第六話 試験
「それでは、次の組よろしくお願いします」
課題はそれぞれ申請した魔法を発動するだけだ。
とはいえ、トップがいるだけで空気が変わる。
加えて成績6位のフィナもいるので余計に注目が集まる。
「では、それぞれの試験の内容を行ってください」
私は手を翳す。
「水の渦を解き放つ、水砲!!」
私の手から魔法が発動すると一気に水の砲弾が飛び、目の前の的を貫いた。
……何とか成功した。
私の中でティアとの努力が実った実感が押し寄せてくるあまり、拳を握った。
他の人ならできて一安心だろうが、私にとっては一つ成し遂げたという実感に近いのだ。
「雷を解き放つ、電磁砲!!」
続いてティアが魔法を放つ。
彼女の魔法は地面を抉り、魔法が通った後は電気がびりびりと残っていた。
これ、私の知ってる電磁砲じゃない。
本来電磁砲は弾丸のように真っ直ぐ飛ぶだけで地面を抉る物じゃない。
弟子が必死で覚えて歓喜している後でこれは、凹む。
まるで調子に乗るなろうといわんばかりにティアは鼻を鳴らし、どうだといった感じで私を見てくる。
ティア、酷いよぉ~。
そうして試験が終わり、三人とも無事合格リストに名前があった。
「やったやった!! 三人とも合格だ!!」
「おめでとうカリン」
「ありがとうフィナ、ティナのおかげで何とか乗り越えられたよ~」
「うんうん、これはティナの努力の賜物、おめでとう」
あ、これ喜んでるな。
どこかしら嬉しそうな顔だ。
「それにしてもティアさん、凄かったね。 あんな電磁砲見たことないよ」
ティアは何も答えない。
ま~だ人見知りが解けないか。
「ティアは凄いんだから、ね?」
「ん、だって首席、なめんじゃないよ」
……ん?
なんか、ティアらしからぬ言葉が出てきたのは気のせいだろうか?
「それより、お祝いする。 カリンも来る?」
「うん、よかったらフィナもどう?」
私の提案にティアが「え?」ッと声を漏らす。
「私は行きたいな。 ティアさんさえよければだけど」
「ティアもそれでいい?」
「……カリンがいいなら構わない」
……あれ、なんか怒ってる?
なんか、頬を膨らまして不満そうだった。
「フィナ、いい子でお世話になってるからお願い、ね?」
仲良くなってほしいが、「余計なお世話」と言って怒る可能性もあるのでそういうと、「仕方ない」と言って渋々だが、了承してくれた。
「フィナの師匠もいけそうかな?」
「う~ん、うちの師匠、基本引き籠りだからな~。 聞いてみるね」
フィナの師匠はどんな人だろう。
そう言えば、フィナの師匠にはあったことがないな。
フィナ曰く研究熱心な人だという事しか知らない。
ミナ・フィオラス先輩、それがフィナの師匠の名だ。
彼女の功績はいくつかあり、入学時に治癒研究に大きな成果を出した天才だといわれている。
薬や治癒魔法に関しては右に出るものはいないとさえ言われている程だ。
「断言する、あれは来ない」
フィオと別れティアと歩き、シア先輩に合格報告をしに行く途中でそういった。
「知ってるの?」
「まぁ、顔見知り程度には……師匠の師匠があの人だから」
「え、そうなんだ!!」
シア先輩の師匠がミナ先輩だったなんて、世間は狭いな。
「師匠に聞いてみても同じ答えが返ってくると思う」
そんなものなのかな?
