第97話. レナレナちゃんのゲームフレンドお持ち帰り作戦!
(お父様が、まるで心を奪われたかのように……!)
(きっとお父様は感じ取っている……『ツワモノのマナ』を。これは僕にもっと強くなれということですね……! 負けてはいられない……更に力を示さねば……!)
心の奥底に湧き上がる想いを胸に拳を握りしめるカリストー。
戦いの場においてベッカードがごく稀にみせる仕草、そして普段滅多に他人を認めようとしない彼が無条件に認めることがあること。
それがどのような場合にそれが起こり、そしてなされるか、彼は理解していた。
(……)
(——あれは、見た目は子供だが、只者ではない)
(……私はこれまで数々の猛き戦士……そして恐るべき魔物と渡り合ってきた。”勇者"と呼ばれるヒトを超えたその高みには遠く及ばず、この歳になり前線から身を引きつつはあった。──が、自ら戦いに身を投じ続けて来たからこそわかる事がある)
ベッカードの眼前に居るヒトの少女の姿をした者──戦闘態勢を解いた状態にはあるものの、目に映るその姿には武器をとり華麗に戦う姿、その技量は称賛に値するイメージとして彼の脳裏に投影されていた。
(武器を交えずとも判る。あの者は、私の太刀筋全てに対応する……! まるで隙がない——その上に、なお技を磨くことによって生み出される佇まい……!)
(何という屈辱……! なんという理不尽……! しかし、認めざるを得ない——)
(限界を知って尚も憧れざるを得ない、美しき武の神秘。それを魔物から感じ取るとは……!)
「?……どーしたのミツキ」
「え、えっと……なんでもない」
(うう、なんだかさっきから視線を感じる……! じ~っとこっちを見てる……あいつはキケン……! どうする!?)
——
(せっかく上で遊ぼーとおもったけど、変なムシがついてて関わりたくない……。話したことないけど、1ミリも好きになれない自信ある……あれはキケンなヤツ……!)
(……だから……『欲しいモノ』だけで十分だよね。興味なくてドーでもいい奴に関わるのなんて一番ムダで面倒くさい。どうせ近寄っても攻撃されるのわかってるし、ここは最高効率でパパっと澄ませよっと☆)
「レナレナ様、お呼びしましたかな?」
声をかけたのは、白衣に身を包み、金属の様な光沢を放つ触角と翅を持つ、しわくちゃな顔をした小さな老人だ。宙に浮かぶ円盤状の奇妙な乗り物に搭乗し、レバーで操作している。
(……胡散臭い占い師に、虹色に光るムシ、そしてこのミョーな乗り物に乗っとるジジイ、レナレナの周りってなんでこうビジュアルヘンなのばっかりなんかね)
(……ま、こんな遠くまで来られたのも、コイツのおかげだし、ここは利用させてもらうか)
「Dr. U、あんたに"飛ばして"ほしいものがあんだけど」
「フォフォフォ……! 実験ですかな!? Uめにお任せくだされ……! この"転送魔法機械"で何を飛ばしましょう……!?」
「ひとつは、レナレナ。もといた国にもどるわ。帰る」
「フォッ!? か、かか帰るですと!?!?」
「そ、ここもういーわ。いろいろとめんどくさいヤツいるみたいだし」
「お、お待ちください! 現在、こちらの戦況は極めて優勢……! 侵略の準備を進めているところでスゾ! 上では諸々の準備が……!」
「しらね、そっちで勝手に侵略進めといて。インチキくさい占い師にでも聞けばどうとでもなるでしょ。ここにゲーセン建てたらまた来るわ……それと」
「"アイツ"も一緒に飛ばしてほしい」
レナレナは真下に居る、ある者を指し示す。
「……!? 人間の、子供ですか?」
「はよして」
(ここから遠く離れれば、面倒くさいのに関わらなくって済む……。それでオシマイ、ハッピーエンド☆ アレほっとけば殺されるだろうし、今がアイツを拉致……いや助ける絶好のチャンス!)
