st.02 新天地
気がつけば、草の匂いがあたりに漂っていた。薄目を開けると、一面緑の世界。
「異世界...ね...」
少し遠くを見ると、灰色のラインが地平線の手前に見えた。よくみると、長く繋がった箱のようなものがゆっくりと移動している。
「ありゃぁ...線路か...?」
駆け足で近づくと、朧げが確信に変わった。架線柱が立ち、枕木が敷かれ、灰色に見えたのはバラストの土手のせいだった。一直線にレールは敷かれ、地平線の彼方までカーブは見えない。
「異世界っていっても電車が走ってるんだな...複線だし... 」
その時だ、遠くから警笛が聞こえてきた。見れば、列車が遠くから近づいてきていた。
「おーい!ストップ!ストォーップ!」
あれ...?異世界って言語通じんのかな...?確信が持てない今は、こうするしかないか!
両手を振りながら線路の上で立ち止まる。言葉がわからなくても、人は轢けないはず...!こうしていれば絶対に止まる!...たぶん...
予想通り、列車は徐々に速度を落とし、10mほど前で停車した。列車の顔は...大正期の京王に近い。そのまま立っていると、運転席から1人の男が降りてきた。
「おいこらおんめそこで何しちょる!邪魔だからはよどきぃや!」
聞いたことのない方言...!...とりあえず日本語は通じるようだ。
「ってかおんめさんこんなとこで何しちょぉ?荷物も持たんで...次の街まで行くんにゃ日ぃくれるでな。」
「なんか...簡単に言うと遭難してしまって...!」
「ほんだらこん車ばのりゃぁえぇ!次の駅まで連れて行っちゃる!」
「いいんですか!?ありがとうございます!」
乗務員室から乗り込んで、客室に通された。乗ってる人は自分だけの空気輸送状態。だが、後に聞いた話によるとこの列車は回送だったらしい。2時間ほどガタゴトと揺られて、列車は駅へと到着した。
「へい、ついたでな!東サーフェンス!」
日本でもみたことのない幅広の線路群を前に、俺は呆然と立ち尽くした。




