戦後処理
アストゥート視点
「若奥様はお休みになられました」
シエナの報告に、アストゥートは腕の中にいるヴェネリオに向けていた顔を上げた。長年バジーレ家に勤めている侍女は、背中を見せて寝室の扉を閉める。その一瞬のこと。扉の隙間から見えた薄暗い室内で、穏やかな寝顔を浮かべたプルデンテに、彼は安堵と息を漏らす。
「安心してくれたと思えばいいのか。とにかく、自然に目覚めるまでゆっくりと休ませろ。誰にも眠りを妨げるようなことはさせるな」
「畏まりました」
深々と敬礼をするシエナを見届けて、再びヴェネリオへと目を向けた。軍服に縫い留められた金のボタンが気になるのか、手を振り上げて叩くように触れ、興味深いと見つめている。侵略を受けたと知らない、むしろ侵略そのものを知らない無垢な息子の元気な様子に、彼は口元を緩めた。
「お父様、私のおねがいですが」
彼の膝に手を乗せて詰め寄っているテオドラが、返事が欲しいと強請る。
彼女はこの度の侵略により、自身の無力さを痛感しているようだった。母親が診察と治療を受ける最中、そのプルデンテは勿論、ファビオラもヴェネリオも守るべく実地訓練をしたいと訴えていた。負傷したプルデンテの姿を見て決心をしたらしい。
「言っただろう、君にはまだ早い。まずは自分の事を熟せるようになってからだ。身支度は勿論、起床に乗馬、武具の取り扱い。武具に関しては特に注意をしなければならない。戦場では、使い方の一つでも間違えれば命取りとなる。だから、それらを学んで身に付けて、座学による戦略も学んでからだ。分かったな?」
学びの多さに愕然としたのか、テオドラは視線を落とすと、アストゥートの膝に突いていた手を握りしめた。スラックスの布地を巻き込んだことで皺が寄る。
彼はその艶やかな銀の髪の頭に片手を乗せると、労るように優しく叩いた。
「戦闘訓練なら今まで通り俺がしてやろう。戦略に関しても隊長格を呼び出せて講師をさせる。だから、しっかりと学んで・・・そうだな、せめて一人で馬に乗れる身長になったら、俺の部隊の哨戒に参加させよう」
「・・・本当、ですか?」
「俺が君に嘘をついたことがあったか?」
目線を上げて見つめてくるテオドラは、首をふるふると横に振って答えた。
アストゥートは意識して笑みを作る。優しく見えるように笑い、我が子が抱える不安を払拭させようとした。親になって、自身の表情の無さは子供に威圧感を与えると知ったからだ。
笑みを浮かべた彼は腰を上げた。その動きに察したテオドラは身を離し、後ろに下がって佇む。だが、ソファから立ち上がった瞬間に、隣に座っていたファビオラが不満の声を上げた。
「あ〜ん!まだヴェネリオちゃんにクッキーをたべさせていませんのにー!」
ファビオラの指が摘む丸型に切られた紙は、クレヨンによって表面が茶色に塗りたくられて、黒いクレヨンによる点も描かれていた。チョコチップ入りのクッキーを表現したようで、その細やかさに彼は思わず感心してしまう。
浮かべている微笑みを彼女に向け、「上手だな」と一言添えて頭を撫でた。そうすれば、ファビオラは褒めれたことに胸を張る。
「チョコチップのクッキーおいしいので、ヴェネリオちゃんにもたべさせたいですぅ」
「君のように言葉を話せて歯も生えてからだな。もう少し待ちなさい」
ファビオラの頭から手を離し、シエナを呼ぶ。近付いてきた彼女にゆっくりとした動作でヴェネリオを渡した。
「ぐずる前に乳母を呼び出しておけ。泣き声でプルが目を覚ましたら意味がない」
「畏まりました、すぐに呼び出します・・・まあ、ヴェネリオ様。お婆の抱っこは嫌ですか?すぐに乳母を呼びますからね。安心なさってくださいね」
プルデンテとアストゥート以外では、慣れた乳母でなければヴェネリオは不満を示す。案の定、顔を顰めて声を上げ始めたことで、シエナは宥めるように揺らしながら出入り口の扉に向かった。控えている侍女に声をかけて、休憩中の乳母を呼ばせている。
