勝手に部下ができました。
「……つまり?」
レインは目の前で跪くルナリアを見ながら、引きつった笑みを浮かべた。
「君は俺を魔王だと思ってる、と」
「はい」
即答だった。
「なぜ?」
「圧倒的な闇魔法、禁忌の治癒術、そして圧倒的な威圧感」
「威圧感?」
「はい」
レインは首を傾げた。ただ困っていただけなのだが。
「いや、違うからね?俺ただの雑貨屋の手伝いだからね?」
「正体を隠されるのですね……さすがです」
「違う違う違う」
何を言ってもキラキラした目で見られる。話が通じない。
レインが頭を抱えた、その時だった。
ドタドタドタッ!!
武装した騎士たちが路地裏へ駆け込んできた。
「いたぞ!!」
「黒衣の暗殺者を確保しろ!」
ルナリアが表情を変える。
「王国騎士団……!」
レインは察した。
面倒ごとだ。とても面倒ごとだ。関わりたくない。
「じゃあ俺帰るね」
「お待ちください魔王様!」
腕を掴まれた。
終わった。
騎士団長らしき男が前に出る。
「貴様が黒幕か」
「違います」
「部下を使い暗躍していたのだな」
「違います」
「その女を操っているのか」
「違います」
全然信じてもらえなかった。
騎士たちが剣を抜く。ルナリアも戦闘態勢に入る。
「私が道を切り開きます」
「いや戦わなくていいから!」
レインは慌てて影を伸ばした。
騎士たちの足元へ影が広がり、次の瞬間――全員の剣だけが影に飲み込まれた。
「……え?」
騎士たちが固まる。
奪われた剣は影の中へ沈んでいき、跡形もなく消えた。
レインは焦る。
「ち、違うんです!危ないから!」
騎士団長の顔が青ざめた。
「王国騎士団を一瞬で無力化しただと……」
ルナリアが嬉しそうに微笑む。
「さすが我が主」
「違うって!」
その時、騎士の一人が慌てて駆け込んできた。
「ほ、報告します!!」
「なんだ!」
「王都全域で謎の黒い影が出現!!」
レインはハッとした。
「あ」
そういえば家に置いてきた影の手に、洗濯物の取り込みを頼んでいた。
「……え?」
騎士たちが震える。
「王都侵略の合図だ……」
「違う!洗濯物!!」
誰も信じなかった。
ルナリアは静かに跪く。
「魔王軍復活の時ですね」
「だから違うってぇぇぇ!!」
レインの平穏な日常は、さらに遠ざかっていった。




