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新青天の霹靂  作者: まめ
第三章 短編集
32/51

青天の霹靂31(文化祭でかき氷)

「全部、忘れちまったんだな」

日向はやるせなさそうに、はたまた悔しそうに言う。

「ああ。それだけ廉夏も冬眞も覚えていたくない後味の悪い事件、もしくはやるせない事件だったってことだろう。つまりは、罪悪感だらけってな」

廉が言う。

「なぜ?」

「犯人を止められなかったからだろうな」

「じゃあさっきのは、不味かったか?」

顔をしかめる日向に廉は笑う。

「いや、京極である限り、それから、(ノガ)れることはできない。これは一種の逃れられない宿命と言おうか?」

「何でだ、逃げたって良いだろう、別に?」

日向は不思議そうに聞く。

それに、当然とでも言うように廉は笑う。

「それが、京極だ」

「重いな。それが京極なら」

「ああ。それが人より、良い立場で生まれた者の宿命だろう? 重いぞ」

「宿命か? でも、あれはあいつらのせいじゃないだろう? まして、誰のせいでもない。犯人達のせいでもない」

「あいつらは、被害者にって言うより、止められなかったことに対して、犯人達に罪悪感を覚えているんだ。あれは、園児や中学生には、覚えておくのは、きついものがあるよ」

「そうかもな。俺でも、あれは、胸くそわりいもんな。人間のちょっとしたすれ違いが生み出した、後味最悪な事件だったもんな。それに、犯人がその後取った方法が最悪だった。でも、それで何であいつらが罪悪感を持つんだ?」

日向も疑問を口にする。

「あいつらは、自分達がもっと早く動ければ何か変わったかもしれないと、思って己を責めてる」

「それは無理だろう? あいつらがそれで自分を責めるなら、俺達はもっと責められなきゃいけないな」

「ああ、本当にな」

内心、姪っ子と言うか、妹の将来を心配していたらしい廉。

それは、廉が高校生の時で、文化祭に廉夏を冬眞が引率していたときに、起こった。

彼らが初めて、手掛けた事件でもある。当時まだ幼稚園の年長さんと中学生だった二人。中学生だったけど、冬眞の頭の出来は、当時から飛出していたと廉は思う。

ちなみに、廉は当時から面倒なことには極力、首を突っ込まなかった(笑)

だから、この時も文化祭が面倒とばかりに、屋上でふて寝を決め込んでいた。

冬眞と廉夏達は、廉夏の希望通りフランクフルトを食べ、焼きバナナに駄菓子と文化祭を満喫していた。

プラネタリウムもあり、廉夏はウハウハだった。

最後に、締めにかき氷を食べに来たとき、それは起こった。

なぜか、廉夏はかき氷を自分のを一口食べると、それを店のカウンターに置くと、冬眞のをすごい勢いで食べ始めた。

どうしたのかと、目を白黒させていると、その理由は女生徒の悲鳴で分かる。

かき氷を、食べていた一人の女生徒が倒れていた。

毒か?

それが、廉夏には分かったから、自分のを取り上げたんだ。

ということは、無差別か?

でも、何故、彼女だけが倒れたんだ?

他のみんなは無事なのは、何でだ?

冬眞は、首を捻る。

その悲鳴に、もう一人屋上で怪訝な顔をした者がいた。

誰であろう、それは廉だった。

何だ? 自分が行かなければ、いずれは先生か刑事さんに呼ばれると思い、廉はげんなりしながら行った。

しかし、 行って驚いたことに、その場では、冬眞が指揮をとっていたのだ。

「遅かったな。取られたぞ」

それに、日向は含み笑いをしながら言った。

「解決までいけたらな」

と、廉も面白そうに言う。

予想外がここからだった。

冬眞が廉の存在に気づくと、

「あっ、ごめんなさい。ここは廉さんのテリトリーの場所でしたね。見せ場と言っても、差し支えがない場。そんな所に、知らぬこととはいえ、僕なんかが勝手に土足で、入ってしまってすいません」

と、言って冬眞は廉に、頭を下げる。

靴を脱げば良いのかと突っ込みどころ満載だったが、誰もそこには触れなかった。

いやそれより、ここが廉のテリトリーだと、冬眞が忘れるはずがない。

知ってて、態とやってるなと思った廉は、こちらも態とらしく笑顔を見せる。

「いや。ぜひ、君の推理ショーを見せてくれないかな? 冬眞君、面白いから」

それに、素直に頷く冬眞だった。

「はい。僕の何かでよろしければ」

「じゃあ、頼むよ。日向はドアを閉め、中に人を入れないように、また中の人を外に逃がさないように頼む」

「了解」

廉の指示に、日向は頷きドアを閉める。

「さぁ、どうぞ」

「有り難うございます」

冬眞は、頭を下げると、早速、披露を始める。

「ここで考えるべきことはまず、どうやって、被害者に毒を飲ませたかが謎になります。もし、このかき氷だとしたら何故、彼女だけに、致死量の毒を盛れたのか? ではどうやって、殺したのか? 答えは簡単です。犯人は、二人いたということです」

