表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
来世でも一緒に  作者: 霜月
本編
38/63



「あの、先輩、すみません」


「……ん? なに?」


「ここちょっと教えてください」


「あー、ここは、コレ開いて……こうすれば――――」



 秋と冬の中間くらい、そろそろホットのココアが恋しいなと思う時期。

 ブラインドの隙間からポカポカとした陽の光が差し込む中、私はいつものように智也先輩と研究室にいた。


 智也先輩のスマホから小さい音量で洋楽ロックが流れていて、それを聴きながらお互い自分の作業をする。


 先輩にPCのことでちょっと教えてもらっていると、突然研究室のドアが開いたので、伊藤先生かと思ってドアの方を見たら、違った。


「万里ちゃーーん! 智也ーー!!」


 そこには、ポッ◯ーやら、プ◯ッツやら、トッ◯やら。

 なにやら細長いお菓子をたくさん抱えた涙目の涼先輩がいたのだった。




 *




「……それで、よくそのコンビニに行くようにしたんだよ」


「ふむ、なるほど。ちなみに連絡先とか交換は……?」


「最初に言ったときにキッパリ断られた……」


「まぁ、デスヨネー」


 昼間に涼先輩が来るなんて珍しいなと思っていたら、「オンナノコのキモチを教えて!!」と、恋愛相談を持ちかけられた。


 ちなみに大量のお菓子は相談に乗ってもらうための貢物らしい。

 あと、智也先輩は「俺、オンナノコじゃねーんだけど」と言った後、腕組みしてずっと黙っているが話はきちんと聞いている。


 私がそれらのお菓子をありがたく頂戴して、食べながら話を聞いていると、どこかで聞いたような話が始まった。


 というのも。


 夏休みの中頃、借りてるアパート近くのコンビニが改修をしてたので、今まで行ったことのない少し離れた所にあるコンビニへ行ってみたらしい。

 そしたらそこの店員さんがめちゃくちゃ可愛くて、なんかビビビッときたんだそうだ。


 レジのときに思わず告ってしまったが、当然のごとく「チャラ男のナンパお断りです」と言われてしまって。

 それでも諦められずにちょくちょく行っては告白しているらしいのだが、全く相手にされないとのこと。


「ナンパだけどナンパじゃないんだよー。オレ本気なのにー」


 そう言って顔を両手で覆い、ウワーンと言っている涼先輩を見てると、某幼なじみの顔が頭に浮かんだ。


(コンビニなんて沢山あるし、……まさかね)


 そう思い直して私は口を開いた。


「参考までに聞きたいんですが、その女の子ってどんな子ですか?」


「えっとね、アッシュブラウンの……なんて言うんだっけ? 女子がよくしてる、首んとこで髪を切りそろえた……」


「……ショートボブ?」


「そうそうたぶんそれ、の女の子。あとちょっと目が猫っぽくて、全体的にめっちゃ細い」


「……なるほど」


(……まさかそんな偶然? いやいやいやいや)


「ねー、オレってそんなにチャラそう?」


「え……? ソ、ソンナコト……」


「万里ちゃん!! 正直に!」


「……スミマセン、第一印象は……この人チャラいな。と、思いました」


「どこが?!」


「ど、どこ?!」


 そう言われて、改めて涼先輩を観察する。

 くせ毛なのか、ちょっとウェーブのかかった明るめの茶髪を後ろで一つ結びにしていて、左耳にはたくさんのピアスがついている。

 白いTシャツに、ストライプが入った臙脂色のロングシャツを羽織り、ダメージ系のジーンズとビーサンを履いていた。

 ちなみに私の好みとは少し外れるが、涼先輩もフツーにイケメンで背も高い。

 鼻筋は通っているし、肌もきれいだし、少しだけタレ目で、ニカッと笑った時の顔は可愛い。


(うーん、ちょっと髪が長いのかなぁ? あとピアスが多すぎ。服装はまぁ置いといて、なんでビーサン……?)


