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やがて霧に還る  作者: いづくにか
セラフィナ編
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第97話 回収

 沈黙は続いていた。


 子供の身体は、もう動かない。


 レオンの呼吸だけが、乱れている。


 イレーネは立っていた。


 何も変わらない。




 男が一歩前に出る。


「処理を開始する」


 静かに言う。



 レオンが反応する。


「……待て」


 声は出た。


 でも、足が動かない。


 分かっている。


 止められない。


 それでも、言うしかない。


「……そいつは——」


 言葉が続かない。


 何を理由に止めるのか、分からない。


 イレーネを見ても、何も変わらない。


 助けを求めてもいない。


 拒絶もしていない。


 ただ、そこにいる。



 男が、手を伸ばした。


 速い。


 無駄がない。


 イレーネの腕を掴む。



 音が鳴った。


 骨が折れる、音。


 イレーネの身体が、わずかに揺れた。


 でも、それだけだった。



 男はもう一方の腕も取る。


 同じように壊した。


 次は脚。


 順番に、確実に。


 壊していく。



 レオンは一歩踏み出した。


 でも、止まる。


 理解している。


 これ以上は、無駄だ。




 イレーネの身体が崩れ落ちた。


 もう、立てない。


 もう、動けない。


 それでも、表情は変わらない。



「……終わり?」


 小さく言う。


 男は答えない。


 ただ、軽々とその体を持ち上げた。


 まるで、価値の重さがないみたいに。



「……どこいくの」


 イレーネが聞く。


「回収」


 短く答える。


「……そっか」


 それだけだった。


 納得も、拒否もない。



 レオンが歯を食いしばる。


「くそ……」


 小さく吐き出す。


 何もできなかった。


 ユリウスは、その光景を見ていた。


 最後まで。



 男が一歩下がると空間が歪んだ。


 音が消える。


 そして、その姿が消えた。


 イレーネごと。





 残るのは、静寂だけ。


 誰もいない。


 ただ、結果だけが残った。



 レオンは、動けなかった。


 ユリウスも、動かなかった。


 どちらも、選ばなかった。


 いや、選べなかった。


 それだけだった。





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