19
時が経つのも早く、あっという間に帰る日となってしまった。
私達は、謁見室で王族の方達に挨拶をし、エントランスに出る。
そこには、ラウル、ミレット、そして、私達と一緒に付いて来てくれたベティニアがいた。
従僕達に馬車へと荷物を積んでもらい、お別れをする。
するとベティニアが、私に箱を渡してきたのだ。
「これは餞別だ。
国へ帰っても、アリステリアスを思い出して欲しいと思って選んだんだ。
もちろん、ウィルフォードのも入っているからな!
本当に楽しい一月だったよ」
そして、ニコリと微笑み『また、会おう』と手を差し出した。
「ええ。ありがとう。
私も本当に楽しかったわ。また、会える事を楽しみにしているわね」
そう伝え、ウィルフォードと私は、ベティニアと握手を交わしたのだ。
ベティニアとの別れは済み、次はラウルとミレットが声を掛けてくれた。
「ウィルフォードも妖精ちゃんも、気をつけて帰ってね!
そうだ!
結婚式の招待状を送ってよ!
行けたら行くからさ」
ラウルの言葉に、ウィルフォードが答えた。
「帰ってから送ったんじゃ、間に合わないだろう?」
「・・・それもそうだね。
妖精ちゃんの晴れ姿を見たかったんだけどなぁ。
でもまぁ、二人とも、幸せにね!」
白い歯を見せて笑うラウルに、私達の顔も綻ぶ。
そして、隣にいたミレットが口を開いたのだ。
「あの、伝統菓子を用意したんです。
是非、馬車の中で食べてください!」
「ありがとう、ミレットさん。
私も、このお菓子が大好きよ」
すると、向日葵のように元気な笑顔を見せてくれたのだった。
挨拶も終わり、馬車へと乗り込み出発する。
私は窓を開けて身を乗り出し、笑顔で手を振った。
「みんな、元気でね!
また、会える日を楽しみにしているわ!」
そんな私達に手を振り返してくれた。
「ああ、約束だ。
必ず、また会おう」
ベティニアが満面の笑みで応えてくれる。
私は、みんなが見えなくなるまで、手を振り続けたのだった。
「やっぱり、別れは寂しいな」
ウィルフォードが心配そうに聞いてきた。
「・・・ええ、そうね。
けど、また会える事を楽しみにするわ」
『ふふっ』と笑う私に、ウィルフォードも微笑み、手を優しく握ってくれたのであった。
これから、長い道のりを経てネイトピア王国へと帰る。
私は、先程ベティニアからもらった箱を開けたのだ。
中には、ベティニアからの手紙と、フォーニョンが入っていた。
広げて見ると、紺色の生地に銀糸の刺繍がしてあり、裾の部分へ行くほど、紫へとグラデーションになっている落ち着いた色合いの物だった。
もう一つの袋をウィルフォードに渡し、中を見てもらうと、紺色の生地に金糸の刺繍がしてある。
・・・とても、素敵だ。
勿体無くて、着られそうにないほど、嬉しい。
「ウィル?とても綺麗ね」
「ああ。フェアリエルに似合いそうだな。
さすが、ベティニアだ」
そして私は、手紙を開いたのだ。
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二人にフォーニョンを贈る。
きっと、似合うと思うぞ。
あまり長々と書いて、しんみりするのも嫌だからな、簡潔に書く。
二人とも、元気で幸せにな!
お主達が幸せなら、私も嬉しいよ。
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・・・ふぅ。
ベティ?これ、逆に泣いちゃうよ?
私は涙を拭い『どうしたんだ?』と問いかけてくるウィルフォードに手紙を渡したのだ。
「ベティらしい、短くても、気持ちの籠った手紙よ」
そう言って、手紙を受け取ったウィルフォードが一読している。
「そうだな、二人で幸せになろう」
そうして私達は、微笑み合ったのであった。
それから日が経ち、ラピスライト合同国を抜け、ネイトピア王国へと帰って来た。
少しはゆっくり出来るかなって思っていたら、そんな事はなく、来月に控えた結婚式の準備に追われる事になったのである。
主に最終確認だけなのだが、王族には色々なしきたりがあるらしい。
ウィルフォードは結婚後に臣籍降下するので、結婚式は王族として執り行う事になるんだとか。
だから私も、お勉強をしなくてはいけないのだ。
そうして、忙しい日々を過ごし、やっと、待ちに待った結婚式の日となったのである。