その光景をアストゥートは感情の失せた金色の瞳に映していた。その長い足による広い歩幅で歩き、出入り口に向かう。
「お父様、おでかけですか?」
「わたしがかいたケーキはいりませんの〜?」
背中に子供達の声を受けると、意識して微笑みを浮かべた。彼は見つめくる我が子達にその微笑みを見せた。
「まだ仕事が残っている。今日中には終わらせなければならない。ファビオラのケーキはあとで貰おうか・・・疲れてしまったプルを起こさないように静かに過ごしてほしい。頼めるかな?」
「はい、もちろんです」
「『しー』ですの?おかあさまはおひるねですものねぇ。おひるねはたいせつだって、わたしも知っていますわ。おとうさまの言うとおりにします〜」
多少、テオドラは自身に似ていると彼は思っていた。しかし、無垢なファビオラと同様に、素直に従う様は自身にはない性質だと考えを改める。
「君達が良い子なのはプルの影響だな」
誰にも聞こえない声量で呟くと、微笑みを浮かべたままの彼は自ら扉を開き、部屋から出ていった。
そして、廊下の壁際に整列していたプルデンテの護衛騎士三人を捉えて、咎めるように目を細める。
「相手の策略に嵌ったのはお前達の罪だ。再びプルが敵の手に落ちて傷付くようなことがあれば、次はない。お前達のたった一度きりの命でも償えないと教えてやろう。分かったな?」
静かで平坦な声ではあるが、だからこそ威圧感があり、殺意を感じたのだろう。
護衛騎士達は張り詰めた表情で頭を垂れた。負傷で包帯やガーゼを当てられた痛ましい姿だろうとも、彼は気に留めない。ただ荒ぶる心は表に出さず、最愛の妻に悲しみを与えたくないという気持ちから抑えていた。
「もはや脅威は去ったが、警護は続けろ。それがお前達の役目だ」
そのまま護衛騎士達の前を横切ると、衣擦れの音が聞こえた。姿勢を戻したと理解して、振り返ることなく進む。背後となれば、扉が開く音も聞こえ、彼女達が職務に戻ったとも理解した。
わざわざ目に映して確認はしない。護衛騎士達は、確かにプルデンテに対して忠誠心があると知り得ている。それは信じるのではなく、月日を経て確認できたこと。だから、気にすることなく廊下を歩き続ける。
すれ違う従業員達が一瞬だけ緊張した面持ちを見せると、すぐに敬礼と頭を下げる。使用人もメイドも警備の兵士すらも、アストゥートの姿を捉えると怯えを見せていた。彼はエントランス一階に降りるべく、階段に足をかける。その時に、ふと自身の顔を手で触れた。
(ああ・・・)
一人納得すると鼻を鳴らし、欄干にその手をかけて階段を降りていく。指先で感じた眉間の皺、手のひらに当たった歪んだ口。自身が凄まじい形相をしているのだと、触れたことで自覚できた。
感情の抑えが効かなくなっている。内にある苛烈な精神が剥き出しになりかけていた。
(プルも子供達もいないから、抑える必要がなくなった・・・)
一階に降り立てば、移動の途中だったらしい執事が小さく悲鳴を上げた。視線を向ける。そうすれば、長年勤めている彼ですら、一瞬引き攣った顔を見せて敬礼をした。
アストゥートは深く、ゆっくりと呼吸を意識して、顎を上げて執事の事を捉える。その高圧的な所作に、姿勢を戻した執事は頬を引き攣らせていた。
「お父様顔負けの迫力でございますね」
「お前は流石だな、今の俺を前にして減らず口を叩けるのか」
「伊達に四十年、それこそ先代のご当主様の時代からバジーレ家に勤めていますから・・・外出でしょうか?」
怒れるアストゥートの服装から判断したのだろう。先程見せた怯みを抑えて聞いてきた。
彼は首の角度は戻すものの、怒りで体が熱を帯びている。軍服の首元のボタンを外し、胸元を開きながら前に進む。
「ビセンテ軍の完全制圧の確認と、我が軍の状態を隊長達から聞き出す。それと・・・そうだな、諸々とやるべきことがある。帰宅は夜になるだろう」
