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「ごめんなさい?何で?」
真鍋先輩は不思議そうに首を傾げる。
「えと、先輩、忙しいかなって」
ちょっと真鍋先輩の顔が怖くなった気がしたから、俯いて、もう1回ゴメンナサイって、言ってみた。
椅子に横向きに座ってる僕の前に、真鍋先輩が来る。
「俺が怪我させたんだし」
「僕が飛び出して、僕が勝手に転んだんです。なのに毎日………だから、ゴメンナサイ」
「前、遅かったのは日直だったから。今日遅かったのは、滝沢につかまってたから。忙しい訳じゃない」
顔をあげると、そこにはもう怖い顔は、なかった。
ほっとして、でも何か、茜色の教室に真鍋先輩とふたりってことに、急にドキドキしてきて。
僕はまた、俯いた。
「滝沢先輩に?」
「新井に手ぇ出すんじゃないぞって、超絡まれた」
「て、手!?手って………滝沢先輩何言って………」
「だろ?そう言ってんのに、あーだこーだと長引きそうだったから一応メールして、やっぱり遅くなった」
「………何か……ゴメンナサイ」
そう言ってんのに、か。
確かに僕と真鍋先輩に何かある訳じゃないし、真鍋先輩に何かされた訳でもないけど。
ちょっと、寂しいなって思って。
ぎゅって、手を握り込んだ。
「お前今日ごめんなさいばっかだな」
「え?あ、そう、ですか?ゴッ………ゴメンナサイ」
だって、合言葉はゴメンナサイ、だから。
そう言ってたら、真鍋先輩と何かあるかなって、期待して。
何か。何かって、何だろ…………。
「真鍋先輩、彼女居ないんですか?」
「は?」
ゴメンナサイついでに聞いちゃえって、ずっと気になってたことを聞いてみる。
彼女、も、気になるけど。
木戸先輩のことも、聞いちゃおう、かな………。
「ゴメンナサイ、何となく」
べしって、痛くない程度に、真鍋先輩が僕の頭を叩いて、そのままぐしゃぐしゃって髪の毛を掻き回された。
そして手を離して、隣の席の椅子に僕と向かい合うように横向きに座った。
夕陽が照らす真鍋先輩は、いつもよりカッコいい。
「どうした?何かあった?」
「ううん、ゴメンナサイ。真鍋先輩カッコいいから、彼女居るんじゃないかなって。居たら何か、申し訳ないなって」
彼女ねぇ…………。
ボソッと言って、机に頬杖をつく。
「居た時もあったけど、正直面倒でさ。今は居ない」
「居たんだ………」
「2年の時な。そういう新井は?居ないの?モテるじゃんお前」
「居ません!!てかモテません!!」
思わず大きな声になっちゃって、真鍋先輩が声でけぇよって、笑う。
「ゴメンナサイ………」
「うちのクラスの女子がよく騒いでるぞ。お前ら野球部トリオ見て、カッコいいとかカワイイとか」
「初耳です………」
「初耳かよ」
ゲラゲラ笑いながら、真鍋先輩は立ち上がった。
「ほら、暗くなる前に帰るぞ」
手を差し出されて。
つかまる。
「木戸先輩は?」
「え?」
「木戸先輩とは、どういう関係ですか…………?」
真鍋先輩のあったかい手を握って。
僕は、聞いた。




