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【操り人形師】

 

 

 

『本当に、神は君のことが大好きみたいだ。ここへ2度も来ることができるなんてさ。……【神の視点】、使いこなしているみたいだね。なくてはならないものになったんじゃない?』

 じろじろとボクを見る、自称天使のあの男がいた。

 

 これは、【神の視点】を手に入れたときと同じ状況だ。そこでボクは思いついた。

「……ねえ、人殺しの力は、ないの?」

『シュロ君? 何を言ってるんだ』

 驚いた様子で、男はボクを見つめる。

「見るだけじゃ、駄目なんだ。ボクは、ボクを大切に思ってくれた人たちのため…あの憎い男を殺すんだ!」

『ふうん……。復讐するってことだな』

 男はおもしろそうにニヤリと笑った。

『その夢は俺も応援したいだが…悪いけど、俺の意志では君に渡す能力を選ぶことができない。すべては神の気まぐれ――――』

 途中で言葉を切ると、男は耳元に手を当てた。

『ああ、分かった。……シュロ君、おめでとう。神は君の復讐を応援してくれるってさ。だから、とっておきの能力をくれるってさ』

「……ずいぶん気前よくくれるんだね、人を殺すっていうのに」

『お前が殺そうと思ってるのは、お前の父親――国王だろ?』

「そうだけど」

『俺たちが能力を与えたから、あいつは間違った道を歩んでしまった……。研究者と国王。二つの名誉を手に入れたせいで、あいつは何百人もの人を犠牲にしてしまった』

 男はボクの肩に手を置くと、まっすぐな瞳でボクを見つめた。

『あいつを懲らしめるための能力をお前にやる。だが、お前は間違えるな。もし、それで何の罪もない人を殺すことになったら……。お前にも、罰が下る』

「それでもいい。ボクは、〈お父さん〉や兄さんを殺したあいつを殺せるなら」

『そうか。じゃあ、俺たちはもう何も言わない。あとは、この能力と【神の視点】、お前次第だ』

 男はまたあの時と同じように、ボクの肩を押した。

 

 

 目の前にあるのは、いつも通りのボクの部屋。

 足元に転がっているのは、ボクと兄さんに似た人形。

 胸に沸々と湧き上がってくるのは、純粋な殺意。

 

 

 

 奴を殺すのに、手間も時間も道具も要らなかった。

 ただ、あの二つの力を組み合わせるだけで。

 

【神の視点】を使い、いろいろな物に視点を移して奴を観察した。

 普段は国王として立派に国民の信頼を得ているようだけど、『自室』と呼ばれる研究室に入ると、己の欲望に忠実な、ただの研究者へと変わった。

 

 ある日。

 その部屋から出てきたところに【操り人形師】を使い、奴の意識へ潜り込んだ。

 この力だけでは、人を操るだけでその目線にはなれないのだが、【神の視点】も使えば完全に人を乗っ取ることができた。

「――――」

 ふと、声が聞こえた。奴の声だった。言葉にはなっていなくて、ただの叫び声だった。

 ボクは階段の一番上の階に立った。

 恐怖はなかった。

 それもそうか。

 ここから落ちるのはボクじゃない。憎いあいつだけだ。

「さよなら、貪欲国王」

 

 足を床から離し、空中に身体が浮くのを確認すると、ボクは意識を自分の部屋に戻した。

 

 

 

 ○○○

 

 

 

 国王は頭を強く打って障害が残ったらしい。

 意識はあるものの、これから死ぬまで動けず喋れずの一生だと。

 殺すつもりだったのに、生きているのは非常に腹立たしい。再びあいつを操って殺そうと思ったけど、ボクでもあいつの身体を動かすことはできない。周りの人を巻き込むことはできないし、生きたまま自分では何もできない屈辱を味わっているのもいいと思った。

 でも。

「どうしてだろう……」

 胸にぽっかりと空いた穴が、孤独を感じさせた。

 たった一つの、陶器製の人形を手に取り、手や足を動かしてみる。

 

 ……違う、これじゃない。

 人形じゃだめだ。

 もっとよく動く、感情のある生き物で、遊びたい。

 

 窓を開けた。

 勢いよく吹く風が心地よかった。

 手に持っている人形の髪をそっと撫でる。

 そして人形の瞼に手を添え、ボクと同じ色の瞳を抉りだした。

「もう、どこにもいない……」

 人形じゃなかったんだ、ボクが欲しかったものは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただ、遊び相手が欲しかっただけだったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ちょっと急ぎ足になってしまいました…。すみません。

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