『はじまり』の始まり(2)
どうしても良いサブタイトルがなかったんです。
広場へ行くと、想像以上に人が多かった。
特に、ソウと同じく車椅子に乗った人たちが。
まだ歌は始まっていないようで、人々が囲んでいる丸の中に人はいなかった。
「あの子の歌は、外国でも評判があるらしいよ」
「でもたまに、聞くと調子が悪くなる人もいるらしい」
そんなに有名なのか、カイウの友達は。
どんな歌なのか少しワクワクしながら、歌姫の登場を待った。
さっきの孤独なんか、どこかへ飛んで行ったように。
☆ ☆ ☆
「二人とも、早く逃げなさい!」
「お父さんたちのことは、いいから!」
はっきりと、ぼくの両親の声が聞こえた。
「お、母…さん、お父…さん……」
「うるせーな、黙れ!!」
「ぐぅっ……!」
軍人が一人の男の人を蹴っている。あれは間違いなく、ぼくのお父さんだ。
ぼくは痛みに耐えながら起き上がると大男の隙を突き、お父さんたちのいる方へ駆けて行った。
「待て! ソウ!」
カイウの叫びと同時に、
――――パアンッ――――
左足に、激痛が走った。
「っぁ、あああぁぁぁあああ、ああぁぁぁ!!!」
力が抜け、立っていることもできなくなった。地面に倒れこむ。
痛い。痛い。痛い……!
「ソウ!? 死なないで! ソウ!」
お母さんの悲鳴が聞こえる。助けようとしたのに、逆に心配させちゃった。
「大人しく逃げてりゃ、こんなんにならなかったのによ…もうお前歩けねぇよ。残念だなぁ? なんでそんなに頑固なんだよ」
「お母さんたちを、助けたい……」
「助けるって、どう助けるんだよ。ガキ」
大男の銃口は、ぼくのお母さんへと向けられた。
「ほら、お前が助けないと、大好きなママが死ぬぞ?」
「――――!」
「お母さん……!」
「逃げなさい! ソウ! カイウくんと一緒に!」
そんなの、できっこないよ、家族を見捨てるなんて……。
そういえば、ぼくが撃たれてから、カイウが喋っていない。
「カイウ……?」
目だけでカイウを探すと、彼は立っていた。いや、動かない人形のように、棒立ちしていた。
その瞳は生気がなく、魂が抜けてしまったように空っぽだ。
「ね…え、カイウ? カイウ……!」
「なんだなんだぁ? ガキの片方、死んだのか?」
お父さんを蹴っていた軍人が、おもしろそうに笑った。
すると、お母さんに銃口を向けていた大男が、今度はカイウの方に向いた。
「立ったままじゃあ、可哀そうだよなぁ。俺が楽にさせてやるよ!」
「やめろ! カイウに、手を、出すな……!」
起き上がろうとしても、足に力が入らない。さっき、大男が言っていた歩けないという言葉は、本当だったんだ。
「お友達にお別れの挨拶しとけよ、ガキィ!!」
――――刹那。辺りに、渇いた銃声が響いた。




