昔話をしよう
ボクは小さいころからの病気で、ずっと塔に隔離されていた。
一人ぼっちで、ずっとずっと。記憶のある、5歳のころから、ずっと。
ボクの希望は、たまにお見舞いに来てくれるお父さんと、お父さんのくれる玩具たちだけだった。
『体は何ともないか?』『欲しい物があったら言ってみなさい』
そう笑顔で尋ねてくるお父さんは、ボクの心の支えだった。
でも、ボクは知っていた。
このお父さんは本当のお父さんじゃないってこと。
ボクに会ってくれている〈お父さん〉は、本当のお父さんに命令されて〈お父さん〉として会っていることを。
「ボクの本当のお父さんじゃないんでしょ?」
そう聞いてみたくても、その言葉のせいで〈お父さん〉に見捨てられたくなかったし、本当のお父さんがこのことを知ったら〈お父さん〉がどうなるか、怖かった。
だからボクは、お父さんの手のひらで自ら踊った。
〈お父さん〉と親ごっこを演じた。
すべては、本当のお父さんと〈お父さん〉に嫌われないため。
でも9歳のある日、ボクと〈お父さん〉はケンカした。
〈お父さん〉が、ボクの人形を壊してしまったのだ。
その拍子に、ボクは言ってしまった。
『本当のお父さんに、会わせてよっ!!』
その言葉を聞いて、〈お父さん〉は眼を見開いた。
『知ってたのか』
静かに、そう言った。
ボクが頷くと、〈お父さん〉は笑って語りだした。
〈お父さん〉にはボクと同じくらいの子供がいたのだが、ボクのお父さんが〈お父さん〉と奥さんを連れ去ったこと。
〈お父さん〉にはボクのお父さん役を、奥さんは人質になっていること。
ボクがそれを知った時点で、〈お父さん〉の仕事は終わりだということ。
『さよなら、シュロ』
〈お父さん〉はボクの頭に手を置くと、部屋を出て行った。
ボクに何も言わせないように、早足で。
数日後。塔の外が騒がしいと思って、窓を開けた。
そこには、王国の兵隊が集まり、男の人と女の人を囲んでいた。
兵隊の手には、大きな大きな肉切り包丁みたいな物が握られていた。
――知っている。この風景は。この国の、処刑方法。
「や、やめ、てっ……!」
兵隊が罪人を囲み、手を切り落とし、足を切る。まだ相手の意識があるときに、その足を細かく切り刻むところを見せつける。そして、胴体を真っ二つに切り分ける。
「〈お父さん〉っ!!」
大きな声など出したことがないけど、このときははっきりと言えた。
「シュロ!!」
声が、聞こえた。
次の瞬間には、男女の悲鳴がボクの耳に突き刺さった。
呼び方を「お父さん」と「パパ」で、迷っているのでもしかしたら編集するかもしれません。