「左様でございますか・・・あまり守備隊長達を責めないでくださいませ。彼らは若奥様が信用する勇士です。諸々のことも加減されますようお願いします。戦後処理に差し支えるかと思われますので」
「察しがいいのはお前の利点だが、今の俺に口出しするなど褒められたことじゃない。今は黙れ」
すれ違いざまに鋭い眼差しを向ければ、執事の顔色は悪くなるも呆れと溜め息を漏らした。
「本当にお父様と似ていらっしゃいますね」
背中に受けた言葉を聞こえなかったふりをする。執事を罰する時間がないため、アストゥートは温情を与えた。
守備の兵士によって開かれた扉から出れば、すでに厩務員が玄関前に黒鹿毛の馬を用意していた。素早く跨った彼は領都に向かって駆けていく。風を頬に受けて、闇夜を思わせる黒髪を無で上げられながら疾走すれば、すぐさま領都内に入った。
争いの跡は未だに残っている。バジーレの兵によって倒されたビセンテの兵の死体が点在し、順番に貨物馬車の荷台へと放り込まれていく。ビセンテ軍が少数部隊だったことで、家屋の倒壊や破壊などは殆どなく、いつもは整備された石畳の道に木片やゴミが散らばり、矢が突き刺さっているだけ。血に濡れた場所もあれど、道路整備の清掃員によっていの一番に拭われていた。
戦いの名残はすぐさま消え去るだろう。アストゥートは幸いだと思いつつ、領都の道を馬で駆けていく。何名か、戻ってきた民間人は呆気と彼の姿を視線で追い、兵士は慌てて敬礼をしていた。どちらもどうでもいいと、咎めはせずに走り続ける。
暫く駆けて辿り着いた詰所。黒鹿毛の馬から下馬をして手綱を引いた。愛馬を詰所の庶務員に馬を預けると、抑えが効かないことから足早に歩き進み、現れた両開きの扉を力を入れて押し開いた。
「うわっ、思った通り怒っているわ」
第一声を上げた南門の守備隊長を指で刺し、鋭い眼差しでも刺す。
「その軽い口を閉ざせ、コルンバーノ」
アストゥートから咎められた南門の守備隊長は、うんざりとした表情で目線をそらした。彼の様子に、隣で佇む西門の守備隊長が息を深く吐き出す。
領都の守備部隊を統括する兵士詰所の執務室。アストゥートは警ら隊長に命じて、ビセンテ軍の制圧が済み次第、隊長達を召集させた。
その鋭い眼差しで順々に四方の門の守備隊長達と警ら隊長、何故かいるオルサコリーナ将軍の姿も捉えつつ、以前は領都全土の守備隊長が座っていた椅子に腰を降ろした。
正面の壁に整列する彼らを睨み付けながら窺う。両腕を後ろに回して姿勢よく佇んでいる彼らは、全員が負傷していた。
警ら隊長は応急処置として右腕には包帯が巻かれていたが、血が滲んでいる。顔にもガーゼが当てられて、軍服にも血が飛び散っていた。本人の血液だけではないと思われるも、右半身は血の赤で染まっている。
次いで、東門の守備隊長。内通者によって門を破壊された彼は、必死と侵入を防いでいたのだろう。土汚れや衣服の擦り切れも見られ、肩は血に染まって布地に穴が空いていた。レジェスを含める十数名の敵兵に突破された折に、激しい抵抗を受けたと分かる。
オルサコリーナ将軍を捉えた瞬間に、流石のアストゥートも眉を寄せた。自身の部隊を引き連れてビセンテ軍と真っ向から衝突していたという彼は、凄まじい状態だった。怪我も見受けられるが、その全身を染める血は将軍だけのものではないだろう。負傷があっても真っ直ぐに佇み、にこやかな表情を浮かべる姿に異常だと感じて目をそらす。
他の三名の守備隊長は軽傷だった。顔や僅かに覗く肌には傷があり、軍服には複数の擦り切れがあるだけ。彼らの状態から、守護していた門の被害は最小限だったと分かる。
アストゥートは息を漏らすと、目の前にある執務机から身を離すように仰け反り、椅子の背もたれに深く沈む。
