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「うわ、うま」
いただきますって、まずコーヒーを飲んだ真鍋先輩が、思わずって感じで言ったのが聞こえて、嬉しくなる。
「さっき母さん自分でも言ってたけど、料理と、こういうのだけは本当に上手なんです」
「へぇ………」
僕もいつものようにマグカップに並々と注がれたミルクティーを一口。
うん、今日も母さんのほんのり甘いミルクティーは激ウマ。
「それ、飲ませて」
「え?」
「ミルクティー」
正面に座った真鍋先輩がちょうだいって、手を伸ばしている。
僕はどうぞって、マグカップを、渡す。
一口飲んでうまいなって笑う真鍋先輩。
真鍋先輩はそうやって僕が飲んでるものを何でもないように飲んじゃうけど。
そうされるたびに、うわって、僕の心がどっきーんって、なっちゃう。
真鍋先輩は、何とも思わないのかな?男同士だから、全然、平気?
「ケーキ、どっちがいいですか?」
「俺こっちがいい。新井それでいい?」
「僕、どっちも好きだから大丈夫です」
真鍋先輩はこっちがいいって言ったベイクドチーズケーキを頬張って、うまって笑った。
真鍋先輩って本当に何でも美味しそうに食べるから、何か見てるだけでふふふってなっちゃう。
僕もケーキを、一口。これは僕の大好きなガトーショコラ。
うん、美味しい。
「こっちも食う?」
「え?」
「ほら」
目の前に出された、フォークに刺さってる、一口分のケーキ。
これ、食べろってこと?
うわわわわって、顔が赤くなる。
「こら」
「はい?」
「赤くなるな、こっちが照れるわ」
「だ、だだ、だって…………」
「うまいぞ」
それでもほらって、更に僕の口の前に近づけるから。
僕はぱくって。
………食べた。
真鍋先輩。そんな顔で、見ないでよ………。
優しい、そして、嬉しそうな、そんな、顔。
「新井のも食わせろ」
「え?」
それそれ、って、僕のケーキを指差して、そして自分の口を指差して。
ええええっ!?食べさせろってこと!?
「だからそこで更に赤くなるなって」
「なりますよ!!」
「何で?」
「え?」
「だから、何で?」
「何でって、それは…………」
真鍋先輩が、じっと僕を見てる。
すごい、見てる。
何でって。何でって。
聞かれても。
………答えて、いいの?
「だって…………」
真鍋先輩の視線から逃げたくて、僕は俯いた。
沈黙。
どうしよう。
ありえないぐらいの早さで、僕の心臓はドキドキしていた。
「新井」
「はい」
「ケーキ」
「え?」
「早く、食わせろ」
「あ、は、はいっ………」
僕は慌ててガトーショコラを一口分切って、フォークに刺して、真鍋先輩の口許に運んだ。
真鍋先輩が、僕の手を握って。食べる。
「こっちも、うまいな」
「………うん」
真鍋先輩の考えていることが、分からなくて。
僕は、また。
俯いた。




