7.第三の女子現る!?
「う~ん、至福……」
3月、学年最後の期末テストを終えた日曜日、わたしは一人、郊外の大型ショッピングモールに来ている。
ここにある大型書店で本を選び、何冊か文庫本を買って、その後フードコートでアイスクリームを食べながらパラパラとページをめくるのが、生粋の文学女子であるわたしにとっての最高に贅沢な休日ルーティンだ。
ただ、わたしの楽しい時間は後ろの席の話し声に邪魔された。
「ねえ、やっぱり、あのショップのパンツ買おうよ~。シルエットもシュッとしてたし、きっと似合うよ」
「え~っ、でもちょっと高いんだよね~」
「絶対にお値段以上の価値はあるって!!ほら、春休みは佳菜子たちと一緒にナガスパに行くじゃん!そんなもっさいパンツじゃ、あたしが恥ずかしいし~」
「え~っ!!これ、別にいいと思うけどな」
「だめだって。佳菜子たちとは初めて遊びに行くんだからさ~。第一印象が大事だしちゃんとした服を着て欲しいわけ!あっ、そうだ。あたしが買ってあげるよ」
「それはさすがに悪いって……」
「いいっていいって。ちょっと早いけど誕プレってことで。その代わり、あたしの誕生日も期待してるからさ!!」
「え~っ……」
カップルだろうか?
さっきから背中越しに、やけに耳に付く、いちゃついた男女の会話が聞こえてくる。
このあたりは田舎だし、他に手ごろな場所がないから大型ショッピングモールにデートに来るカップルは珍しくない。
耳障りだったけど、最初は「お~お~、楽しそうなことだ」としか思わなかった。
ただ、途中から気づき始めた。この男の方の声、それにボソボソとした話し方、聞きおぼえがある。
まさか……。
ちらりと振り返ると、わたしに背を向けて、少し猫背気味に座る男子の後姿が見えた。
間違いない。杉山太一だ!なんでこんなとこに?
もう少ししっかり確認したかったけど、慌てて前に向き直り、わざとらしく本に目を落とした。
カップルのもう一人、杉山くんに向かい合って座っていた女子の方に一睨みされたからだ。
……あの女子、双葉ちゃんじゃなかった。睦美ちゃんでもない……。
杉山くんの向かいに座っていた彼女の顔に見覚えはない。分類するとすればギャル……だろうか。肩まで伸ばした髪は茶色というよりも、むしろ金色に近い。派手な色のネイルもデコデコしている。メイクもばっちりで、特にアイラインがくっきりとしていて、青色のカラコンも相まって物凄い眼力だった。
彼女、いったい誰なんだろ?まさか杉山くんの彼女……なんてことはあり得ないよね。あの地味でモブな杉山くんが、あんなギャルと付き合うなんてこと現実にあるはずない。そんなのは男子が好きなタイプのライトノベルの中だけの妄想話だって!!
……でも、じゃあなんで二人は一緒にいるんだろう?姉弟?友だち?まさか舎弟?
う~ん、わからん。もう一度振り返って確認してみたい。だけど、またあのギャルに睨まれるのは怖い。わたしが通ってる高校にはギャルなんかいないから、ああいうタイプに免疫ないんだよな~。
でも気になる。さっきから読書に全然集中できない。目が文字の上をツルツル滑る。せっかくのわたしの贅沢時間なのに……。
あっ、忘れてた!
アイスのカップに目を向けると、いつの間にかバニラとパチパチミントとチョコが完全に溶けて、混然一体となっていた。新リリースのパチパチミント、楽しみにしてたのに……。
全部、杉山くんのせいだ!!あんな派手なギャルとのカップリングなんて解釈違いもいいとこだ!そんな文句を言うのは筋違いだけど、せめてもう一度だけ確認しよう。
そう思いながら、おそるおそる後ろを振り返ると、既に立ち去った後だったのか、二人がいたはずの席には、見知らぬ中年の男女が座っていた。




