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ヒトの骨格を持つ蠅の魔物に滅ぼされゆく世界を救う物語/アストリア戦記  作者: シューゲツ
第1章. The Resolve of Freedom’s Amethyst/自由なる紫水晶の決意
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第77話. 禁書庫になき禁断なる児童書: 月のお姫様 ②

「さ、すわって!」


 夕方の図書館。ダンジョンの様に複雑に入り組んだ中にある閲覧用の小部屋。みんな夕食をとっているのか、いま人は殆どいない。

 ミツキは小説を俺に紹介するため隣に座るよう俺に促してくる。

 読み聞かせといったら小さい子にするようなものだと思っていたけど、ひょっとしてからかっているのだろうか?

 だけど、今のミツキからは、ついこのあいだのようなヒトを小馬鹿にしていたような態度はどうも感じない。 改めてみると、ヒトを見下していたような目つきも前とは違っているように思う。


 ──むしろ……


(なんというか、段々とだけど、“気品”が出てきているような……)

 

  魔物は、獣みたいなやつからすごく賢く気高い存在もいてピンキリだという。本来奪いまくることで生きるヴェスパでも、日々一緒に授業を受けたり、他者と共同で過ごすことでこうも変わるんだろうか。

 ヴェスパと一緒に本を読むということも、何気にスゴイことなのかも。


 俺は促されるまま、隣の椅子に腰掛ける。暗すぎず、明るすぎない、落ち着いた暖かいランプがほんのりと灯り──周りも静かだ。この部屋は学習用のスペースとして空間(マナ)が整えられている。

 ミツキは本を広げてページがはっきり読める様にみせてくれる……なんだか教科書を忘れた時をふと思い出した。


「……」

「どうしたの?」


(どうも、ミツキがちゃんとしていると、逆に妙な感じがするというか、緊張してしまう)


(……たまにはからかってくれてもいいんだけど、わざわざ言うのも変か)


「……なんでもない」


 俺は一言答えた。

 肩が触れるほど距離は近いハズなのに、以前のもっとハチャメチャだった彼女がふとどこか遠くへいってしまったようで、なぜだかほんの少しだけ寂しくなった気がした。


 みんなと過ごすことで成長していると思えばいいのかな。成長するにしても、早すぎなくってもいいのに──


 ミツキはページをめくり、語り始めた。



 ────月のお姫様────


 これは、今よりずぅーっと、未来のお話。


 その世界ではどんなところへでも行ける乗り物がいっぱい、みんなが自由に旅をすることが出来ます。


 夏休みのある日のこと、学校に通っていた12才になる子供たちは、空飛ぶ大きな船に乗り、空よりずっと高くにある空の果ての世界へとみんなで旅行へ出かけました。


 お空の上はとっても綺麗。お星様の光は無数にある異世界のきらめき。それは宝石箱のように瞬き、船を使えば好きな星にとんでいくことも出来てしまいます。


 ところが、旅の途中に不幸に見舞われてしまいます。空の果ての航海の途中で、あれ狂う大嵐に遭遇してしまうのです。


 空飛ぶ船はうまく飛び続けることができません。ふらふらと、近くの星──月に不時着してしまいました。


 お船は真っ二つ!どうやらなおすこともできそうにありません。みんなは恐る恐る、はじめて訪れた月の世界へと足を踏み出します。


 残念ながらみんなが夢見ていた、立派なお城や美しい海や魚たちはそこにはいませんでした。


 それどころか、お店や学校、病院もありません。


 あたりを見回すと、月の大地を飛び跳ねるうさぎさんたちがいましたが、周りにはどうやらそれだけ。


 期待がはずれ、あまりにも何もない世界で、みんなはどうしていいかわからず、途方に暮れてしまいます。


 みんなが困っている中で、一人の男の子“リーベル”が言いました。


「このままではお腹が空いて全員死んじまう。うさぎを捕まえてみんなで食べてしまおうぜ」


 リーベルくんは、いじわるな乱暴者で有名でした。

 

