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ヒトの骨格を持つ蠅の魔物に滅ぼされゆく世界を救う物語/アストリア戦記  作者: シューゲツ
第1章. The Resolve of Freedom’s Amethyst/自由なる紫水晶の決意
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第90話. 自由なる孤独な檻をやぶる者

 アストリア13国のひとつ──『星々を照らす ナイトピア』


 摩天楼が聳えし眠らぬ都たるその国は、アストリア最大の娯楽都市国家として栄えていた。


 長き争いの末に平和が訪れていたアストリアにとって、そこは戦いに疲れた人々を、医と癒しの国 ラピオスとはまた別の方法で潤し忘れさせるのにうってつけの場所となる……はずだった。


 ヒトの骨格を有するハエの魔物が蔓延(はびこ)るまでは──


 突如現れた魔物の軍勢……その中にいたレナレナたちは、瞬く間にナイトピアを壊滅させた。それは武の国家を力尽くで制圧したようなものとは異なり、彼女らの異常ともいえるその能力により、国家ごと戦闘不能に陥ったのだ。


 本人からすれば、ただ単に誰かと娯楽を愉しみ遊びたいという、無邪気な願いでしかなかった。


 ……が、ナイトピアが滅びてからというものの、彼女自身は怠惰と退屈を極めていた。部下としての他の虫、下級兵という存在はある……しかし、自身と対等に遊ぶ者はレナレナの周囲には居ない。自由で退屈なる孤独の檻……彼女は遊びふける一方で、冷たい憂鬱を蓄積させていた。


 蔓延する怠惰により国がまさしく腐り果てようとしていた頃、退屈にとうとう耐え難くなったレナレナは、兵の一部を連れ旅に出たのだった。


 ──その末にたどり着いたのは、このアルテア王国。彼女が話を持ちかけた部下によれば、『ここに求るものがある。そして今が絶好の好機である』と告げられた。


 退屈が極まっていたレナレナは、怪しげな占いのようなその話を半信半疑ながらも信じてみることにした。程なくして、彼女らはアルテアへの侵入を試みる。


 その行き着いた先には、乗っとれと言わんばかりの“ほとんど開け放たれた城“──巣として利用していた城内のヴェスパが人間の計略によりほぼ出払っていたのをいいことに、レナレナの軍勢は速やかに城の一画を占拠した……!


 怠惰なるレナレナとは正反対の優秀な働き者の部下たちは、サリアニケスの残党下級兵など意にも介さず一方的に排除する。

 仲間の窮地に、レイオットは本来戦うべき立場にあったが、その圧倒的な戦力に直接戦闘ではなく、軍門に下る選択を取る。


 だがコレはあくまで表向き……レイオットは心までレナレナに売ったわけではなく、その薄暗い態度は彼女にも見抜かれている。


「どうしました? あなたが(おそ)れたその者の名は……? さあ、どうぞ、レナレナ様に打ち明けるのです……!」

 ゾルスターはレイオットに向かいわざとらしく発言を促す。黙秘を貫いたとしても彼の能力で見透かすことは可能であるが、彼は心が折れ自白する様を愉しんでいた。


(こいつわざと追い詰めて……! ……窮地か……だが、私は生き抜かねばならない……!)


(嘘は必ず見抜かれる! 故に、真実でなくては……! そして、できる限りの不確定要素を……!)


 次の発言で自らの運命が決定する。

 レイオットはその意思を極限まで集中させ、自身の周りで起こった最大の不確定要素を思い起こし、口を開いた。


「侵入者は……」

(ミツキ様の名は出すわけにはいかない!)


「……あなたと相性が良い……! そしてレナレナ様が抱える退屈を吹き飛ばすことができる人物です……!」


「どゆこと? じゃあ捕獲すれば良かったんじゃね?」

 レナレナは目を丸くする。保身の天秤にかけ、畏れた者の名を尋ねた彼女の質問には答えなかったレイオットだったが、レナレナの表情には興味が宿った。


「その者を乱暴に捕獲すればレナレナ様と仲良くなる運命は潰えるでしょう。丁重にお招きし、遊戯を愉しむ。それがレナレナ様を満たす最善の運命だと感じました故」


「は〜〜?? こいつ殴っていい? 楽しむったって、ここ本ばっかりじゃん! 一緒に小説読むなんて無理でしょ!」


「ほっほっほ! 何を言い出すかと思えば、我々が人間と小説を読んで楽しむとでもいうのですか? そもそも本は一人で読むものです。まして人間と共に本を読むなぞそんなこと天変地異が起こってもあり得ない……!」

(そんなこと、万に一つでも起こればその場で殺さねばなるまい……!!)


「……ちなみに、どんなやつなの?」

 ゾルスターが(まく)し立てる一方で、レナレナの瞳は、先ほどまでの退屈なものとはすでに変わりつつあった。


「レナレナ様と背丈が同じくらいの男の子です。ちょっと気だるそうなカンジの」

「……………………」


「娯楽大臣いる!? セシミィ!」

(!?)

 レナレナはしばらく黙り込んだ末にその名を呼ぶ。

 すると、ひらひらと舞う仮面を被った白き小さな虫が姿を現した。仮面の上からはサングラスを装着し、その頭にはシルクハット……何やらビカビカと七色の光を放っている。


(セシミィ……!? 娯楽大臣……!? ……いつの間にアイツ出世しとる! 何じゃあの虹色にひかる帽子は!)


「如何なされましたか、レナレナ様」

「ナイトピアから持ってきたもん、なんかないの? 本以外で何か遊ぶものが欲しい!


「遊ぶもの……これはどうでしょう!」

「それ一人で遊ぶやつじゃん! 違うやつ!」


「へ……!? ……そうですか」

「では、コレは如何でしょう!」


 セシミィは絵の描かれた箱を掲げてみせる。そこには夜空と星々を背景にクエスチョンマークが描かれている。


「……! 用意しといて!!」


 レナレナはそう言うと立ち上がり階段の方へ飛んでゆく。彼女の翅は大きく、高い飛行能力を有していた。


「!? いったいどちらへ行かれるのです!」


「ちょっとみてくる」

 ゾルスターは呼び止めようとするも、あっという間に見えなくなる。それは、かつてのレナレナらしからぬ行動であった。


(……なんとか生き延びた……! コレ以外に私が生存する道はなかったでしょう。 絶望に囚われているならば、ひたすら運命を揺さぶるのみ……!)

AI 非使用

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