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第二章 2

「ダメだ」


「イヤです」


「ダメなものはダメだ」


「イヤだったらイヤです!」


ファティは小さなウサギのような動物を抱えて駄々をこねていた。


「捨ててくるんだ、それはかわいい見た目をしているが危険な魔獣なんだ」


オーキーは困ったといった表情で何とかファティからその魔獣を引き離そうと説得を試みている最中だ。


「イヤです!」


どうしたものかと頭を振り溜息が漏れる


「はぁ、いいかファティ、その魔獣は『蹴爆兎』といって、その脚力は凄まじい威力なんだ。

それはまだ幼獣のようだが、成獣になれば一蹴りで空気が爆ぜ、大型魔獣さえ一撃で爆散させるほどだ。」


その小さな魔獣の脅威を親切丁寧にわかりやすく説明してやるが

尚も離そうとしないファティ


「だから早くそれから離れてくれ」


さすがのオーキーでもこの距離であの威力の攻撃をされたらファティを守り切れないと焦っていた。


「大丈夫です、見てください。」


抱えていた蹴爆兎を差し出すようにオーキーにみせるファティ


「ケガ、しているんです、この子。傷が深いみたいでぐったりしてしまって」


よく見てみれば確かに怪我をしているようだ

これなら放っておいてもいずれ事切れるだろうと少し安心した


「オーキー、助けてあげてください」


目を潤ませながら、常から二人の身長差からそうなるのだが

上目遣いでファティは見つめて、その願いをぶつけてくる


「ダ、ダメだ、本当に危険な魔獣なんだ」


それを真正面から当てられたオーキーは胸をえぐられながらもギリギリで持ちこたえ、それでもきっぱりと拒否をする。したつもりだ。


「それにこの森に棲むものにとって、命のやりとりは当たり前だし、それが日常なんだ。わかるだろう。」


「わかりません!」


本当は、珍しくわがままをいうこのかわいい少女の願いだから叶えてやりたいとは思う、しかし、この魔獣はあまりにも危険すぎる。

正直オーキーも成獣に出くわしたらかなり慎重に対処しなければならない

一度、狩りをしているときに鉢合わせてその強烈な一撃をもらったことがあるからだ

できるなら二度と関わりたくないと思っている。


「ファティお願いだ、わかってくれ。他のお願いならいくらでも叶えるから。

ほら、この前話した色とりどりの花が咲く丘に連れて行ってあげよう、だから頼むからそれから離れてくれ。」


「う、それは行きたいです。でもこの子も助けてあげてください」


手札を出すだけで損をしたオーキーは空を見上げて顔を覆った


「オーキーは何故、あの時私を救ってくれたのですか」


「そ、それは」


正直あの時のことは自分でもわかっていない。うまく言語化できていないのだ。

何故と問われればそれは衝動でしかない。

答えに窮してしどろもどろしていると


「優しいから」


小さな少女はあの時と同じ答えを示してくる。


「私はあなたが優しい人なのを知っています。だから私を救ってくれた。この子と私に違いなんてありません。ね、オーキー。」


はぁぁぁ、と長い溜息をつき、見上げていた顔を小さな少女へ向けなおし


「君はずるいな。そんなこと言われたら助けるしかなくなるじゃないか」


「オーキー!」


ぱあと顔を花開かせ、目尻にわずかに溜めた涙をはじけさせてファティは喜んだ。


「まったく、俺は君に甘すぎるな」


「うふふっやっぱりオーキーは優しい人です。」


「わかったわかった、こうなったらやるだけやってみるから、そこに乗せてくれ」


指さした先には大きな木の切り株がある

普段、作業台にしたり腰かけに使っている場所だ


「はいっ」


とことことそこへ駆けていき、抱いていた小さな魔獣をそっと横たえる


「やってはみるが、俺の治癒魔法は生物がもつ自然治癒力を急激に加速させるものだ。だからここまで悪い状態だと血も足りないし、傷は塞げても助かるかはこいつの生命力次第だ。それでもやるか?」


「そうなのですね、でもこのままにしていたら確実に死んでしまいます。少しでも希望があるのなら、助けてあげたい。」


「わかった、やってみよう」


「お願いします」


オーキーは横たわる蹴爆兎に大きな手をかざし魔力を練り始めた

掌に淡く橙色の光が収束していく


「―癒―<コンソランテ>」


つぶやくようにいつもの調子で簡単に魔法を行使する

すると掌から橙色の光が、蹴爆兎の身体へ移り包み込んだ。

あれだけ深手だった傷が、逆再生するように本来の形に塞がっていく。


「すごいです。あっという間に傷がなくなりました。」


隣で手を組んで祈るようにしていたファティが驚嘆する


「これで傷は大丈夫だが、やはり意識は戻らないな。あとはこいつの生きる意志次第かな。とりあえず血が足りてないから体が冷たい、温めてやるといい。」


「わかりました! 毛皮とお湯の準備をしてきます」


そう言うや物凄い勢いで駆け出して行った


「やれやれ、目を覚ますかわからんが、起きて暴れられても困る。役に立つかわからんが、檻くらいは作っておくか」


ぼりぼりと頭を掻きながら檻の材料を探しにのっしのっしと森へ入っていった。




遅くなってごめんなさい

次話もいつになるかわかりませんが気長にお待ちいただけたら幸いです。

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