「お前達の怪我の度合いを見るに、破壊された東門と侵入を受けた領都内部以外はビセンテ軍を抑えられたということだな?」
「補足をしますと」
声を発したのは東門の守備隊長だった。負傷などものともしないとはっきりとした口調で告げる。
「東門は砲弾による倒壊で役目を果たせず、隊員自身で塞ぐこととなりました。侵入を試みるビセンテの兵士との交戦による戦死者も多く、結果としてレジェス・ビセンテの侵入も許しています。追撃もあとに続こうとするビセンテ軍によって叶わず、西門と南門の守備隊と協力をして押し留めることとなりました」
「開かれた東門にビセンテ軍が集中したので、南門に数名残して東門に加勢。あちらの勢いが凄まじく、押さえることで手一杯でしたよ」
「北門からも加勢しました。東門の部隊と協力はしましたが、激しい攻撃を受けたことで突破を許してしまいました」
「西門も同じく。防ぎきれずに十九名も取り逃がしました。領都内の被害の責は、我ら四門の隊長にあります。申し訳ございません」
報告から謝罪と頭を垂れた守備隊長達をアストゥートは眺める。沸々とした怒りが内から溢れそうになっているが、それは彼らに対するものではない。他者に怒りをぶつけるなど父親と変わらないと思い、必死に己を律する。
「・・・不運が重なったと思うことにする。何より、俺とバジーレ辺境伯は敵の奸計に嵌まり、領都から離れていた。迅速に戻ってきたとしても被害を拡大させた一因だ。少数兵にも拘らず、決死とビセンテ軍の侵入を防いでいたお前達を責めることはできない・・・ただ、プルを、いや、俺の妻を敵前に晒す行為は看過できるものではない。そうだろう、ルカ」
彼の目は警ら隊長に向かう。その突き刺すような強い眼差しに対して、凄まじい負傷を負った隊長は怯まなかった。
元はアストゥート直属部隊の所属、それ以前に警ら隊長は同じ祖先を持つバジーレ家の者だった。アストゥートの内心が怒りで燃え上がっているなど、長い月日を共にしたことで理解しているだろう。
「アストゥート、様の、仰る通りです。例え奥様の意向だとしても、引き留めるべきだったと猛省しています。奥様は僕の目の前で拐われました。あの時の恐怖は耐え難いもので、二度と経験したくはありません。ですから、同じ轍を踏むことはないように領都内の平穏を保ち、奥様が危険に晒されないよう尽力します」
未だに傷口から血が滲んでいると、徐々に赤く染まる包帯から理解できる。常に鋭い痛みがあり、貧血から意識が朦朧としているとも分かる。ただ、背筋を伸ばして真っ直ぐ佇む姿とはっきりとした声に、警ら隊長の意志は固いとも理解できた。
アストゥートは引き締めていた口元を緩めた。小さく息を吐いて前屈みになると、机に肘を突き、手の甲に顎を載せる。。
「口先だけのものではないと行動で示せ。今後のお前の姿勢から見極めてやろう。分かったな、ルカ・バジーレ」
「勿論です」
警ら隊長から整然とした敬礼を受けて、アストゥートは顔の向きを変えた。南門の守備隊長が「丸くなったなぁ」という軽口が聞こえたが、西門の守備隊長が拳を腹に打ち付けて物理的に黙らせたことで不問とする。
彼の目線は血塗れのオルサコリーナ将軍に向かう。障壁の外で戦い抜いたという将軍に対して言うことは一つ。
「貴殿は暴れ回って大半のビセンテ軍の兵を叩き潰したというが、もう少し落ち着いて戦うべきだと思う。敵の血か自身の血か知らないが、血塗れなど女子供が目にしたら失神する。不衛生に他なく、今すぐに身を清めてほしい」
「わははははっ!俺はどのような注意を受けるかと心躍らせていればその程度のことでしたか!息子共々、戦場で血の匂いを嗅ぐことで高ぶってしまいましたな!次の戦場では自重いたしましょう!我慢ができれば、ですが!はははっ!戦いに血湧き肉躍るのはバジーレの戦士の性!!無理でしょうな!!」
「いや、一緒にしないでほしいし、マジで自重してほしい・・・」
