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やがて霧に還る  作者: いづくにか
セラフィナ編
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第98話 残ったもの

 夜だった。


 街は静かに沈んでいる。


 霧は濃く、音も少ない。




 教会の廊下でレオンは壁にもたれていた。


 動けないわけじゃない。


 でも、動く理由がなかった。


 手を見る。


 震えている。


 力を入れる。


 止まらない。


「……なんでだよ」


 小さく言っても、誰もいない。




「……俺は、動いた。止めようとした」


 言葉にする。


「……なのに、何も変わらなかった」



 沈黙。



 分かっている。


 正しかった。


 全部。


 それでも、結果は同じ。


「……意味ねえじゃん」





「意味はありますよ」


 静かな声が返った。


 エリアス。


 いつの間にか、そこにいた。



 レオンは顔を上げない。


「あの場での行動は適切でした。最善に近い」


 エリアスは淡々と言う。


「結果が伴わなかっただけです」


 正しい言葉。


 だからこそ、響かない。



「……じゃあなんで」


 レオンが言う。


「……あいつは連れてかれた」


 低く続ける。


「なんで俺は止められなかった」



 エリアスは、少しだけ間を置いた。


 そして、


「能力差です」


 はっきりと言った。



 レオンの指が、止まる。


「……それだけです」


 余計な言葉はない。


 あるのは事実だけ。



「……じゃあ」


 レオンがゆっくり顔を上げた。


「……どうすればいい」


 エリアスは、迷わなかった。


「強くなることです」


 即答。


「それしかありません」


 静かに言い切る。



 レオンは、しばらく何も言わなかった。


 怒りも、反論も、出てこない。


 それしかないと、分かっている。


 それでも、納得はできない。


 だから、残った。


 違和感だけが。






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