76
教室で3人、真鍋先輩と木戸先輩を待っていた。
通知表を見せ合って、騒いでた。
これなら怒られないよね?大丈夫だよね?って。
そしたら。
「お待たせーー」
「行くぞー」
って、迎えに来てくれて。
はーいって返事をして、僕たちは教室を出た。
「どこ行く?」
「何食いたい?」
「ファミレスですか?」
「お好み焼き?」
「僕何でもいいです」
うーーんって、全員で悩む。
「俺、自転車取って来るわ。新井、行くぞ」
「え?あ、はいっ」
「光ちゃん、門で待ってるねー」
「おう」
透と友弥と木戸先輩と別れて、真鍋先輩とふたりになる。
だからね。
どうして。どうして?
どうして、僕を、連れていくの?
「何、食いたい?」
「うーん………先輩は?」
「カレーとかラーメンもいいな」
「あ、あったまるものいいですね」
「寒いもんなー」
「寒いですね」
日差しはあるけど今日は風がちょっと冷たくて、ラーメンいいなーなんて思ってた。
自転車置き場まで、あと、少し。
その時真鍋先輩の手が僕の手を取って、そのまま真鍋先輩のブレザーのポケットに、入る。
「先輩………」
「ん?」
もう、いいでしょ?もう、いいよね?
この繋いだ手が、答えでしょ?これって、だって。
指と指を絡めた、恋人繋ぎって、やつ。
「新井」
好きですって、もう、気持ちが抑えきれなくて。
言おうと、思ったら。
すごーく優しい声で名前を呼ばれて。
「………はい」
「もうちょっと、待って」
「え?」
隣を見たら、声と同じ、優しい顔。
「気持ちは一緒だと、思う。でも、もうちょっと、待って」
「どうして?」
「俺が、受験生だから」
受験生。
そうだ、真鍋先輩、これから大変な時期だ。
そう言われたら、もう、黙るしか、なくて。
「一緒、ですか?」
「ん?」
「気持ち」
好きって言えないなら、せめて。
好きって聞けないなら、せめて。
自転車置き場に、着く。
行かないと、3人が僕たちを待ってる。
「合わせると、ハートだろ」
「え?」
「お前がくれたストラップ。あれ、俺が緑でお前が赤。合わせるとハートが見える」
「先輩、気づいてたの?」
「前にクラスの女子が話してるの聞いたことある」
「そう、なんだ…………」
ぎゅっと握られる手。真鍋先輩のあったかい、手。
「すげぇ嬉しかった」
僕も、握り返して。
「大事に、持っとく」
「………うん」
「さ、行くぞ。………真尋」
………真尋。
今、真尋って。
真尋って。
「うん」
一緒。
一緒って分かった。
今は、それだけでいい。
それだけで、大丈夫。
真っ赤になった僕の頭を、真鍋先輩がぽんぽんって、してくれた。




