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二十三 - 霊別/蓮浄 凛
「薫?薫!?」
「待って、蓮浄さん」
弥生の声に振り返ると、弥生と彼女の祖母がそれぞれの手に神楽鈴を持ち、もう片手で印を結んでいた。
「わしらの力ではもう限界じゃ。その小娘は…もう…」
「蓮浄さん、水無月さんに人の心は確かにあった。けど、山の禁術で二人の命を奪った罪からは逃げられないよ…」
「そんな、薫!?」
薫が見慣れた笑みで喋る。しかし、そこには苦痛の色も浮かんでいた。
「ずっと前から覚悟はしてた。これから私の魂は山に沈み永遠に山中をさ迷う事になるだろうね…。禁術の…罪は…重いから…ね…」
私の目には涙が浮かんでいた。弥生も美里も老婆も皆固唾を飲んで見守っている。
「美里さん、弥生さん、老巫女さん、本当に、ごめんなさい。蓮浄さん、いや…、凛…。ごめん…ね。そ…して、ありが……とう。楽し…………か…………………」
次の瞬間、私達三人は例の崖の上に立っていた。
老婆も薫も、もうそこには居なかった。
崖縁に四輪の濡れた彼岸花が咲いている。
うち二輪はこの間の陰喰 律華と父親のものだろう。そして、この二輪はきっと…。
「彼岸花が咲きました」
またあの声が聞こえる。
しかし、今までのような無機質な響きはなく、どこか優しげな温かい声だった。
朝日がダム湖の水面を優しく黄金色に照らしていた。