南門の守備隊長の呆れを含んだ呟きは、大笑いをする将軍には届かなかった。
アストゥートも呆れで眉を寄せながら、詰所の庶務員に浴室に案内するように命じるのみ。
快活な顔のまま退室する将軍を目で追いながら、次は領都にいたバジーレ軍の被害を問う。
「死者は警ら部隊が二十五名、東門守備隊が五名。負傷者は全部隊で、重体の者も含めて五十五名となります」
「プル・・・妻が弔いをしたいと言っていた。バジーレ辺境伯が戻り次第、領都で合同葬を執り行う。山間部での土砂崩れによる被害者も戦死者も含めるつもりだ。バジーレを守ろうとした勇士の魂を慰めたいらしい」
「大分奥様の考えに染まってるな。美人な嫁の願いは叶えてやりたいって気持ちはよく分かるけど、昔のこいつじゃ考えられあがっ!?」
「黙らせました、続きをどうぞ」
声を潜めもしない軽口を、今度は東門の守備隊長が物理で封じた。苦しみながら蹲る南門の守備隊長の姿を、アストゥートは冷めた目で見下す。
「よくやった、ジャン。ただ、次に不必要な発言をしたらラウロと組んで口を縫ってやれ。分かったな?」
敬礼が返事となった。
アストゥートの目線は南門の守備隊長から他の隊長達に向かう。
「ジャン、東門の修繕は急げ。ビセンテ軍は一時的に退けただけだ。今回の首謀者であるレジェス・ビセンテを拘束したとしても、まだビセンテ伯爵と二人の息子が残っている。報復として侵略戦争を仕掛けてくる可能性は高い」
「畏まりました」
「フェデーレ、ラウロ、それとお前。守備隊長としての役目を全うしろ。東門に続いて崩されたら領都は確実に崩壊する。領都の外と内、つまりは潜伏しているだろうビセンテの内通者にも注意を払え。いいな?」
「分かりました」
「御意に」
「・・・俺の扱い酷くない?」
南門の守備隊長に余計な発言だと鋭い視線で釘を差すと、未だに姿勢よく佇む警ら隊長に、その金色の瞳の目を向けた。
「ルカは、そうだな・・・警ら部隊はお前も含めて負傷者が多い。俺の部隊から死傷による欠員を補おう。生き残った者達には治療に専念するように命じておけ。お前も同様にな、分かったか?」
「それは・・・ありがとうございます」
椅子から腰を上げたアストゥートは、スラックスのポケットに手を入れた。中にある物を指先で転がしながら呟く。
「プルは自分が原因で被害を拡大させたと言っていた。自責の念に駆られている。お前達を厳しく罰しては、彼女は更に自分を責めるだろう・・・これ以上はお前達を責めるつもりはない。ただ、命じられたことを完遂しろ」
「ああ、なるほど。そうでしたか・・・アストゥート様のもとに奥様が嫁いでくださったのは、我々にとっても喜ばしいことだったと今感じました」
「喜びだけを感じていろ。欲を出して手を伸ばそうとするならば俺は容赦しない。分かったな、フェデーレ?」
名指しで呼ばれた北門の守備隊長はすぐさま目を泳がせていた。その様子に南門の守備隊長が含み笑いをすれば、素早く足を踏まれて制裁を受ける。
苦痛を訴える叫びが響く中、アストゥートはポケットから手を出した。その手に握り締めた物を金色の瞳に映して、注視するように目を細める。
「では、俺は後始末をしようと思う。ルカ、奴は拘留所にいるのか?」
折角考えた隊長達のフルネームが発表に至らなかったので、こちらに記載します。
南門の守備隊長コルンバーノ・デ・パルマ
軽率で軟派な性格、軽口ばかり言う。
東門の守備隊長ジャン・ベルターニャ
真面目な人、コルンバーノの制裁係。
北門の守備隊長フェデーレ・ジーノ
一見真面目そうだけど、女好きのむっつり。眼鏡。
西門の守備隊長ラウロ・カルディナーレ
他の隊長達よりも二十は年上。孫すらいるどっしり構えた人。
警ら隊長ルカ・バジーレ
曽祖父の代でバジーレ家の分家となった。職務に忠実ながらアストゥートの幼馴染であるため他の隊長達より親しげ。




