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はじめましてのお義兄さまは、前世が陰陽師で次期公爵〜設定盛りすぎでは!?〜  作者: くりもも


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7/22

陰陽師と召喚魔法!?

「……」

中間テストの筆記が終わった週末。

わたしはとある扉の前で、ノックをするため手を上げ……下げ、また上げて──下げる。

う、うううう、さっきからナニやってんのわたし!

目の前の重厚感満載の扉を見上げ、コクリと喉を鳴らす。

扉を見るだけで気圧されてどうするんだ!

勇気!勇気を下さい!アンパ〇マ──ン!


「ルル?」

「あ」


扉が内側から開き、顔を出したのは、お義兄さま。

そう、ここはお兄様の自室です……。

「どうしたんだい?また座り込んで……ほら、立ちなさい」

「は、はひ」

お義兄さまはわたしの手を握ると、さして力をこめる風でなく、ひょいと立たせてくれた。

ち、力持ち。

いや、魔法騎士としても名高いお義兄さまだもの、このくらいお茶の子さいさいなんだわ!

さすがです!


そのまま自然に部屋の中に入れてくれて、ソファへ誘導される。

ぽすんとわたしがソファに落ち着くと、ご自身用に置かれていたのだろうポットに手を添え──ポットから湯気が立ち昇った。

「!」

なんて事ないように行われたソレに、わたしは目を丸くした。

「お、お義兄さま!なんて繊細な魔法制御……!」

「うん?ああ、たいした事ではないよ」

照れくさそうにしてらっしゃるけども!

どんなに魔力の強い者でも、その制御が出来なければ“ポットを温める”なんて繊細な事は出来ない。

例えばいま同じ事を魔法制御の下手な者がしたら。


……ポットは焦げ落ちてしまっただろう。


手の中でほこほこと温かいティーカップの湯気を顎で受けつつ、ため息を漏らす。

わたしには到底無理だ……。

「で……私に相談事かな?学校の事?それとも公爵家での事だろうか」

向かいに座るお義兄さまは二十歳と言う若さで、騎士団の一個大隊を任されるほどの方だ。

わたしみたいな小娘の悩みに付き合わせても良いものだろうか。

「えっと、その……」

言い淀むと、ソファのわたしの両側に陣取る白虎と大きな亀──玄武(やっと会えた)が励ますように、擦り寄ってきた。


う、嬉しいんだけど、見えてない体は継続中だから目を合わせられないっ。

な、なんか申し訳ない気分になるわ……。


しかしそんな式神たちの気遣いに、よしっ!と心を決める。

「お義兄さま、せっかくのお休みにごめんなさい。あの、ちょっとご相談したい事があって」

「可愛い妹の話ならいつでも聞くとも。もしや、週末まで待ってくれていたのかい?」

「う、えっと」

「……ルルは気遣いの出来る優しい子だね」

よしよしと頭を撫でられて、思わず顔が熱くなる。

あ、あわ……。


「それで?わたしの可愛い妹を悩ませるのはどんな事だろう」

ハッ!いかん!

お義兄さまのなでなでに、魂抜けてた!


「……わたしの魔力について、なのです」


「魔力?」

「はい。週明けから、中間テストの魔法実技が始まるんです」

「ああ、シャルからも聞いているが……」

「わたしが……中等部の頃、周囲になんと呼ばれていたかもお聞きになりました?」

「え?いや」

わたしは俯いて、ティーカップを見つめる。

そこには自信の無さ気な目をした少女が映っていた。


「“顔だけ令嬢”──そう一部で言う者もおりました」


「……」

お義兄さまの顔から表情が抜け落ちる。

び、美男子の真顔、怖いいい!

「……誰が、そのような戯言を……」

お義兄さま、おおお落ち着いて!?

青筋がとんでもない事になってます!

「ある意味、本当の事でした……勉強の成績は良くもなく悪くもなく“ほどほど”で、特段身体能力が高いわけでも無く、身分は男爵家」

まぁ、学力については力をセーブしてたからアレだけどネ!

