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握った手を、握り返されて。
僕は顔を、上げた。
「亮平くん?何で?」
「ゴメンナサイ………」
「ごめんなさいじゃなくて、何で?何かあった?」
笑みが消えた真鍋先輩の真剣な顔がやっぱり怖くて、また、俯く。
「前に、木戸先輩が」
「うん」
「最近光ちゃんが全然かまってくれないって。そろそろ返してくれない?って」
「亮平くんが?」
「はい…………」
言っちゃった。
木戸先輩、ゴメンナサイ。
真鍋先輩に言っちゃったよ。
でもずっと気になってたんだ。
あの雨の日も、ふたりで、くっついてて。
僕はドキドキで聞いたのに。
ぶーーーーって吹き出した真鍋先輩が、僕の手を握ったまま爆笑し始めた。
えとーーー真鍋先輩?
「腹いてーーー」
「真鍋先輩…………?」
ひーひー笑って、目尻に浮かんだ涙を拭っている。
そんなに笑うとこ?笑うとこなの?
分からなくて、ぽかーんって、真鍋先輩を見上げる。
「あの人ね、時々そういうこと言って人をびっくりさせて、楽しんでんだよ」
「ええ!?」
「身長も俺より低いし、顔もゴツくないじゃん?で、女子があやしいあやしい言うもんだから、面白がっちゃって」
え?何?
僕。
「本当に…………?」
木戸先輩にからかわれた、だけ?
「本当に。いくら亮平くんがゴツくないからって、俺は嫌だなあ」
「どうしてですか?」
「あの人優しそうに見えて実はすっげぇおっかないから」
「ええええ!?」
「俺や滝沢なんて目じゃないぐらいおっかない」
「ま、まじですか」
「まじです」
そうか………そうなんだ。
良かった。良かったって、安心した。
けど。
真鍋先輩や滝沢先輩よりおっかないって…………?
それはそれで怖い気がする。
それに。それに…………。
「じゃあ、あれは…………?」
「どれ?」
「…………いや、えと、何でもないです、ゴメンナサイ」
昇降口。3年生の下駄箱のところでの、真鍋先輩と木戸先輩。
僕にはもう恋人同士のいちゃいちゃにしか見えなくて。それがショックで。
なんて………言えない。
「新井」
「はい」
「言え」
「…………ゴメンナサイ。何でも、ない」
「ごめんなさい禁止」
「ええっ!?」
「次言ったらチュウしてやる」
「ええええっ!?」
チュウって、チュウって!?
あわあわする僕を、真鍋先輩が意地悪そうな顔で見て笑ってる。
「面白いな、お前」
「もう!!からかわないで下さい!!」
「お前が何を思って俺と亮平くんって言ってるのか知らないけど………俺らはそんなんじゃない」
僕をじっと見る真鍋先輩の目が、嘘を言っているようには見えなくて。
「…………はい。ゴメンナサイ」
「あ」
「あ?」
「ごめんなさいって、言った」
「ああああああっ!?」
言った?
僕、今、ゴメンナサイって言った?
「チュウだな」
「先輩ちょっと待って、なしなし今のなし絶対なし!!なしでしょ!?嘘でしょ!?」
ぷちパニックの僕に、また爆笑してる、真鍋先輩。
おもしれーって、お腹を抱えてる。
何だ、からかわれただけか。
………って、当たり前か。
ちょっと、残念に思ったりも、して。
「あー、面白かった。よし、帰るか」
「はい」
「じゃ、その前にお仕置き」
「…………え?」
お仕置きって?って、聞こうと顔を上げた僕の。
僕の、おでこに。
真鍋先輩の唇が。
触れた。




