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来世でも一緒に  作者: 霜月
本編
20/63

閑話*お茶会という名の女子会



 今日は王宮で行われるお茶会へ、母と一緒に招待されている。


「私的な少人数のお茶会だから、そんなに気負わなくて大丈夫よ」と母は言っていたが、王妃であらせられるイネス陛下主催のお茶会で、母と仲が良いという王太后陛下も来られると聞いては、緊張するなと言うほうが無茶な話である。


 ただ、第一王子にお会いできるかもしれないというのは楽しみだった。


 小さい子は好きだ。抱っこするだけで癒される。

 弟のユーゴも幼い頃は可愛かったが、今はもう……だし、身近に小さい子がいないので、久しぶりの幼子との触れ合いに期待してしまう。


 私は弟の小さい頃を思い出して、少しニマニマしながら母の迎えを待った。




 *




 母と一緒に王宮の中庭に案内されると、そこにはすでにイネス陛下と、王太后のルイーズ陛下がおられた。


「本日はお招きいただきまして、ありがとうございます」


 優雅に見えるようにゆっくりとカーテシーをとる。


「夫人! マリアンヌ様! 来てくれたのね、嬉しいわ!! ああ、そんな堅苦しいのはやめてちょうだいな!」


 そう言われて顔を上げると、イネス陛下が立ち上がって歓迎してくれた。


 イネス陛下の足元には黒髪にアメジストの瞳をした男の子が立っていて、ドレスにしがみ付いている。第一王子のリュカ殿下だろう。


「エレオノール、久しぶりね。会いたかったわ」


 イネス陛下の後ろからルイーズ陛下が来られ、笑顔で母に声をかけた。


「ルイーズ陛下。お久しぶりですわ。お元気そうでよかったです」


 母も笑顔で答える。

 そうして2人の挨拶が終わると、ルイーズ陛下は私に視線を移した。


「マリアンヌもよく来てくれたわ。私と会うのは初めてよね」


「はい。王太后陛下にはお初にお目にかかります、マリアンヌです。以後お見知りおきを」


 ルイーズ陛下に対してもう一度カーテシーをとる。


「ふふふ。顔を上げて、よく見せてちょうだい。私、貴女と会える事もとても楽しみにしていたのよ。あの無愛想な息子のお嫁さんに貴女みたいな素敵なお嬢さんが来てくれるなんて、嬉しいことね。……アレクはどう? 最近雰囲気が変わったとは聞いているのだけど、貴女にちゃんと優しくしているかしら?」


「はい。アレクサンドル様は本当にお優しい方ですのね。お屋敷でもとても良くしていただいていて、感謝しておりますわ」


「まぁ! 本当? それなら良かったわ。一安心ね」


「……アレクおじさんの、およめさん?」


 私とルイーズ陛下が話をしている途中、不意に下からそんな声がしたのでそちらに視線を移すと、私のドレスを握りながらリュカ殿下が私を見上げていた。


「ダメよ、リュカ。レディにはきちんと挨拶しなさいといつも言っているでしょう? 

 マリアンヌ様、ごめんなさいね。あまり人前に出していないものだから、礼儀がまだしっかりと身についていなくて……」


 イネス様が怒った表情でリュカ殿下に声をかけた後で、私に謝ってきた。


 微笑んで首を振り、気にしていないことを表す。


「ごめんなさい。お母さま。え、ええと……」


 私はアワアワと謝るリュカ殿下の目線に合うように、いつもより低くなるよう足を折りカーテシーをとった。


「お初にお目にかかります、リュカ殿下。私はマリアンヌと申します。ぜひマリーとお呼びくださいませ」


 すると、リュカ殿下がパッと顔を輝かせて私を見た。


「マリー! 私の名前を知ってるんだね! すごい! これからよろしくね!」


「はい。よろしくお願いします」


 殿下が笑顔で手を差し出してくださったので、私も笑顔で手を出して握手をした。


「さぁ! 立ち話もなんだし、座ってお茶にしましょう! 早くお2人から話が聞きたいわ!」


「そうね。エレオノールからもマリアンヌからも詳しく話を聞きましょうかね」


 イネス陛下が急かすようにテーブルへと私たちを促すと、ルイーズ陛下もそれに応えるようにウインクした。


 そうして5人でのお茶会が始まったのだった。




 *




「ええ?! あの舞踏会の次の日に婚約の申し込みが?! まぁぁ! まさに電光石火ね! ……兄弟ってそういうところも似るのかしら……?」


 イネス様が扇で口元を隠しながら驚いた声を出したかと思えば、眉を寄せてボソリと何かを言った。


 キョトリと首を傾げていると。


「そう言えば、貴女の前でのあの子はどうなの? 優しいとはさっき聞いたけれど。……でも、あの子無表情だし、基本喋らないし、一緒に居て退屈なのではなくて?」


 と、母と話をしていたルイーズ様がこちらを向いて尋ねてきた。


「そう……ですか? まぁ、確かに最初は無表情な印象を受けましたが。最近は私に慣れてくださったのか、よく微笑んでくださいますし、この前も声をあげて笑っておられましたよ?」