「……で、では……!」
Dr.Uと呼ばれし魔物は、自身が乗る円盤状の乗り物に備えられた精密機械を操作し始める。
手慣れた操作——はじめは順調かと思いきや、途端にその手は止まってしまう。
「……! そんな……馬鹿な!」
「——なにしてんの? はよ!」
「大変申し訳ございません……! 同時は、不可能のようですゾ」
「は〜〜? どゆこと?」
「転送魔法は極めて高度な魔法……! 遠くに飛ばすには相応の"自由の意思"が必要なのですゾ! この"転送魔法機械"の原動力はレナレナ様自身——あなた様の大いなる"自由の意思"をお借りしております……! それが……足りないようなのですゾ! いったい何が……!」
「……ぐぬぬ」
(……アレのせいだ……!)
彼女の胸中、心当たりは"二つ"あった。
一つは、この場の上階に居る存在……。
猜疑心と興味を持つ対象以外への回避傾向が強いレナレナは、力によって兵を退けここに居座ることを可能にした一方で、対象と直接関わることを避けていた。目を背けたとて、その存在は彼女自身が持つ意思の力に影響を及ぼすほどのマナをもたらしうることに違いはない。
そしてもう一つ。
今しがた、遥か遠くの国に転送し、飛ばそうとした者——
その者に、自分より近い距離の者がいる。
それは、物理的な距離だけではない。
——疑念——
『物理的に近づいたとしても、自分はあのように声をかけてもらえるだろうか』
『"自分じゃない、別な誰か"に出来ることが、"自分"にも出来るのだろうか」
——相手のことは"知らない"……即ち、それは自身に対する疑念であった——
(……うまくいくと思ったのに……)
「レナレナ様だけであれば、転送することができますゾ」
「それは別にいらん、帰るのやめた」
「さ、左様ですか……」
(今度は帰らない? レナレナ様が何をしたいのか全くわからない……!)
「じゃあ、"アイツ"だけ一人にして"残して"。んで、他はどっか……どこでもいいからぶっ飛ばして頂戴。別に遠くじゃなくてもいいからこの近辺ならいけるでしょ? そしたらアンタもこっから消えて」
「わ、私も……!? か、かしこまりました。しかし我々の同胞らしき者もいるようですゾ……?」
「いや、アレはなんだかわかんね~けど、少なくとも仲間じゃない。周りにいる配下の兵もいっしょに"ニケ"のとこ飛ばしてやって! どーせ人望ゼロのあいつと喧嘩して腹いせに好き放題やってんでしょ」
「聞かれているやも知れませんゾ?」
「あ~? 聞かれてもぜんっぜん構わね~けど? ふつーにレナレナの方が格上だもん。 だからビビって手が出せないんでしょ~よ」
「そ、それではここを攻略するのも時間の問題というワケですな……!」
「ま、そゆことでいいわ。だからさっさとお邪魔な奴らをブッ飛ばしちゃって」
「……かしこまりました、ゾ……」
(……ちいと予定狂ったけど、これでも別にいいか)
(もともと、ここにはゲームのフレンドを探しに来た……それ以外はすこぶるどーでもいい! とにかく、これであのおじゃま虫はニケのところに返品。それと……)
レナレナは、少年の傍にもう一人、人間がいたことを思い起こす。
(……そーいや、おじゃまムシとは別に、見るからにバトルに向いてなさそーな、ノロマそうな人間のコドモもくっついてたな……ま、人間は孤立させちゃれば無力化するのは誰だろーと同じ……! 悪いけどここでお別れしな。アンタはこれでぼっち確定──)
(……)
(……?)
(……あれ、何かが……ヘン?)
突如覚える奇妙な違和感……。
それは、焼けるような、"熱"。これまで生まれて感じたことのない感覚だった。
そして、叫び声。
「レナレナ様……!」
「火が……火がついてます……!」
「!!?」
背後、ドレスの裾からつけられた焔——それは銀色をしていた。
そして、気づくや否や、焔はぼわっと一瞬で身体を覆い包み込む。
飛行能力に自信のあるレナレナであったが、みるみると高度を堕とし、地へ向けて瞬く間に落下する——
「あづいあづい!! なにコレ~~~!?」
「リリア!? どうした!?」
「なんか変なムシがいた」
AI不使用