 女の子のみんなはその意見に大反対。男の子の何人かもその意見に反対しました。

 

 だけど、リーベルといつも一緒にいた男の子の数人はその意見に反対しません。彼らはうさぎをおいかけ、無理やり長い耳を掴もうとします。


 そんな中、一人の女の子、”セレニア“が前に出ます。


「やめて!うさぎさんをいじめるのはよくないわ」


 リーベルはセレニアを睨み返し、言い返しました。


「じゃあ、このままみんなで死ぬのか?生き続ければ、いつかは助けの船が月の空を通りかかるかもしれないんだぞ」


『生きて助けを待つ』、最初は彼に大反対だったみんなもその言葉を聞いてリーベルの方を向きました。セレニアは答えます。


「救助が来るのを願い待つ事には、私も賛成よ。だけど、うさぎさんはここで暮らしてきた。いじめずに仲良くなるべきだと思うわ。だからその手を離して、リーベル」


 リーベルはなかなか言うことを聞こうとしません。

 そんな中、一人の男の子が前に出ます。


「俺も、セレニアの言う通りだと思う。ここでバラバラになっていてはいけないよ」


 勇気を出してセレニアをかばったのは、“リュトス”くんでした。彼は臆病で、その声は震えていました。リーベルはその様子をからかおうとしますが、周りの子たちも続いてセレニア、そしてリュトスくんのことをかばおうとします。彼女の味方が圧倒的に多くなり、リーベルは不機嫌ながらもその手を離しました。


「ふん、勝手にしろ!」

 リーベルはそう言って怒ると、仲間の子を連れてどこかへと行ってしまいます。

 無事に助かったうさぎさん。何やらどこかへと案内したがっているようです。

 セレニアとみんなはそれについて行きました。

 

 すると、なんと!そこにはうさぎさんたちが住む家が並んでいます。そこはうさぎさんが住む町でした。うさぎさんは(きね)(うす)でお餅をついてつくり、それを食べて暮らしていたのです。

 うさぎさんは助けてくれたお礼として、いつかお空に救助の船が通りかかるまで、彼らがつくったお餅を分け与え、お水が湧き出る泉をつかう権利を約束してくれました。


「ありがとう、うさぎさん!」


 生き延びることができて一安心。みんなはセレニアの事を信用し、大いに慕うようになります。


 だけどうさぎさんをいじめようとしたリーベルにはうさぎさんはお餅もくれず、水の湧き出る泉は使わせてもらえません。

 リーベルは渋々ながらもセレニアたちからわけてもらいます。だけどリーベルたちはそれが面白くありません。


「まるで“お姫様”みたいに振る舞いやがって、いまにみていろ!」


 やがて子供達はそれぞれ自分たちの家を作りはじめます。救助はなかなかきませんが、みんなでその世界の探索も行い──だんだんとその広さを大きくしてゆきます。


 やがて、リュトスくんたちの探索部隊が大きな月の窪みのなかに、巨大な遺跡を発見しました。


 ──そして、ついに見つけます。



 ──



「遺跡で、みんなが帰れるための船を修理できる何かを見つけた?」


 俺が問いかけると、ミツキは微笑んで答える。


「残念ながら、船はとても修理できる状況じゃなくって、破片を使ってみんなはそれぞれの家を作ったんだって!」

「そうなんだ……」


(船の修理も諦めるのは、辛かっただろうな……。でも、みんなはそこで生きることは諦めなかった)


(……ていうか)


 さっきから、なんだか小説っていうより絵本を読みきかせてもらっているような感じだ。


 背は俺よりミツキの方がちょっと高いけれど、この絵面と有様は流石に子供扱いされているようでフクザツな気持ちになってしまう。すでに読書量でいうとミツキの方が勝っているとはいえ、ちょっぴり恥ずかしい。王女様が書いた有名な作品なのにあらすじだけ聞きかじったままになっている俺も悪くはあるが……。


 ミツキは再び語り始める。


「リュトスくんたちが遺跡で見つけたもの……それは──」

AI非使用

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