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ヒトの骨格を持つ蠅の魔物に滅ぼされゆく世界を救う物語/アストリア戦記  作者: シューゲツ
第1章. The Resolve of Freedom’s Amethyst/自由なる紫水晶の決意
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第80話. 囚われし者の行方を追って

 ──バーゼルスタイン邸 ベッカード居室 キングスルーム──


「ハァ……ハァ……」


(ありえん……!)


 それは、たった一言の、絶望だった。


(フィ、フィ、フィ、フィ、フィオリナが、拐われただと──!!?)


 ベッカード=バーゼルスタイン——


 大領主たるその名は、栄光の名のもとに、永遠にその歴史に刻まれ、繁栄を極めるはずだった。


 ——が、彼に告げられたその一報——部下が観測し報告した内容。それは、かつてベッカードが黎明の冒険者として仲間と共に積み上げた輝かしい業績や、余りある財産などとは比較しようがなく、取り返しがつかないものであった。


 ベッカードは力の限り拳を握りしめる。


「カリストー!あいつはいつもわしに不幸を運んでくる……疫病神……!!何故今になって出てきおった!!そんなにわしが憎いか!?」


「……くっ……なぜだ!なぜ皆わしからフィオリナを奪う!ずっとここでわしと共におればよいというのに──!」


 ベッカードは窓から外を眺める。

 普段であれば、清き湖畔と自然が広がる天晴な景観だ。

 が、今となってはそれを感じ取る余裕はもはや彼には微塵もなく、遠い目で見つめるその先には、連れ去られた方角に佇むもの。アルテア随一のひときわ高い高原の上に、さらに高くそびえる城──アストリア最大の天文台として機能するアルテア城があった。


 今や陥落し、魔物の巣と化しているが……とある作戦によりその状況には変化が生じている。

 その戦況はベッカード本人も強く気にかけていることであり、逐一その情報を辿っていた。


「……こうしてはおれん!ハエの化物から一秒でも早く娘を……フィオリナを救出せねば……!」


「おい」


 ベッカードは従者に告げる。


「あれで"()()"する」


 若き従者は直ぐ様その意味を理解した。が、当然それを引き止めようとする。

 平和が訪れていた頃のアストリアでは、それを用いることは二度とないと思われていた──


「……!!あれでありますか!しかし、ベッカード様!」

「急げ!時間がないのだ!!」

「危険です……!」


「話にならん……どけ!」

 ベッカードは従者を押しのけ、キングスルームの最奥へと足を運ぶ。

 その奥の壁にはバーゼルスタイン家の葡萄の蔦と酒甕が描かれた大きな家紋──


 ベッカードはそこへまっすぐ手をかざすと、家紋が扉のように割れ、最奥の更に奥へと続く空間が姿を現した


 奥へと足を運ぶと──その周りには鋼鉄の兵装の数々がぎっしりと整列し、ひとつひとつが今まさに稼働する時を待ち続けていた。彼はその中央……バーゼルスタイン邸の真の最奥に佇む、秘蔵たるそれと対峙する。


 それは、強靭なる玄鉄の外殻──全身を覆い機能する、機械仕掛けの鎧であった。


 ベッカードは両腕を広げ、その重厚なる機械鎧に体を重ねる。


 "ガシャン!ジャキッ!"


 腕──そして脚──機械仕掛けの玄鉄の鎧が次々と四肢体幹を包み込み、彼はヴェスパに負けず劣らずの巨体となった。

 更に、頭部を鬼の形相した鋼鉄の大兜が覆い、その目が朱く光を灯す。


 "アーマード・ベッカー"──


 それは、バーゼルスタイン家がどうしようもなく脅かされた際にその頭首自らにヒトを超える力を与え、外敵を斬り伏せるための最後の決戦兵器である。


 それはガチン、と大きな音をたて一歩を踏み出すと、傍にある一振りの重き大刀をその鋼鉄片腕を以て軽く拾いあげ、握りしめた。


「領主様……!本当に行かれるのですか!?」


 変わり果てた姿となった領主に、従者は問いかける。


「"ドローンリフト"を用意しろ。()()()()()()()


 鉄の兜でその表情は見えはしない、声も機械仕掛けの音声では在るが、もはや揺るぎようのない硬い意思は従者にも十分に伝わった。


「必ず、戻ってきてください……!領主様……!」



 ──



 ……



(ここは……?)


 ボクは、自由の意思を振り絞り、風の転送門を"繋いだ"。


 その転送先となる"目印"はウィルナード師匠がもつ、どんなに離れていても機能する、特別な自由の意思──それが最も強い場所がここだった……。


 周りには、師匠は居ない。


 眼の前にあるもの、それは……"鉄格子"だ。


 しかもこれは外じゃない、石壁に囲まれた"内側"。

 あたりにはぼんやりと灯りがあるが、窓はない。地下だろうか?


 ……


 ボクは、どうやらひとり"牢獄"の中にいる。


 目的の人物に会えず、本来ならますます取り乱すところかもしれない。

 が、つい先程まで半狂乱でいたボクも、この静かな空間の中、頭が冷やされたように妙に冷静になってしまっていた。


 ……


 罠……いや、違う。


 師匠に由来する意思のマナが極めて強い場所、それは確かなはずだ。


 改めて周りを見渡す。


(……!)


 僕は部屋の隅にあるものを発見し、目をやる。

 それは、瓶のボトルだ。表面は砂埃もなく綺麗でごく少量だが濁りのない水が入っている。


 ……これは、長らく放置されていた状態ではない。そして、"温度"……極めつけに意思の残穢──


 ……この牢獄の中に、人がいた形跡がある……。


 僕はここで何が起こっていたか、ふと思いを巡らせた。


 そして、もしやと思い、牢獄の扉に手を触れてみる。


 ──開いている──


 ボクは恐る恐る、鉄格子の扉を抜け、薄暗い牢獄を見渡した。



[AI非使用]

AI非使用

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