師妹ならある程度なら妹子の我儘を聞いてくれると思う。
だって自分が選んだ妹子だもの、可愛くて仕方ないに決まっている。
だからきっと、ミナ先輩も来てくれるだろうと思っている。
「ん? 絶対来ないよ、断言してもいい。 彼女そういうの苦手だもん」
ティアの言葉の通りにシア先輩はそう言った。
二人の言葉に逆に私はミナ先輩に少し興味が湧いてきた。
フィナが言うには少し変わった人だが悪い人ではないとの事だ。
そうして夜になり、食材をティアやフィナと買いに行く。
「亭主、これとこれ頂戴」
「はいよ」
そう言って受け取ると、料金を渡す。
「ちょっと待ってティア」
料金を払おうとするティアをフィナは制止し、亭主を見る。
「あの、この野菜なんですが、少し高くありません?」
あ~、やる気になっちゃった。
フィナは商人の家系なので、黙っていられないのだ。
まぁでもティナが適当なのが悪いのだが……。
正直、誰が見てもここの値段はおかしい。
通常の1.2倍の値段がするのだ。
「バレたか、それじゃこれでどうだ?」
そうして亭主が提示した値段は相場より少し高いくらいだった。
「う~ん、相場としてはもう少し安いはずですが……」
そう言ってじっとフィナは見続ける。
「これ以上は無理だよ、買わないのなら他を当たってくれ」
「……わかりました、買いましょう」
そう言って交渉が成立し、食材を買う。
フィナにしては珍しく受けた。
私の知る限りでは彼女は限界まで搾り取るのが定石のはずだ。
「よかったの?」
「うん、ここで揉めても何の得にもならないし、そうでしょう?」
亭主に向かってそう言うと、嬉しそうに笑う。
後ろの方を見ると、見るからに悪そうな人たちがいたのだ。
なるほど、これ以上は喧嘩になると見込んでやめたのだろう。
「賢いお嬢さんで嬉しいぜ、これはサービスな」
そう言ってニンジンを二個つけてくれた。
「これからもごひいきにしてくれよ」
「はい、これからお世話になりますね」
そう言って私達はその場を後にする。
「あんなこと言って大丈夫なの?」
「あれ僕達への脅し、機嫌損ねれば襲い掛かる気だった」
ティアはそう言ってイライラしたように吐き捨てる。
この状況で黙っていてよかった。
フィナがいなければ、もめ事を起こす所だった。
「だね、危なかったぁ~」
フィナは安堵したかのように笑っている。
困難を乗り越えたというより、凄く面白い状況に陥った時に笑う笑い方だ。
「ま、とりあえず潰す方法考えてみるよ」
フィナの言葉を聞いて私は氷魔法を掛けられたように寒気がする。
不敵な笑みもそうだが、彼女がやるといったらものすごく怖い。
以前、彼女に害をなそうとした生徒が次の日には学園から姿を消した経験がある。
後から聞いた話だが、フィナ以外にも仲のいい私に害をなそうとしたらしく、我慢の限界だったらしい。
とにかく徹底的にが彼女で、潰し方を聞いたら言葉に出すのもためらうようなやり方だった。
まぁ、今回は相手が悪い。
フィナじゃなければ対策は可能だっただろうが、商人であり商会に顏の聞く彼女が相手では勝ち目などないに等しいだろう。
「物理的に潰すの?」
「あはは、まさかぁ~。 お話し合いで潰すんだよぉ~」
そう笑いながら言う彼女にティアは理解できず首を傾げる。
わからないのも無理はないだろう。
本気で怒った彼女は相当怖い。
氷のような冷たい瞳で静かに怒るティアとはまた違った怖さがあるのだ。
普段通りで且つ、いつの間にか詰められている。
物語で言う序盤から中盤に差し掛かると思いきや突然終盤になるそんな感覚だ。
「もしかして、フィナって怖い?」
「全然怖くないよ~、ね? カリン」
「うん、フィナはいい子だよ?」
本気で怒ったら超怖いけど、彼女が本気で怒るのは自分の大事なモノが害される時くらいだ。
それ以外は基本的に面倒見が良くて人望のある女の子だ。
「そうそう、私は怖くないよ~」
「触んな!!」
お、緊張解けたかな?
ティアはよしよしと頭を撫でられ、恥ずかしそうに弾いた。
「あらら、まだ駄目かぁ~」
そう言って悪戯っぽく笑う彼女にティアはムムムッ!!っと頬を膨らまし、彼女を睨みつける。
そうして私達は買い物を済ませ、シア先輩の研究室へ向かうのだった。




