第一章 7
「オーキー!早かったですね。見て下さい!とっても綺麗になったでしょう?」
広場の雑草が綺麗さっぱりなくなっており地面が整えられていた
ファティは両手を広げクルっと回り、嬉しそうに言った。
「あ、ああ。がんばったな、凄いぞファティ。」
まだ少し、歌の魔力にあてられている感覚が残っているのか、頭がふらつく。
「綺麗になったらなんだか嬉しくて、つい歌を」
まだファティにも歌の余韻が残っているのかコロコロとした声音が通り過ぎる
「ああ、そうその歌だ!なんだったんだ、今のは?」
「街でもよく歌われている、昔からある歌ですよ。」
いつものようにコテンと首をかしげる。
本人は気づいていないが、どうやらこの仕草は彼女の癖のようだ
「いや、そうじゃない歌のことじゃなくて、君の歌声のことだ。普通じゃない」
「えっ・・・そんな・・酷い・・普通じゃ・・普通じゃないなんて・・」
それまで晴れやかな笑顔を見せていたファティの表情が
目を潤ませ、みるみるうちに哀しみの色に染まる
「オーキーの前ではもう二度と歌いません!」
頬を膨らませ、半泣きでそっぽを向く。
せっかく一仕事終えて、気持ちよく歌っていたというのに、いうに事欠いて普通じゃないなんて、無神経にもほどがある。もう何があっても歌ってあげないんだからと心に決める。
「いや!いやいや!ちょっ!誤解だっ!そうじゃない、そうじゃないんだ!ファティ怒らないでくれ。」
慌てふためき、どう言い繕おうかと考えながら言い募るオーキー
「じゃあ一体どんな意味でそんな失礼な事を面と向かって言えたのですか!」
ファティは尚もぷぅとドングリを頬に詰め込んだ山栗鼠の如く、頬を膨らませている
「いや、歌も歌声も素晴らしかった!この森に棲むどんな鳥よりも美しい歌声だった。こんなにも美しい歌声に俺は初めて出会った。風さえも聞き惚れてその歌を森中に届けていたに違いない。その証拠に花も草もキラキラと輝き、太陽さえも聴き入ってしまっている。世界中どこを探してもそんな歌声が聴けるものか。そう、普通じゃない。それを特等席で聞けた俺は何て幸せ者なんだろう!」
オーキーは持てる語彙を総動員して、思いつく限りの最高の賛美と美辞麗句で取り繕う
それを聞いて、ファティは喜色に満ちた、照れくさそうな、なんとも言えない表情に変わった。
「えへへ、そんな・・もうオーキーったら、誉め過ぎですよ」
赤らんだ頬を両手で抑えているが、なんとも言えない表情のままだ。
(ふぅ、何とか機嫌は直ったようだ)
そんな事をオーキーは心のなかで呟いていた。
「あ、いやそんな事を言いたかったんじゃなくてだな」
「そ・ん・な・こ・と?」
じとっとした表情でオーキーを見つめるファティ
「い、いやファティの歌はとても良かった、そうじゃなくてだな、君の歌声にはなにか不思議な力が宿っている」
せっかく機嫌を取り直したのに振り出しに戻りそうな雰囲気に
急いで方向修正をおこないつつ、先ほど感じた力について伝える。
「不思議な力、ですか・・?」
「ああ、気づいていなかったのか。今まで歌のことでなにか言われたことはなかったか?」
「いえ・・・特には・・あっ、でもお父様に小さい頃歌って差し上げたら『とても素晴らしい歌だったよ、でもファティの歌声は私の宝物だから、他の人の前では歌ってはいけないよ』とおっしゃっていました」
(・・・父親は気づいていたんだな)
「ファティ、君の歌は恐らく魔法に近いものだと思う。妖精族の中には言葉そのものが魔法言語の者達もいると聞く。ハーフエルフである君の歌に魔力が宿っていても不思議はないが・・」
「はぁ、そうなのですか。」
あまり驚きもせず、ただ感心しているようだ。
ファティはそんなことよりも気になるものを発見した
「ところでその大岩・・」
「ん?ああ!そうだった、こっちが本命だ。よいせっ」
ドシンッ
右肩に担いでいた大岩を地面に降ろした。
(歌に関してはあとで調べよう。ファティにとって悪いものでなければ良いんだが)
心配性な彼は、ファティに何かあってはいけないと、問題を先送りにしながらも対策を頭の奥で立て始める。
第7話
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次話はまた月曜日の朝7時10分更新予定です。




