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やがて霧に還る  作者: いづくにか
血統構造編
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第107話 優先順位

 最初に来たのはレオンだった。




 視界に入るのは、二人。


 どちらも倒れている。


 息はある。


 でも、浅い。



「……くそ」


 小さく吐き捨てて、すぐに動く。


 一人に近づいて、状態を確認する。


 呼吸。


 脈。


 傷。


 助かるかどうか。


「……まだいける」




 もう一人に視線を向ける。


 少しだけ、悪い。


 でも、完全に手遅れじゃない。


 どっちも、ギリギリ。



「……ふざけんなよ」


 瞬時に状況を理解する。


 一人で同時は無理。


 どちらかを選ばないといけない。



 そのとき、気配を感じてレオンが振り向く。


 ユリウス。



「……見つけたか」


 短く言う。


「ああ」


 レオンが返す。


「最悪だ」


 ユリウスにはそれだけで通じた。



 ユリウスは少しだけ近づいて状況を確認した。


「……時間ないな」


 静かに言った。



 レオンはすでに動いていた。


「こっちはまだ持つ」


 一人を指す。


「先にもう一人やる」


 判断に迷いはない。


 



 そのとき、空気が変わった。


 冷たく、揺れない空気。


 エイドルが音もなく現れた。



 レオンの動きが止まる。


「……お前か」



 エイドルはちらりと視線を向けた。


「対象二名、状態不安定。処理対象外」


 淡々と分析する。



 レオンが眉をひそめる。


「……なに言ってんだ…まだ生きてる、助けられる」



 エイドルは反応しない。


「最適解を選択」


 短くそれだけを言う。



「……は?」


「一名を維持、一名を切断」


 その言葉に、空気が凍った。



「……ふざけんな」


 レオンが言う。


「両方助ける」



 エイドルは、わずかに首を動かす。


「成功確率は低い」


 短く返す。


「……ゼロじゃねえ」


 レオンが言う。


「非効率」


 淡々と評価する。


「うるせえ」


 レオンが吐き捨てた。




 ユリウスは、そのやり取りを見ていた。


 口を出さない。


 でも、見ていた。


 両方の人間。


 レオン。


 エイドル。


 全部見ていた。



「……どうする」


 レオンがユリウスに言った。


 選択を渡す。



 ユリウスは、少しだけ考えた。


 でも、すぐに答えない。


 代わりにゆっくりと視線を上げ、エイドルを見た。


「……お前は」


 静かに言う。


「……どっちを残す」



 エイドルは即答した。


「状態優位個体」


 短く、迷いなく。



 ユリウスはそれを聞いて、少しだけ目を細めた。


 レオンが歯を食いしばる。


 時間がない。


 選ばないといけない。


 


 夜は、静かだった。


 その中で、選択が迫っていた。





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