終わり、そして始まる。
混乱や焦りなどの感情がぐちゃぐちゃになり、いつものように元気なソウではなかった。
――ああ、もうだめだ。
頭の中でそんな言葉が浮かんだ。
ギュッと目を閉じて、死が訪れるのを待った。
だが、瓦礫が落ちてくるよりも先に、カイウの呻き声が聞こえた。
目を開けると、空中で瓦礫が止まっていた。
「能力者は…意識が残るんだね、覚えとくよ。でも……」
カイウは近くにあった先の鋭いガラスの破片を手に取ると、腕を切りつけた。
「……!?」
「あ、あああぁぁぁ……!」
驚いて声も出せないソウと、痛みに叫びながらも、愉しそうに笑うカイウ。
「……ぼくに従え! 抵抗するな!」
「カイウ……? ねえ、カイウ!」
「うるさい! だからもうそいつは……」
ゆっくりと、金色の風が止んだ。空中に浮かんだ瓦礫は、雪が降るようにゆっくりと落ちてきた。ソウはそれを避け、カイウの所へ駆け寄ると肩をつかんだ。
「カイウ、見てるんだよね! こいつを追い出してよ!」
「何を言ってるんだ…離せ」
カイウはソウを振り切ると、ソウに向かって手のひらを伸ばした。
「ねえ、破壊って人間にも効くのかな」
「……!」
「試してみる価値はあるよね」
手の平に、青色の光が集まっていく。
「い、いやだっ……! カイウ、目を覚ましてよ!」
「無駄だよ」
青色の光が、ソウを包んだ。
そして――――。
真っ赤な血まみれの車いすの上には、肉と骨が散らばっていた。そこに人なんていなかったかのように、佇んでいた。
「……」
達成感に浸るわけでも、罪悪感に苛まれるわけでもなく、ただ感情のない人形のように呟いた。
「……能力も、操れ……」
そして、力が尽きたように、ふらりと地面へ倒れた。
カイウが目を開けると、テントの中で横になっていた。一緒に救助活動をしていた人たちの姿が目に入った。
「おお…よかった。目が覚めたみたいだな」
状況が読めず、呆然としていると。
「地割れが起きた後、兄ちゃんを探したんだ。そしたら…兄ちゃんは無傷だったけど、すぐ近くで死体が発見されて…もう人の形じゃなかったんだけどな……」
それを聞いた途端、カイウの目から大粒の涙がこぼれた。
「わ、悪いな、変なことを言って…もしかして、知り合いだったのか……?」
あたふたとする数人の男性に、カイウは言った。
「すみません…一人にしてもらえますか?」
「ああ…好きな時に帰っていいからな。あとはまかせろ」
パタン、とドアが閉じられると、カイウは嗚咽をあげて泣き出した。
「……っ、俺の、俺のせいで…ソウが……」
カイウは全て、ソウの言う『画面』越しに今日のことを見ていた。そして、突然意識の中に入ってきた奴を止めることができなかった。画面を、あの空間を破壊しようとしたが、自分の力を使うことができなかった。
「なんで、助けられなかった…俺は……」
破壊の力なんて、要らない。
強くそう思った。
――――――――――――――――
「カイウ…! 無事だったんだね!」
宿に戻ると、サヨネが飛びついてきた。
「ああ…お前も、無事そうでよかった」
いつもなら避けたり、すぐに剥がしたりするのだが、カイウは何もしなかった。
「……どうしたの? 何か、あったの?」
「いや…なあ、サヨネ」
「なに?」
「……サヨネはいつまで旅を続けるつもりなんだ?」
深夜、カイウは一人だけで列車に乗っていた。
ソウを殺してしまった罪悪感。
サヨネに迷惑をかけたくないという気持ち。
いつ、またあいつが意識の中に戻ってくるか分からない。
これ以上、大切な人を殺したくない。
そう思ったのだ。
突然、頭痛がした。
――――逃げられないよ、君は――――
「まさか…昼間の」
――――あははっ。体、貸してくれてありがと。ボクは楽しかったよ?――――
「黙れ…お前のせいで、ソウが……」
――――でも、殺したのは君の力だし、体だよ?――――
「ふざけるな! 俺は……」
――――僕が君を、面白い物にしてあげる。みんなが君のことを恐れて、遠ざけるようになるよ?――――
列車にはカイウ以外の乗客はいなかった。
「……そりゃどうも。遠ざかってくれれば、俺は大切な人たちを傷つけずにすむな」
――――開き直った? それとも、ボクの言ってることが信じられない?――――
「ソウを殺したお前を信じるなんて、できるわけないだろ」
――――……そっか。いいよ、もうすぐ全てがボクの思い通りになるから――――
そこで、鐘の鳴り響くような頭の痛みは消えた。
「……思い通り?」
カイウが『ブレイカー』と呼ばれるようになるのは、これからそう遠くない話だった。
ネーミングセンスの無さに苦笑いが止まりません(涙)
これで孤独な被害者は終わりです。
次から新章です。残りもあと少し…がんばります!
そしていつも応援ありがとうございます。




