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はじめましてのお義兄さまは、前世が陰陽師で次期公爵〜設定盛りすぎでは!?〜  作者: くりもも


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“ほどほど令嬢”からの脱却、ムズカシイ。

「久しぶりだな」


我がシャゼリア皇国の皇太子殿下──アドレアス殿下はまっすぐにわたしを見て、静かに仰った。

「……お久しぶりでございます」

実は、皇太子殿下はわたしと同い年で、クラス替えのある中等部の頃には何回か同じクラスにもなった。

まあねー、しがない男爵令嬢と皇太子殿下じゃあ接点なんて有るような無いようなもんで。

行事やなんかで多少は関わった事がある、くらい?

相変わらず、本人はそのつもりは無いんだろうけど、眼光が鋭すぎて睨んでるみたいに見えるー。

当時、それがコンプレックスなのだとポツリと話してくれた事があった。

口下手で周囲と上手くコミュニケーションが取れないと。


つまりはちょっぴりコミュ障くんなんだと。


それが、乙女フィルターを通すと『ミステリアスで思慮深くて凛々しくて素敵!』ってなるんだから、まあ……うん。


中等部の時に比べて背も高くなり、鍛えられたしなやかな筋肉が精悍なルックスを際立たせている。

ふっふ、眼福、眼福。

「君が“公爵令嬢として”帰ってきてくれて……私がどれだけ嬉しいか、君には分からないだろうな」

「え?」

「いや。昼食を邪魔してすまなかった。挨拶をしたくて……では、失礼する」

わたし達は軽く礼をとって、見送る。

「……」

テーブルに座り直し、さあ食事を再開!

パンをちぎってスープに浸してもっぎゅもぎゅ。

あー、うまー。

なんて気楽に食べてるのはわたしだけのようで。


「……聞いた?」

「……聞いた」

シャルとディーが頭を抱えて、同時にため息を吐く。

「ルル、なにポカンとしてるのよ……あと良く平気な顔して食べられるわね……」

「それが姉上だからね……」

うりょ?

何だか言外にバカにされてる気がするけど、気のせいかしら。


タイガとバミは皇太子殿下が立ち去った方を黙って見ていたけど、何事もなかったように食事を再開した。

「はあ……殿下のクラスの令嬢に見られなくて良かったけど、噂ぐらいは耳に入っちゃうかも……」

ぶつぶつと言うディーに、バミが微笑み掛ける。

「あら、大丈夫よディー。何か言ってくるようなら私が始末──対応するから」

ん?

いま、ちょっと不穏な言葉が聞こえたような。

さすがのディーも口元が引きつってるし。

ま、まあ、良く分からないけど懐かしいお顔が見れて良かった。

ご飯も美味しいし、復学もスムーズに出来たし言う事なーし!



『……と言う事があったの』

「──へぇ」

月が明るく宵闇を照らす時間。

ロックフェルド公爵家の執務室で、朱く輝く尾羽根を揺らし──朱雀が主人にその日あった事を報告していた。

ソファで寛ぐ主人の足元に寝転んでいた白く大きな虎も、ゆっくりと欠伸をする。

「男性教師に皇太子か。羽虫(・・)がルルの周りを飛ぶのは……良くないなぁ」

『消す?』

『朱雀は物騒だなー』

『白虎が呑気なだけよ。ルルさまものんびりしすぎだけど』

朱雀はからかう白虎をひと睨みして、その頭に飛び乗った。

『あいてっ』

『ふんっ』


式神がじゃれ合うのを眺めつつ、セレスは今頃は夢の中であろうルルとシャルを思う。

二人とも男爵家ではお互いを支え合って生きてきた。

苦労もしただろうに、初めて逢った日から今日まで──一度も文句も弱音を吐かずに高位貴族たろうと努力している。

それを誇りに思うし、健気だとも思う。

父と母は自分たちの世界に勝手に浸っていれば良いが、子どもたちは護ってやらねば。


大事な家族なのだから。


自分の中にある、ルルに……妹に対する感情に言葉を当てはめるのはまだ早い。


「朱雀、白虎」

式神が視線をピタリと主人に据える。


「シャルとルルを護れ。二人を脅かす者には容赦は不要ぞ」

『『御意』』


月に照らされたセレスの影はどこまでも昏い。そして、かつて平安の世に強大な術でもって怪異を屠ってきた男の背中を映し出していた。



カリカリカリ……カリカリ……

教室にペンの音だけが響く。

はい、わたくし公爵令嬢になって最初のテスト中でございます。

今回、テスト範囲を暗記しつつ、ヤマも張った。

実技と違って、筆記はわたしの“観察眼”を応用すれば敵無しだったりする。

正しいものを見極める──選択問題なんて“正しい方を見極めれば良い”のだから楽勝なのだ。

ヤマだって、『AとBどちらがテストに出るか?』って言う確率の問題だと捉えれば、より確率の高い方……つまり“正しい方(答え)”を選べば良いわけで。


在学中は、いろんな理由から力をセーブしていた。


目指せ!“ほどほど”!をモットーに、全科目“ほどほど”になるように調節してね。

出る杭は打たれるって言うでしょ?

わたしは見た目ですでに「出る杭」だったからねぇ……。


でも。


もう力をセーブする必要はない。


むしろ全力を出さないとヤバい。

なんたってホラ、わたし公爵令嬢だから。

ヘタを打つと、ロックフェルド公爵家の威信に関わる。

つまり、お義兄さまに迷惑がかかる。

そんなの絶許……!

今朝も優しい笑顔で「勉強してきた分、結果は付いてくるよ」と見送ってくれたお義兄さま。

お義兄さまのためにも、ルルは頑張ります!

え?力を使うのはズルいって?

ええい!こちとら、なりふり構ってられないんですぅ!

意地でも上位に入らないとダメなんですぅ!


“ほどほど令嬢”から脱却すんぞー!おーっ!


《中間テスト 総合順位》


一位  ルルティア・ロックフェルド

二位  バミ・ロストール

三位  アドレアス・シャゼリア


あ……やりすぎた……?


バミが二位って言うのは単純に凄いと思う。

そこらの人間とは経験値が違いそうだし、きっとあえての二位なんじゃ……?

で、でも殿下を差し置いての一位・二位ワンツーフィニッシュって!

あいや、三位だって充分すごいですよ、殿下!

公務で思うように勉強出来ない中の三位だもんねっ。

よっ!大統領!じゃなくて、よっ!殿下!

……スイマセン。


“ほどほど”って難しいネ……。

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