「共犯ってこと?」

廉夏は首を傾げて聞く。

「いえ、違います」

「じゃあ、偶然ってこと? そんな偶然ありえないよ」

「ありえないですか?」

「そうよ」

「人が殺意を持つなんて、もしかしたら、もの凄く簡単なことなのかもしれませんね。例えば、彼女に良いところを見せようとしてとか」

そう言って、店番の男の子を見る。見られた男の子は震え始める。

「殺す気はなかったんだ」

泣き崩れる男の子。

「ええ、そうでしょう。廉夏が、僕から取り上げて、全部食べたことからも、それはわかります。それに、他のどなたも倒れても、気分が悪くなったとも言っていません。あなたは本当に優しい人だね。他の学生に害がないように、少なく盛りましたね」

「では、どうやった?」

廉は、面白そうに聞く。

「僕は、始めに言ったじゃないですか?」

「何て?」

「犯人は、二人いると。人が少なからず、殺意を持つのは簡単なものなのかもしれません。まして、それが仲の良い友達同士ならなおのこと」

冬眞はそう言って、二人の顔を見る。するとそう言われた、

彼女と一緒にいた友達の顔が見る間に青くなる。

もう一人の子が聞く。

留花(ルカ)。なんで? 私たち仲、良かったじゃない?」

「ええ、だから彼女のバイトのことも、それに騙されているバカな男のことも笑って、聞いていたわ。それが、私が兄とも慕っていた人だと分かる前までは。彼は、借金に借金を重ねたあげく、自殺したわ。それが分かり、笑えなかった。今まで、笑った人たちにも、悲しんでくれる人がいたと思うと、許せなかった。私もね」

そう言って、グラッと倒れた。

その瞬間、先程よりも、大きな悲鳴が上がる。

それに、冬眞と廉夏は呆然としている。

「しまった。もう、少し早く気づくべきだった」

廉が焦ったように言う。

「どういうことだ?」

日向も焦ったように聞く。

それに、廉は言った。

「彼女も毒を煽ってたんだ。彼女は言ってたじゃないか? 『自分も許せない』と」

「なんだよ、それ。つまり、自分も殺そうとしたって言うことか?」

「ああ」

廉は、彼女に駆け寄ると、この店に置かれているポットを掴むと、それで口をすすぎ、指を一本入れ、吐かせた。

廉が叫ぶ。

「牛乳を誰か持ってないか?」

「あのこれで良いですか? さっき、買ったばかりなので、冷たいと思います」

「有り難う」

廉はパックの箱の横を開けると、自分の口に流し入れた後、彼女の口を塞ぎ流し込む。みんな息を止めて黙って見ていた。

彼女が咳き込むと途端に歓声につつまれた。

そして、連行されて行く者と、病院に運ばれる者とに別れ、事件は終わった。

「見事」

呆然としている冬眞に廉は言う。

冬眞は、弾かれたように廉を見ると、途端に顔が崩れた。

「偶然に偶然が重なった結果です。誰も死なんか期待してなかった。今回の事件は止めたかったです」

「そうだな。でも、お前のせいじゃない」

きっぱり、廉は言った。

「でも、僕は何もできなかった」

「それを、責めるなら、俺達にも、いや俺達の方が止められたな。お前が自分を責めるなら、俺達はもっと責められなきゃいけないな」

「でも、僕は彼女と男の人の、罪を暴くだけ。なんて、何の意味もないです。やる前に止められなきゃ、意味なんて無い。探偵なんて意味がないんです。やった後で、暴いても何の意味もない」

「暴かれたことで、重荷が彼らは一つ下ろせたんだ。彼らを救ったのは、お前だ」

冬眞は涙をこぼす。

「誰にも止められなかったさ。お前のせいじゃない」

廉が涙を隠すように冬眞を抱き締める。

「でも、彼女を救ったのは廉さんですよ」

「かもな。だったら、お前は犯罪を暴くだけじゃなく犯人を救えば、良いんじゃないか?」

「犯人を?」

「ああ。犯人を暴く探偵は多いが、犯人を救う探偵はいない。お前のなりたいものは、そう言う探偵じゃないのか?」

「そうかもしれませんね。でも、僕がやりたいことは、それだけじゃないような気もします」

「まぁ、まだまだ時間はあるゆっくり、自分の思いと向き合え」

「はい」

廉夏は冬眞の服を掴んでいる。

「廉夏、大丈夫ですか?」

冬眞が廉夏の顔を覗き込むと、廉夏はようやく泣く。

「ウワーン」

冬眞は廉夏を抱き締める。

「もう、大丈夫です」

背をポンポン叩くといつの間にか、冬眞に抱き付き眠っていた。

冬眞も廉夏を送って行くと、そのまま一緒に眠っていた。

廉が帰って来ると、二人が仲良くくっついて眠っていた。

廉は布団を掛けてやる。

だけど、二人は翌日には、何故かすっかり忘れていたのだった。

だから、廉は事件のことには触れなかった。

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