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やがて霧に還る  作者: いづくにか
セラフィナ編
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第69話 遅れて届くもの

 消えた。




 それは、はっきりと分かった。


 理由も、理屈もない。


 でも、確信した。



 ユリウスは顔を上げた。


 教会の廊下。


 さっきまでと同じ場所。


 同じ空気。



 なのに、一つだけなくなっている。


 胸の奥にあった、あの引っかかり。


 あの“貼り付いていた感じ”。




 それが、消えている。


 代わりに、残っているものがある。



 思い出す。


 あの路地。


 あの“形”。


 あの感覚。



 そして、もう一つ。


 劇場。


 セラフィナ。



 全部、同じだった。



 息が止まる。



 理解する。


 遅れて。


 全部。



 “あれは”――――――


 言葉にならない。


 でも、確信だけがある。


 身体が、勝手に動く。


 足音が廊下に響く。


 速くなる。


 止まらない。



 後ろで誰かが何かを言っている。


 聞こえない。



 扉を押す。


 外に出る。



 霧の街。


 空気が冷たい。


 でも、関係ない。



 走る。


 理由はある。


 今は、はっきりと。



 劇場。


 あそこに、いる。


 セラフィナが。



 足が速くなる。


 息が荒くなる。


 でも、止まらない。



 距離は、そんなに遠くない。


 でも、やけに長く感じる。


 霧が流れる。


 視界を遮る。


 でも、迷わない。



 辿り着く。


 あの建物。


 古い劇場。



 立ち止まらない。


 そのまま、扉へ手をかける。


 迷いはない。



 押す。


 開く。



 重い音が響いた。



 中は暗い。


 静かだ。



 一歩、踏み込む。



 奥に、影がある。


 はっきりと見える。



 セラフィナ。



 立っている。


 まだ。



 息が、わずかに乱れる。


 でも、間に合った。


 そう思った。








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