st.06 日の出
夢の世界を堪能していると、目覚ましのアラームが爆音で鳴り響いた。
「ふぁぎゃ!?」
時刻は朝6時オクロック、久しぶりの遅起きとなった。簡単にシャワーを浴びて、冷蔵庫に入っていたサンドイッチを頬張り、制服に着替え始めた。
カッターに袖を通し、下から上までボタンを留めたら次はネクタイを首にかける。ネクタイをピンで留めたら、紺の上着に身を包み、制帽を頭に乗せた。
なぜここまでスムーズに来れているか?日本との違いが少なすぎるからだ...!なんでだ!?何でこんなにも違和感がないんだ!?
「ってか異世界で何でこんなに科学が発達してんだよ!!」
湧きどころの分からぬ怒りをぶちまけていると、内線がかかってきた。
「...もしもし?」
『やぁやぁ私だ!そろそろ起きる頃かと思ってね。というより、何だか機嫌が悪そうだな...何かあったのか?』
「ヴィルスさんでしたか!...特に大事などではないのですが...あー、魔法って実在してますか?」
『なぁにバカなこと言ってんだ!魔法なんてあるわけないだろう?』
この時、俺の異世界への希望は打ち砕かれた...
『とりあえず、昨日も伝えたけど西のC-3だからな。遅れないように。あと、衣類とか所有物も全て持っていくこと。バッグが足りなければ食堂横の購買部でキャリーケースを買っていくといい。部屋に社員証があったと思うが、あれを使えば給料から引かれるからお金の代わりに使うんだ。』
「了解です。...なんか注意点みたいなのってありますか?」
『特にないな。それとも初仕事は緊張するか?』
「いえ!そう言うわけじゃ...」
『だぁいじょうぶ!スタッフのほとんどは先輩だから!』
一方的すぎる...!
『それじゃ、幸運を祈るよ異世界人!』
ガチャンという音がして電話は切られた。
「所持品って言ってもな...前のカバンに入ってるのしかないわけだし...」
サッと荷物をまとめた新旧カバンを新たなキャリーケースに詰めて部屋を出た。幸いL@5ブロックはセンターの西端に位置しており、以前に比べ楽に移動ができそうだ。
などと考えているうちに早速受付に着いた。
「業務手帳と社員証お願いしまぁす。」
「こちらです。...社員証は前は聞かれなかったんですけど...」
「ああ、人によって見る見ない変わっちゃうんですよ。一応マニュアルでは確認しろってなってるんだけどねぇ...」
「ああ、そう。」
「はい確認は終わりです。きょぉも一日ご安全にぃ!」
「ご安全にー!」
うん、違和感がない!そのままの感覚でいけちゃう!ナニコレヤダ怖い!
「C-3...C-3...あ、ここか!」
吊り下げ看板にデカデカとCー3とかかれ、10両程の車両が静かに佇んでいた。
それは、愛称のごとく日の出をありありと思い浮かばせる外観だった。細い金のセンターラインの上下で色が分かれており、上段はサンライズレッド、下段は下から上に紫苑ブルーからオレンジバーミリオンという反対色の鮮やかかつ大胆なグラデーションがひときわ目を引いている。
「これね、海をイメージしているんですって。」
いつの間にか女が横に立っていた。
「海...か...」
「日の出は寝台列車によく似合う...海ともなれば尚更。必ず朝を迎える、そんな決意も込めているそうですよ。」
「いかにも寝台列車だ!あ、そうそう、俺は新しく車掌になった小川町です。よろしく。」
女は、ゆっくりと手を差し出し言ってきた。
「アテンダントのミハイルです。みなさん中でお待ちかねですよ?車掌さん。」




