第七話 師妹と師妹
部屋に入ると見慣れない女生徒が居た。
桃色の髪と瞳をしたおっとりした雰囲気の女の子がいた。
「師匠、どうしたんですか?」
フィオが驚いたように問いかける。
師匠という事は、彼女があの有名なミナ先輩だろう。
「君の馬鹿姉妹子がどうしても来いってうるさくてね、来なきゃ暴れるぞって研究室で脅してきたから仕方なくねぇ~」
気怠そうに彼女は溜息を吐きながらそう言った。
なんだか疲れているような気がする。
「たまには気分転換でいいんじゃないですか? ずっとこもりきりだと疲れますよ?」
「引きこもりに外の方が身体に悪い気がするんだけど?」
「あはは、そんなこと絶対ないですから安心してください」
何だろう、見ていてすごく仲いいのが伝わってくる。
「カリン、この人がミナ・フィオラス師匠、師匠、こっちは同級生で同室のカリンちゃん」
「初めまして、カリン・フォーレです!!」
私は彼女に近づき、握手を求めると彼女はそれに答えてくれる。
「君がカリンちゃんかぁ~、話はフィオとシアから聞いてるよ~。 ミナ・フィオラス、よろしくねぇ~」
ティアの司書の師匠だから、怖い人なのかと思ったが親しみやすそうでいい人そうだ
「師匠、何処へ行った?」
「あぁ、なんか風紀員に呼ばれたみたいだよ。 なんか君達が暴れた件って言ってたなぁ~、何したの?」
「実は……」
ミナ先輩に事の経緯を説明する。
私と喧嘩になった女生徒の間に入って過剰防衛だった事、風紀委員と戦闘になった事を話すと彼女は面白そうに聞いていた。
「なるほどなるほどぉ~、あのゼレシアと戦うなんて、これまた面倒事になったねぇ~。 あいつ、融通聞かないでしょ?」
「いえ、そんなことは……」
実際、あの時は彼女が止めに入ったのをティアが止まらなかっただけだ。
彼女が融通聞かないというより、あれに関しては完全に私たちが悪い。
「まぁ、大方状況は予想がつくよぉ~。 どうせ、そこのおチビちゃんが止まらなくて戦闘になった、そういう事なんでしょ?」
「えぇ、まぁ……」
「だろうねぇ~、おチビちゃんも融通聞かないし……はぁ、どうして私の周りは融通聞かない子が多いのかなぁ~」
ティアの方を見ると、どう見ても怒っているのがわかるほど、温度の無い光を無くした状態で私ではなくミナ先輩の方を見ていた。
恐らくだが、おチビちゃんという言葉が気に障っていたのだろう。
よく見ると、ミナ先輩は私をティアとの間に入れるように立っている。
本来ならすぐに手が出ていたのだろうが、私が近くに居るので抑えているといった感じだ。
「カリン、ちょっとどいて」
「お~、こわい~」
そう言ってミナ先輩は私に抱き着く。
「ちょ、先輩!?」
ティアの方を見ると、じっと私を見ていた。
この感じ、懐かしいなぁ~。
ここで最初にあった時のような目をしていた。
「……カリン?」
あ、この感じはあれだ、私諸共ぶっ飛ばす気だ。
私は手を翳し、防御魔法を展開して攻撃を防ごうとするがティアはパチンっと左手で指を鳴らすと防御魔法が割れたガラスのようにボロボロと崩れて消える。
「再構成」
ミナ先輩がそう唱えると、私の術式が修復されていき完全に魔法陣が完成する。
今、何が起こったの?
ミナ先輩が言葉を発すると同時に壊れた術式がゆっくりと元の形に戻り、術式を作り出した。
何かの魔法だろうが、そんな魔法は見た事も聞いたこともない。
ティアは手を翳す。
「防解」
ティアがそう言うと、白い砲弾が私に向かって放たれる。
私の魔法とぶつかった瞬間、浸透するように広がり割れる音がして魔法が光の泡のように消え去った。
「んなぁ!?」
「再構成」
私が驚くと同時にミナ先輩が唱えると私の防壁が再構成を始める。
ティアは指を鳴らすと、再び防壁が破壊される。
「そこまでにしなぁ~」
シア先輩が指を鳴らすと同時にティアの身体に輪っかが出来上がり彼女を拘束する。
「これ以上やるなら、外でやりな。 じゃないと、私が相手になるよ?」
いやいや、もう無理でしょ。
拘束している時点でもう戦うのは無理だろう。
「師匠、放せ」
「あん?」
シア先輩から聞いたことのないような低い声でいった。
怖ぁ~。
普段大人しく優しい彼女が言うから尚更恐怖が増して怖い。
「放してください、お願いします」
ティアは彼女の声を聴いて流石に不味いと思ったのか、フルフル震えながらそう言った。
ティアでも怖いものあるんだな。
「全く、師匠も挑発するのはやめてください」
「はいは~い」
そう言って彼女は面倒くさそうに返す。
この人もこの人でマイペースだな。
「さぁ、ティアもむくれてないで料理手伝って」
シア先輩の言葉にむくれながら私に抱き着くティアの頭を優しくなでる。
相変わらず、子供っぽくて可愛いなぁ~。
そうして各自、得意料理を披露するため、二手に分かれる。
私とフィナ、シア・ミア先輩となった。
「あれ、ティナは?」
「試食係」
両手にナイフとフォークを持ち、机の上でふふんっと鼻を鳴らして誇らしげに言う。
料理できないんだなぁ~。
もしくは面倒なのでしたくないのかも?
「一緒に料理しようよ」
「いい、僕は試食に専念する」
専念ってなに?
何を言ってるのか理解できなかったが、頑ななのでそれ以上は言っても無駄だろう。
「わかった、試食をお願いね」
「ん、任せる」
ティアは親指を立て、誇らしげに言ったので諦めて私達は料理をする。
とはいっても、私は得意料理とか無いのでフィナ任せだ。
「食材、捌いといたよ」
「ありがとぉ~」
言われた通りの食材を捌き、フィナに渡す。
「あとは任せて食器お願い」
「はいは~い」
ティアの方を見ると、彼女は本を読んで待っていた。
手伝う気ないんかい!!
「ティア、食器並べるの手伝って」
「……わかった」
あら素直。
案外、言えばやってくれるのね。
そうしてティアと一緒に食器を並べる。
「カリン、大きいの頂戴」
「はいは~い」
そう言って彼女の欲しい皿を並べ、盛り付けたりして料理が出来上がる。
「美味しそう」
「まだ食べちゃ駄目だよ」
「わかってる。 感想を言っただけ」
「そう? ならいいけど」
「こっちも料理できるからお皿をおくれ~」
「あ、は~い」
そうして全ての料理が出そろい、皆が席に着く。
「それじゃ、ミナ師匠、よろしくお願いします!!」
「え~、こういうの苦手なのしってるでしょ? カリンちゃん、お願いできる?」
「はい、お任せください!! それでは皆さん、飲み物は準備おっけぇですかぁ~!!」
「いえ~い!!」
「フィナの声しか聞こえないぞぉ~!! 皆はおっけぇですかぁ~!?」
残り三名にそういうと、「お、お~」っと戸惑いながらも返事が返ってくる。
「ん~? きこえないですよぉ~!?」
「「「お~!!」」」
先程よりも大きな声で返事が返ってきたので頷くと、持っていたコップを持ち上げる。
「それじゃ、皆進級おめでとう!! かんぱ~い!!」