見た目ばかりが人の噂に登っていたとは確か。


お義兄さまはゴホンとひとつ咳払い。

「……魔力について、という事だったが」

「はい……その、お義兄さまから見て……わたしの魔力はどのように見えますか……?」

「どう言う事だ?いや、まずは……幼少期の魔力判定ではどのように言われた?」

ううーん、どんどん話しづらい方向に。

でも自分から聞いたんだから、言わないわけにはいかないよね。

めっちゃ黒歴史だが……!


「『分からない』と」

「なんだって?」

いや、言いたい事は分かります、分かりますよ!

権威と由緒ある聖教会が行う魔力判定で“分からない”ってなんだ!?って思うよね!

当時のわたしもそう思ったわー。

うわーん。

本来、七歳頃に行われる初めての魔力判定でおおよその属性が分かる。

もっとも、五歳くらいには無意識に魔法を使っていたりするもので。

『ああ、この子は火魔法が得意になりそうだな』とか、なんとなーく予想は出来るのだ。

ちなみにわたしの“観察眼”は、まぁいわゆる転生チートみたいなもんだと思ってたからなぁ。

小さい頃から周囲には黙っていた。


だから、教会の魔力判定の日『……分かりません』と言われた時もそんなにショックではなかった。

『そっかー。やっぱ転生者だからカナー?』程度。

魔力のな人も一定数いる世界だし。

そう言う人達は、別のジャンルに特化した才能を持っていたりする。

めちゃくちゃ頭が良い、とか歌が上手いとか。


「──そのどれでもなかったので、両親には泣かれました。ふふ」

特にお義母さまはガッカリしてたなー。

「子のあるべき姿をそのまま受け入れるのが、親と言うものだ。ルル……そのような仕打ちに慣れてはいけない」

「……」

うっかり視界が滲んで、慌てて瞬きをする。


「ルル、目を瞑って」

「え。あ、はい」

優しく言われて目を閉じれば、頭に乗せられた手から、じわと温かい“何か”を感じる。

なんだろう……これは……お義兄さまの、魔力……?

ぽかぽかしていて、とても優しい“触り心地”がする。

「ふむ……」

お義兄さまの声にそっと目を開ける。


「私からはどう見えるか、と言ったね。──ルルの魔力は、とても優しくて温かいよ」

「……それは……わたし、わたしにも、魔力がある、という事です、か」

「そうだ。……泣かないで」

言われて、自分が泣いていると気づいた。

ころり、ころりと零れ落ちる涙をお義兄さまが指で拭ってくれる。


気にしてないって思ってたのに。

魔力なんて、無ければ無いで構わないって思ってたのに。


「ただ……なんと言うか……まだ魔力がはっきりと形を成していない感じがする」

「?」

どゆこと?

魔力はあるけど、はっきりしていない?

んんん?

「そうだな。ルルの魔力は『何になろうかな?』って考え中なんだ、きっと」

そ、そんな事あるの!?

「魔力は均一的なものじゃないからね。覚醒する時期だって人それぞれだよ。火魔法が得意だと思っていた団員が、唐突に風魔法に覚醒したりね」

「まあ!」

うわー、魔法師団のお義兄さまのお話、説得力あるぅー!


お義兄さまはにっこり笑って、ぽんぽんと頭を撫でてくれてた。

白虎と玄武も『大丈夫!』『頑張れー!』って言ってくれてる気がする。

見えない振りしてるから、お礼言えないけどありがとね!

「つまり、ルルは可能性の塊ってわけだ。たとえ実技で良い点が取れなくても気にすることはない……だが」

腕を組んで何やら考えていたお義兄さまが、うんと頷く。


「ルル。召喚魔法を学んでみないかい?」



と、言うわけで。

わたくし、公爵令嬢ルルティア・ロックフェルド。


陰陽師から召喚魔法を学ぶことになりました!


マジで────っ!?

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