(というか、私が笑われたのだけれど。……何度思い出しても恥ずかしいわ)


「「「ええ?! 声を出して笑った?!」」」

「あのアレクサンドル様が?!」

「あの子が?!」

「あの大公閣下が?!」


 3人がハモって声を上げたので、驚く。


「は、はい。ハハハと。笑っておられました」


「アレクサンドル様って笑うことがあるのね……。ああ! そう言えば舞踏会の時にマリアンヌ様に微笑まれたとか! 私、ちょうどその時、別の貴族からの挨拶を受けていて見られなかったんですの! 残念だわぁぁ!」


「あの子、母親である私の前でも、もう滅多に笑わないのよ! 私も舞踏会に行けば良かったわ!」


「私、見ましたわ! それはそれはふんわりと微笑まれて! あの瞬間かなり周りがザワつきましたのよ!」


「え? でも、アレクおじさん、笑うよね?」


 イネス様とルイーズ様と母が扇を突き合わせて話をしていると、リュカ殿下が声をあげた。


 3人が一斉にこちらを向く。


 ……ちなみに、なぜこちらを向いたかというと、リュカ殿下が私の膝の上に座っているからである。


 何故か、王宮以外から来た人間が自分の名前を知っているという事がツボに入ったらしく、それから最近読んだ面白い本の話などを話しているうちに非常によく懐かれたのだ。

 可愛い殿下からニコニコしながら話しかけられれば、「王国にいる者ならほとんどが貴方の名前を知っていますよ」なんて言い出せなかった。


 まぁ、正直、4才になられた殿下はちょっぴり重たいが、丸い後頭部の真ん中に見える旋毛や、後ろから見えるふくふくとした頬っぺた、ほんのり赤い耳を見られるだけで、膝にかかる体重なんて帳消しになるというものである。


「リュカ、そ、そうなの?」


 イネス様が尋ねる。


「うん。おじさん、笑うよ? ねぇ、マリー?」


「はい。なんだかんだで感情は豊かな方だと思います。確かに、表情筋が硬めでハッキリとは出ないようですが。」


「「「……そうなのね」」」


 すごい、またハモっている。


「でも、最近のあの子は雰囲気が柔らかくなったとは聞くけど、笑うようになったとまでは聞かないわ。リュカは子どもだからとして、女性相手ならマリアンヌにだけなのかしら?」


「どうなんでしょうね? でも、もしそうなら、自分にだけ微笑みかけてくれるなんてトキメキますわねぇ! マティス様は割といつもニコニコしていらっしゃるから、そういうトキメキはちょっと有りませんもの!」


「ああ、でも。これでもっと今度の舞踏会が楽しみになったわ!正式に婚約すると聞いた時、最初はどうなることかと思っていたけれど、マリーが幸せそうで一安心よ。アドルフにも言っておかなくては。……あ、そうよ。舞踏会と言えば。マリー、今度の舞踏会用のドレスは決まったの?」


 母にそう尋ねられたので、マダム・ローズのところに頼んだと話をした。


「まぁぁ! マダムのショップ! 今人気でしょう? なかなか予約が取れないって噂なのよ! アレクサンドル様、頑張ったのねぇ!」


「濃紺に黒! あの子の騎士服と髪の色ね! あの子きっと喜ぶわ! 最近は若い者に任せようと思って宮の奥に引っ込んでいたけれど、今度の舞踏会は是が非にでも出席しなくては! ああ! 当日が楽しみだわ!」


「「ええ! 本当に!!」」




 ………




 と、いう風に。


 私とアレク様について根掘り葉掘りと聞かれ、私の発言に対して、他の女性3人がキャッキャと話をしたりハモったりして、この日のお茶会は進んでいった。


 ちなみに。

 3人が一斉に振り向くたびに、私もリュカ殿下もビクリとして手を握り合ったので、お茶会が終わる頃には、私たちの間には不思議な絆が生まれていたのだった。

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