直って。
「まっ…………」
今度は、真鍋先輩が、驚いた。
さっき僕が真鍋先輩からされたみたいに、僕がそっと、その首筋にキスをしたから。
「ほら、びっくりするでしょ?」
「ばーか。だから煽るなっつーの」
僕は、ふふふって笑って。
大好き。
心のなかで、繰り返した。




