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「先輩っ」
「新井、急げっ」
「え?あ、はいっ」
挨拶もしないまま、急かされるまま、僕は真鍋先輩の自転車の後ろに急いで乗った。
「ちゃんとつかまれよ」
「はいっ」
嬉しくて、ドキドキして、ぎゅって、つかまる。
そして真鍋先輩の背中に、おでこをくっつける。
「先輩、何で?」
「久しぶりにサッカー部の朝練に顔出そうと思って、な」
背中に響いてくる、声の、振動。
昨日の帰りに、一緒じゃなかった。ただそれだけで、こんなにも。
こんなにも嬉しくて、こんなにも胸がぎゅってなるって。
僕、本当にどうかしちゃってる。
「お前が乗ってないと、背中がさみーんだよな」
「僕、カイロですか?」
「カイロだな」
「じゃ、今はあったかい?」
「あったかい」
照れ臭そうな声が、僕を一段と嬉しくさせた。
「明日は、部活ないんだろ?」
「はい。明日は、ないです」
「朝、またメールする。帰りも教室で待ってろ」
「…………うん」
「だから」
自転車のスピードを落とした真鍋先輩の右手が、僕の右手に重なる。
手袋、邪魔、だね。
「今日の帰りだけ、我慢な」
「………うん」
きっと。
きっと、さ。
真鍋先輩も。僕と、同じ気持ち………だよね?
そうだよね?
違うの、かな。
これで違うって言われたら、それはそれでかなりショックだな。
確かめたいけど。
何かちょっと、こわくて。
こわいけど。
…………確かめ、たい。
僕は、左手を。
真鍋先輩の右手に。
そっと、重ねた。




