『はじまり』の始まり
躊躇う暇なんてない。
「ぼくも、助けるに決まってるじゃん! カイウのお母さんのクッキーはおいしいもん」
「……ほんと、ソウの脳味噌は食べ物ばっかり」
呆れたように笑うと、カイウはぼくの手を引いて銃声のした方へと走り出した。
中央広場のステージは国軍の大きな車が突っ込み、タイヤ痕は紅色に染まっていた。
その周りでは、群青色の軍服を着た男たちが次々と逃げ遅れた人たちの足を銃で撃っていく。
「実験材料はあとどれくらい必要なんだ?」
「大人はもう少しだな……。今回、子供は要らないらしい。もうすぐ終わるだろう」
逃げることも身動きをすることもできない人々は、嗚咽を上げながら必死でもがいている。その数は、パッと見ただけではわからないくらいたくさんいた。
「父さん…母さん」
ポツリとカイウは呟いた。どうしよう、このままじゃカイウの両親を助けられない。それに、ぼくの親もどこにいるのか解らないし……。逃げていることを祈るしかできない。
もう思った時、ふわりと体が宙に浮いた。
「おいガキ。ここで何をしている?」
振り返ると、大柄で身長が190センチくらいはありそうな男がぼくの襟を持ち上げていた。
「ソウ……!」
「さっさと向こうへ行け、ガキ。お前らに用はない」
「ソウを離して、大人たちを返せ!」
「お前らには関係のないことだ。ぐずぐずすんな、早く行け。命はとらない」
大男の声がでかいのか、周りの軍人もこちらを見ている。
「俺たちの親がいるかもしれないんだよ!」
「そんなのは知ったこっちゃねーよ。こっちは国の命令で動いてんだから…よぉ!」
急に首元が緩くなったと思った瞬間、背中に雷が落ちたような痛みが走った。気がつけばぼくは、仰向けに倒れていた。
「カ、ハッ……!?」
「ソウ、大丈夫か!?」
カイウの声が聞こえる。でも、姿は景色が歪んで見えない。見えるのは、人の影と灰色の空。もう少しで雨が降り出しそうな、悲しい色。
「さあ、ガキ。次はお前の番だ」
大男のその声は、軍人として任務をこなすのではなく、趣味として痛めつけるようなものだった。
と、そのとき。
「二人とも、逃げなさい!!」
大人たちの中から、聞きなれた声が聞こえた。
☆ ☆ ☆
――――孤独なんて、慣れてたはずなのに。カイウに逢っただけで、こんなに寂しくなるなんて。一人ぼっちであることが恐ろしく感じるなんて。
ソウは強く拳を握りしめた。
――――そうだ、歌を聴きに行こう。カイウの友達の歌を。そうすれば、少しくらい楽になるはずだ。昔のカイウのことを、忘れられる気がする。
誰かネーミングセンスください(泣)




