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18.図書室の姫

「メイちゃん、じゃあ次は図書カウンターに入ってくれる?」


「はいっ!!」


 わたしの言葉に、1年生女子のメイちゃんが元気よく、朗らかに良い返事。


 5月の連休明け、彼女も、だいぶ学校と図書委員の仕事に慣れてきたようだ。


 五島メイちゃんは、わたしが図書委員にスカウトした同じ中学の後輩。もともと家が近所で、小学校の頃は、同じ分団で一緒に登校していた。

 わたしにとっては、その頃から「月子ちゃん、月子ちゃん」と慕ってくれている可愛い後輩である。


 小さなあどけない顔にクリっとした大きな目がチャームポイントで、まるでモモンガのように愛らしい。

 そんなメイちゃんが図書カウンターに入ると、すぐにずらっと行列ができた。


「今日は利用者いっぱいいるな~」


 いつもは閑散とした図書室も、どういうわけか今日は大盛況だ。並んでるのはみんな一年生男子だろうか?

 今年の一年生は本好きが多いのかな?いいことだ!!


 図書カウンターでは、メイちゃんが太一の指導を受けながら、慣れない手つきでスキャナーで本のバーコードを読み取っている。


 じゃあ、わたしは本の入れ替えでもしますかね。よいしょっと。


 今日のわたしの仕事は、書庫へしまう本を整理して段ボールに詰めること。この後、これを書庫へ持ってかないといけないんだけど、重いんだよな~。運ぶのは太一にやらせようかな。


 そう思い振り返ると、メイちゃんが可愛らしく微笑みながら、わたしを見つめていた。


「月子ちゃん!手伝いますよ!なんでも言ってください!!」


 元気ではハキハキ。しかも気を利かせて助けに来てくれて、ホントにええ子や~。

 あれっ?でも……。


「さっきカウンターにたくさん並んでなかった?あっちは大丈夫なの?」


「はい。カウンターも大忙しだったんですけど、杉山先輩が月子ちゃんの方に行った方がいいっておっしゃって……」


「え~っ?大丈夫かな?」


 カウンターの方を見ると、あんなに長かった利用者の列がなくなり、太一が暇そうにぼんやりしている。


 あれっ?どういうことだ?さっきまであんな行列だったのに、太一が一瞬でさばいたのかな?


 首を傾げていると、背後に人の気配を感じた。


「その段ボール運ぶの?俺が運ぼうか?」


 名前も知らない男子。一年生か?

 なんで急に?しかもタメ口?


 わたしが不審に思っていると、メイちゃんがぴょんっと跳ねてその男子の前に立った。


「えっ?和弘くん手伝ってくれるの?ありがと~!!」


 なんだメイちゃんの友だちか……。そう思う間もなく、周囲にどやどやと人が集まり始めた。


「メイちゃん、俺も運ぶよ。力仕事は得意なんだ!」


「俺の方が力あるから、俺に任せろって!」


「こんな段ボール一個、ちょろいちょろい!」


「Yo~ 俺はやるぜメイのため、遠慮はやめ、それは俺の夢」


 なんだなんだ?みんな一年生男子か?

 わたしが戸惑っている間に、メイちゃんが「ありがと~、卓也くん、智明くん、幸四郎くん、マイケルくん」と笑顔で応じる。


 いつの間にか男子達全員で神輿のように段ボールを担いで、メイちゃんの先導で、わっしょい、わっしょいと書庫へ運んで行ってしまった。


 なんだあれ?呆気に取られて取り残されるわたし……。


 ああ、そうか。あれはメイ軍団か。中学の時も似たようなのがいたけど、高校でも早くも親衛隊が結成されてしまったか。入学からまだ1か月なのに……。


「あれ、すごいね」


 いつの間にか側に立っていた太一も呆気に取られている。


「メイちゃんって、いつも周囲が放っておかないんだよね。小学校の時も、中学校の時も、気づいたら男子の取り巻きができて、みんなで姫みたいに扱うって流れになってさ」


「すごいね。モテモテなんだ」


 お前が言うな!!このヤレヤレ系ハーレム主人公が!


 でも、太一と違って、メイちゃんがモテるのは理解できる。彼女は、見た目が可愛らしいだけじゃない。時折、庇護欲をそそるような哀愁を見せる時もあり、そのギャップがキュンとさせる。


 しかも、当のメイちゃんも甘え上手で懐に入るのがうまいから、「俺が守ってあげなきゃ」って男子がどんどん増殖していく。


 ちなみにメイちゃんは、中学の時は吹奏楽部だったけど、その部には楽器運搬だけを専属に担当するメイ軍団の男子部員が10人以上いて、女子部員は演奏会でもいつも手ぶらで移動してたっていう伝説を聞いたこともある。


「これで図書委員の手が足りない問題は解決するんだろうけどさ、何か不安だよね」


「なにがよ?」


「彼女、オタクサークルの姫みたいになってるじゃん。そのうち人間関係がこじれてトラブルにならなきゃいいんだけど……」


 太一が腕を組んで真面目に考え込むような顔をしている。


「……って、いや、お前が言うなて!!お前こそトラブルの爆心地やろうが!!」


「えっ?」


 驚き目を見開く太一。しまった、いつもの心の中のツッコミがつい漏れ出てしまった。えへへ……と笑ってごまかしとくか。


 だけど、メイちゃんのことはわたしも心配だ。悪い先輩、太一みたいにならなきゃいいんだけど……。


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