st.05 配属
「講習を追い出された?」
コーヒーを淹れながらヴィルスが聞いてきた。
「はい...ちょっと調子に乗ってしまいまして...」
「まあいい。それでもちゃんと終業印が押されているじゃないか。大丈夫。この会社の教育係でそんな投げやりな奴はいないさ。はい、どうぞ。」
ミルクは三つ、砂糖は一本。マドラーでかき混ぜる。
「ブラックじゃなくて甘めが好み?」
「ええ、いい大人が恥ずかしいですよね...」
「どこにもコーヒーは苦くなくてはならないなんてルールはない。それに、どんな物も好き好きだよ。私も苦味は我慢して飲んでいるクチだ。」
ヴィルスは砂糖を大量にいれ始めた。
「意外ですねぇ。じゃあなんでブラックで飲んでるんです?」
「どうも、ブラックコーヒーが飲めないと立場上危ういのでね...。まあ、二杯目からはミルクティーを淹れるようにはしてるよ。」
「ところで今日は何で呼んだんです?」
「おお!すっかり忘れてた!急な話ではあるが、君の配属先を決定させてもらったんだ。」
仕事が早い!めちゃくちゃ気になるけど冷静な感じでいこう。
「それで、どこになったんです?」
ヴィルスは、にこやかな顔で少しため気味に言ってきた。
「寝台特急アルヴァ・エクスプレスの車掌なんてやってみないか?」
寝台特急の...車掌...?
「ムリムリムリムリ!!!!」
「いやいやいやいや!無理ってことはないだろ!」
「無理ですよぉ!だって俺入社2日目ですよ!?普通は駅員、普通列車の車掌、運転士からの上等列車のアテンダントって順を踏むでしょう!?それに!言ってませんでしたけど俺転生者なんです!!あ、いや、転移者か...?ってことは置いておいて異世界人なんです!!とても無理ですって!!」
「ならもっといいじゃないか!...実はな、私たちは国際的な鉄道会社ではあるが、やはり差別や偏見というのはどうしても生まれてしまうのだよ。それは生まれや育ちがとてもおおきい...だけど、君はそのどちらも満たしていない!差別もクソもないんだよ。そういう人にサービスの要を担ってもらいたいと考えている。」
確かに...そうではあるが...が!
「じゃあとりあえず明日ゼロハチサンゴーにサーフェンス西車両基地C-3の列車に乗り込みなさい。後の指示は...あー、あっち行ったらどうにかなるから。今日のところはL@5ブロックの301号室に泊まりなさい。そうそう、制服とかマニュアルとかはその部屋にあるから。はいこれ鍵。」
なんか...ホテルみたい。大浴場とか食堂まであんのか...
「じゃ、幸運を祈るよ。アーディオス!」
ヴィルスが胸元から取り出したスイッチを押すと、床が開くと同時にソファの座面も下に倒れた。コマンドーみたいに落ちていった先にあったのは、トイレの個室。
「な...なんだこの仕掛けは...!?」
驚きと呆れが同時に現れ、しばらくは魚のように口をぱくぱくさせていた。この後、泊まれと言われた部屋に向かったのだが、死にそうな思いをしたのは言うまでもない。