「……先輩はその髪型とピアス、ビーサンにこだわりがあるんですか?」


「え? いや、別に。ない」


「髪はまぁ置いといて。ピアスの数を減らせば少しはチャラさが収まるかも? あと、これからの時期にビーサンは見ていて寒いのでやめてほしいです……」


「わかった!」


(あとは……その雰囲気……)


 先輩は最初から良くも悪くもフレンドリーだった。

 初対面からタメ語でグイグイ来られれば戸惑うだろうし、正直なところ私も最初はちょっと苦手だった。

 でも、慣れてしまえば話しやすく、笑うことも多くて楽しい会話ができる。色々と聞いてくるけど基本的に不快なことは聞いてこないし、こちらが少しでも言葉を濁せばそれ以上追求してくることもない。


 第一印象は確かにチャラいけど、慣れてしまえば何というか……そう、ワンコだ。

 智也先輩はどちらかというとオオカミっぽいイメージだが、涼先輩は確実にワンコ系。


(イケメンだし、話もうまいし、優しい。……しかもワンコ)


「先輩って結構モテるんじゃないんですか?」


「えー? どうだろ? 告白とかはされるけど、オレ自分が好きな子以外キョーミないから、彼女はあんまりいたことないよー?」


(……やっぱりモテるんだ。でも、好きな人に一途って好感度高いよね)


 これはもしや。

 ナンパという状況には変わりないが、見た目の雰囲気をキレイめにして、ちょっと真面目な雰囲気で押せばその『店員サン』とやらもイケるかもしれない。


 ……彼女は割と自分好みのイケメンからの押しには弱いのだ。


「先輩! やっぱ見た目のイメージ変えましょ! 先ずはチャラ男のナンパって思われちゃってるのをどうにかしないと! 先輩カッコイイんだから、本気度を見せて押せばなんとかなるかも」


「そうかな?!」


「たぶん!!」


「たぶん?! ……ま、いいや! 確かに今のままじゃ手応え全然っぽいもんなー。イメチェンか。就活もあるし、やってみっかなー」


「先輩、頑張って!!」


 胸の前で両手をグーにして、応援する。


「あはは、万里ちゃん、ありがとー。……それにしても、万里ちゃんって良い子だよねー。オレの話も真面目に聞いてくれて、応援までしてくれるなんて。万里ちゃんの彼氏が羨ましいなー」


「ええっ?」


 急に私の話になり、動揺する。


「ねーねー。万里ちゃんの彼氏ってどんな人?」


「か、彼氏は…………いません」


 少し目線を逸らして答える。


「マジで?!」


「え、先輩なんでそんな嬉しそう……?」


「あー、いやいやいやいや! ごめんごめん! えーでも、そうなんだ? 意外だね! ……ほしいとかって思わないの?」


「うーん、ほしいなって思う時もありましたけど、ちょっとここ数年は自分の事でいっぱいいっぱいで、そんな余裕なかったというか……」


「えー! じゃ、今は? 好きな人とかいないの?」


 涼先輩が妙にキラキラした目で聞いてくる。


(好きな、人……)


 無意識に、智也先輩に視線を移してしまった。


「……市川……?」


 少し驚いた表情の智也先輩に名前を呼ばれ、ハッとする。


(ヤバい!)


 やってしまった。


(何やってんの私! 今のタイミングで顔見るなんて!)


 ヤバいと思えば思うほどに、頬と耳に熱が集まってくる気がする。


「あ、の、涼先輩。私、自分のこういう話苦手で……」


「え! あ?! そーなの?! グイグイ聞いちゃってゴメンね! ……あー、えっと、そうだ万里ちゃん、時間大丈夫?!」


 私が2人から視線を逸らしてそう言えば、涼先輩が何故か慌てた様子で話を終わらせてくれて。


 先輩の言葉でスマホの画面を見ると、バイトに行くには少し早い時間だったのだが、今日はもう智也先輩の顔をまともに見れる気もしないので、とりあえず部屋から出ることにした。


「あーと、ちょっと私、用事があるんでした! 今日はもうあがりますね!」


 私はそう言ってワタワタと荷物を纏め、廊下へと続くドアを開ける。


「あ、先輩、お菓子ありがとうございました! イメチェン頑張ってくださいね! 応援してます! じゃ、行ってきます! お疲れ様でした!!」


 振り向き様にそう言ってドアから手を離すと、閉まるドアの向こうから、涼先輩の「相談乗ってくれてありがとー! バイト頑張ってねー!」と言う声が聞こえた。


(ひーーーー! 恥ずかしぃぃーー!!)


 そしてその後の私は。

 熱くなっている耳と頬を押さえ、足早に廊下を歩いてバイトへと向かったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