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やがて霧に還る  作者: いづくにか
セラフィナ編
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第73話 流れていくもの

 劇場を出ると、霧はまだ残っていた。


 空気は冷たい。


 でも、さっきまでの重さはない。



 ユリウスは何も言わずに歩き出す。


 振り返らない。


 そこに何があったか、ちゃんと分かっているから。


 足音が、静かに響く。


 霧の中に、溶けていくみたいに。




 少し後ろから、もう一つの足音。


 イレーネ。


 同じように、ゆっくりと歩いている。


 しばらく、言葉はない。


 必要ないみたいに。



 やがて、イレーネが口を開いた。


「……綺麗だったね」



 ユリウスは、少しだけ考える。


「……ああ」


 短く答える。


「……少し壊れちゃったけど」


「……それでもな」


 イレーネは、小さく頷く。


 否定しない。


「……壊れても、いいんだと思うよ」


 静かに言う。


「……そのままでも」


 ユリウスは、それを聞いている。


 反論しない。


 納得もしない。


 ただ、受け取る。


「……でも」


 少しだけ間を置いて言った。


「……あいつは、そう思わないだろ」



 イレーネは、すぐには答えない。


 少しだけ、視線を遠くに向ける。


 霧の向こうへ。



「……うん」


 やがて、小さく答えた。


「……思わないね」


 それで終わり。


 それ以上は、何も言わない。


 二人は歩き続ける。


 同じ方向に。


 でも、同じものを見ているわけじゃない。



 やがて、道が分かれる。


 イレーネが立ち止まった。


 ユリウスは、そのまま進もうとする。



「……ねえ」


 呼び止める声。


 ユリウスが振り返る。


 イレーネは、少しだけ穏やかに笑っていた。



「……あなたも、選んだね」


「……でも」


 続ける。


「……ちゃんと、残った」


 意味は、説明されない。


 でも、分かる。



 ユリウスは何も言わなかった。


 少しだけ目を細める。


 それで十分だった。


 そのまま、背を向け、また歩き出す。


 止まらない。


 霧の中へ。


 街の中へ。


 人の中へ。




 



セラフィナ編、終了です~!

ここまで読んでくださってありがとうございました~!!!!


小説全体としてはあと半分くらいお話があるんですけど、個人的にセラフィナ編すっごく気に入ってるんですよね笑

書いてるとき最後までセラフィナ殺すか生かすかずっと悩んでました笑。深夜テンションで最後のほう書いてたんですよね~



あ、一応⬇に吸血鬼の設定書いときます~

知らなくても物語を読んでいただく上で問題はないと思います笑

・意思の下で血を与えられることでなる存在。若い外見のまま何年も生き続けられるけど、定期的に吸血衝動に襲われるよ!(個人差はあるけど)

・日の光を浴びても別になんともないけど単純に力の出力とか回復能力とかが半分以下になるよ!

・特殊な能力を持った個体もいるよ!超能力みたいなやつです~

・吸血するときの血の価値にはそのときの感情で差があるよ!


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