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2000年代のギャルゲー世界に転生した  作者: 生姜寧也


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8/10

8:カレー焼きそば

 転生2日目。アラームの音に目を覚ますと、今日も気持ちの良い快晴だった。妹に起こされる前に、階下へ下りる。

 咲和は俺の姿を見て、目を丸くした。携帯のアラームを使って自力で起きるというパターンが今まで無かったっぽいな。どうかと思うよ、過去の主人公クン。


 配膳を手伝い、2人で朝食。咲和は「なんだか人が変わったみたい」と笑ってたけど……実際、変わっちゃったんだよなあ。前の主人公クンは「そういう設定」としてあるだけで、存在を奪い取ったとかではない……と信じたいよね。実態は、これも神のみぞ知る、だけど。


 そして、昨日と全く同じ時間に玄関のチャイムが鳴る。すっかり準備万端の俺を見て、茉穂もまた目を丸くしていた。

 

「なんか人が変わったみたいだよね〜」


「ダリいとかも言わなくなったし」


 ここら辺は、ギャルゲーマー全体の黒歴史でもあるよな。

 高2病っていうか、キチンとせずに斜に構えてるのがカッコいいみたいな。そういうのを反映して「やれやれ系」とか「かったりい系」みたいな主人公が多かった記憶がある。

 ……大人になってみれば、カッコよくも何ともないということに気付くんだけどな。


「キチンと丁寧な生活を送れるなら、それに越したことはないからね」


 と、答えると。2人は顔を見合わせた。やっぱり「人が変わった」ように映るんだろうな。


「ということは、今日当てられそうな所も予習済み~?」


 茉穂がそんなことを訊ねる。


「えっと、一応宿題は全部やったけど……当てられる?」


「ほら、数学の山口先生。いつも出席番号順でしょ~?」


 いつもと言われても。そうなんだ、としか言えないけど。


「昨日が上田クンだったから、今日は面影クンだよ~」


 げ。そういうことか。


「あ、2年生でもそうなんだ。私のクラスでもそうなんだよね」


 咲和が同調する。

 奇を衒った当て方は全くしないらしい。だったら対策も容易、と言いたいところだけど。どこを当ててくるかまでは分からないからな。気は抜けないか。

 しかし先生ごとのクセか。こういうのも、そういえば学生時代は一大事だったな。


「……教室着いたら、教科書もう1回おさらいしとこうか~」


 今日やるであろう範囲を教えてくれるらしい。茉穂は優等生なんだな。考査より体育祭の方を嫌がってる雰囲気だったから、勉強>運動タイプだと推察する。

 ちょっと憂鬱な気持ちと、幼馴染の優しさにホッコリする気持ちと。両方を抱えつつ、朝の時間を終えた。

 ちなみに、茉穂の教えてくれた内容はバッチリで、「多分ここを当てられると思うよ~」と予想してくれた箇所がドンピシャだったという。






 昼休み。今日は焼きそばパンは無いとのことで、実に平和な学食内だった。ちなみに大友は今日は弁当とのことで、教室で摂っている。多分だけど焼きそばパンの時だけ親に「弁当は要らない」と言ってるんだろうな。最初から退路を断って覚悟を持って臨んでるということか。そのモチベがどこから来るのかは知らんが。


「さて、なんにしようかなあ」


 カレーライスが300円か。悪くない。ゴールデンウィークも1週間後くらいに控えてるから、そこまで節約しておきたいし。当分は300円以下を中心に回そう。スタミナ焼肉丼の500円が気にはなってるけどね。


「次の子、なんにする?」


「カレーで」


「福神漬けとラッキョウは?」


「あ、どっちもお願いします」


 ラッキー。300円だから期待してなかったけど、そういう副菜もつけてくれるのか。

 料理を受け取り、空いている席に座る。と、すぐに対面の席に誰かが座った。なんの気なしに顔を上げると、


「あ」


 昨日見た青い髪の女の子だった。目の前で見ると、やはり顔立ちの良さが際立つ。透明感のある、という表現が適切だろうか、色白で儚げな印象もあった。だいぶ小柄なようで、俺より座高がかなり低い。


「……」


 ジロジロ見ては失礼かと思い、彼女の顔から視線を下げる。と、今度はトレーが目に入った。焼きそばとコッペパン。焼きそばの方は学食で、パンの方は購買で買ったと思われる。

 ……これは、つまり。昨日、焼きそばパンを食べられなかったリベンジに、セルフで作ろうとしているんじゃないかと思われる。


「っ」


 彼女は少し後ろめたそうにしながら、パンを両手で割る。中央からパカッといった。そして箸で焼きそばの麺を数本取ると、割れ目へと置いた。パッチワーク焼きそばパンの完成、かな。


「っ」


 かぶりつく。俺もカレーを一口頬張りながら、チラリと顔色を窺ってみるが、


「……」


 微妙な表情。

 多分、思ってたのと違うんだろうな。

 彼女はもう一口チャレンジ。首を傾げた。咀嚼をする度、表情が曇っていく。

 まあなあ。パンに挟む用と、単体で食べる用では味付けが違うからな。


 ――もぐ、もぐ


 黙々と食べ終わると。以降は焼きそばだけ食べて、パンを軽くソース溜まりにディップしてという形になってしまった。

 俺も余計なことは言わず、目の前のカレーを片付けていく。

 それから5分くらい経って、俺の方は完食したが、


「…………」


 小柄な少女に、麺とパンのコンビはキツいようで、焼きそばの半分くらいが残った状態で、手が止まってしまっていた。

 顔を窺うと、白い顔が紅潮していて苦しそう。

 これは……流石に。


「あのさ。ひょっとして、食べきれない?」


 勇気を出して声をかけてみる。すると少女は少し驚いた後、コクコクと頷いた。


「限界、です」


 やっぱりか。


「俺、ちょっと足りなくてさ。良かったら、貰っても大丈夫?」


 間接キス的な感じが、そこはかとなくあるので、おずおず提案する。

 だが彼女の方は、そんなことも考える余裕が無いみたいで、


「い、良いんですか?」


「うん。もちろん。俺が言い出したんだから」


 答えると、彼女は心底助かったという安堵の表情を浮かべた。自分の箸をどけ、皿をこちらに渡してくる。


「お、お願いします」


「うん」


 こっちもテーブル備え付けの割り箸を割って、焼きそばの残りを頂く。カレーを食べた後だけど、なんとか腹の中へ収めることが出来た。

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