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無理すんなよって、まず坂本先生に言われたのは何とも原始的なボールみがきだった。
終わったら部室の掃除も頼むって。
久しぶりのユニフォームを着て、ベンチでひとつひとつボールをみがく。
ランニングが終わるまでにある程度終わらせなくちゃ。
いつもありがとーって、思いを込めて、1個1個みがいていく。
早く投げたい。早く打ちたい。
もやもやする気持ちを、身体を動かして、スッキリさせたい。
スッキリ………するのかな?
分かんないけど。
「新井」
「はい?」
呼ばれて振り向くと、そこには真鍋先輩が居て。
どきんって。
僕の心臓が飛び跳ねた。
「先輩」
「久しぶりに見たわ、お前のユニフォーム姿」
真鍋先輩が、側に行った僕をしげしげと見るから、僕は恥ずかしくなってキャップを直すフリをして俯いた。
「足、平気か?」
「がっつり体重をかけなければ、大丈夫です」
「無理すんなよ」
「…………はい」
「じゃな」
ヒラヒラと手を振って、行ってしまう。
ああ、行っちゃう。
本当に一緒に帰れなくなっちゃうんだな。
改めてそう思って、胸の奥がきゅっとなる。
あ。
その時ふと目についた、真鍋先輩のリュックに。
朝渡したストラップがキラッと見えた。
付けてくれた。
真鍋先輩、それね。
それひとつだけ見てると、分からないんだけどさ。
僕のキーホルダーと合わせると。ふたつを合わせるとね。
「こら、新井!!さっさとボールみがけ!!ランニング終わるぞ!!」
「あ、はい!!」
坂本先生に言われて、慌ててベンチに戻る。
真鍋先輩。
気づいて。僕のリュックを、見て。
ふたつを合わせると。
そこにね。
ハートが、見えるから。




