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再び相見える

描写がアクションゲームのボスの動作説明みたいになりました。文章力の無さよ・・・。

目に映る光景から、突如と轟いた音は東門からだとプルデンテは判断した。巻き上がっていた煙は風によって霧散していくが、彼女から右側に見える東門の様子はよく分からない。音に反応して、近くの警ら部隊の兵が向かっているとは動きで分かった。

彼女は慌てた素振りすら見せないが、その心臓は驚きで跳ね上がり、動揺で何も考えられなかった。思考すら真っ白になって、鼓動で痛む胸を押さえることもできずに呆然と見つめるのみ。

動揺の声を上げていた人々も、東門へと顔を向けて、微動だにできずに見守っている。ただ、捕らえられた内通者達の声だけが響く。


「ああ!やった!!ビセンテ軍が俺達を迎えに来た!!俺達の土地を取り戻しに来たんだ!!ここはもう俺達のものだ!!」


「ビセンテ軍がきた!レジェス様がきた!バジーレはビセンテに帰れるんだ!」


「やっと、やっとビセンテに!!」


歓喜の声に東門から目をそらせなかったプルデンテは、唇を引き締める。内通者達は全てではないが、警ら部隊に取り押さえられている。拘束を受けている。

にも拘らず、東門での爆発と思しき破壊工作で、ビセンテ軍が侵入したと喜んでいた。


「ビセンテに帰れる!!」


「この領都も私達のものよ!!」


感情の高ぶりで声の抑揚はおかしく、人目を憚らずに泣き顔すら見せている。周りにいるバジーレ領の者達は、彼らは深く入り込んでいた異物であると、動揺の眼差しを向けて戦慄していた。

バジーレ辺境伯領は、一度も隣国のビセンテ伯爵領に組み込まれたことはない。土着の民はまず肉体的な力からバジーレ家の先祖たる豪族を長として立てた。いずれ王国に組み込まれる諸地域と交流をし、プルデンテの先祖である初代国王による建国に際し、東の防衛を願われたことで遂に組み込まれた。つまりは建国当初から王国に属する地域である。

そのバジーレの地を狙って何度も侵略を繰り返したのがビセンテ。今は隣国に組み込まれて伯爵位を持つビセンテ家と、領地の者達。彼らに土地の一部を侵略によって奪われたことはあれど、それは過去の戦争によって取り返している。一度としてバジーレ領の自治権を奪われたことがない。認識の齟齬か、それとも伝わった歴史が間違っていたのか。

ふと、耳に入った言葉のせいで気に留めてしまう。一瞬だけプルデンテは考え込もうとしたが、首を横に振る。今は考えるべきことではないと霧散させた。未だ自身が動揺しているとも気付き、落ち着くために深呼吸を一回ほど。


「・・・警ら隊!!東門にて異常あり!!ビセンテ軍侵入の恐れにより民間人を、バジーレ家の城塞に避難させなさい!!」


僅かに思考は覚めた。領都の土地の中、一番堅牢である城塞への避難を号令として発する。その張り上げた声に、広場にいた警ら部隊は動き出した。動揺や恐怖で狼狽した彼らに、避難の指示を出して先導していく。

この広場にもいない人の姿が、家屋や区画内の道でも確認できる。その区画の担当と思しき警ら隊が、彼らを誘導しているとプルデンテはよく見える目に捉えた。


「若奥様も城塞に戻りましょう」


「相手は騎兵隊。東門で押さえられなければ、こちらまで然程時間かけずに駆けてまいります」


プルデンテを守るように立つ護衛騎士達が、心配とした表情を浮かべて訴えてくる。内一人は退路を確保すべく、壇上の下、慌てる人々の交通整理をしていた。目を向けることで、自身も避難すべきだと脳裏を過るが。


「逃げるつもりか灰色の王女!馬鹿がよぉ、逃げられるわけねぇだろ!誰もレジェス様を止められない!!捕まえたお前を奴隷に堕として、王国の王家もバジーレ家の権威も失墜させる!!お前が生んだガキ達は獣の餌に、ぐえっ!!?」


鍛冶師だった男を拘束している兵士が、その体に乗り上げて体重をかけたようだった。

重苦しさに苦痛と顔を歪ませた男を、プルデンテは表情なく見下ろす。


「何て悍ましい!」


「いいえ、妄言です!若奥様の不安を煽ろうとしたのでしょう!敵の首魁が領都内の者と通信できるはずがありません!」


憤りから護衛騎士達が声を張り上げている。プルデンテは彼女達の声を聞くことで唇を開いた。


「今は、でしょう・・・以前から通じていれば、あちらは領都内の様子を知り得ているはず。事前に指示を与えていれば、内部にいた尖兵はその思惑通りに動くことができます。妨げとなる四方の門も、今現在、東門は全壊とはなっていないようですが、一部だけでも破壊すればレジェスは軍を率いて侵入できる・・・そのために貴方は、貴方方ビセンテの者達は機を伺っていた。私が公に姿を現すと警ら部隊の通達で知り、絶好の機会だと動いた。そうですね?」


「ぐ・・・はっ、ははっ・・・っ、お前は象徴だ、王家とバジーレ家、二つを背負って、いるから・・・屈服、させれば、二つの家はビセンテに、手を・・・ぐっ、う、出せない・・・」


「でしょうね」


すっかり心臓の鼓動は落ち着いていた。護衛騎士達や警ら隊長は憤りを感じているのようだが、彼女は冷静沈着を努めて、冷たい眼差しで地に伏す男を見つめる。


「ガキ共は、二つの家を繋ぐから、いらねぇ、殺す・・・だが、っ、お前だけは、灰色の王女・・・お前をレジェスさま、が、鎖に繋いで、見せびらかせば、無残な姿をさらして、やれば・・・はっ、はぁ、権威が落ちるんだ、よ・・・王家と、バジーレけ、のよぉ!」


「だから執拗に灰色の王女という渾名で呼んでいたのですね。レジェス・ビセンテも、貴方方も、私な王国の王女であると印象付けて周りに意識をさせようとした」


「若奥様」


若い護衛騎士がプルデンテの腕を掴む。この場を去るべく腕を引く。彼女だけではなく、他の護衛騎士も警ら隊長も、プルデンテを守ろうとする者達は、避難させようと動いていた。


「あの鉱山町に、飛ばされた一族は上手ことやっ、て、軍内部に入り込めたが・・・お、お前が原因で、梯子を外された、っ、だが、俺達はお前が思っているより、数ぉおい・・・東門は、大丈夫、かよ?仲間が、鋳造した鉄の玉を、ここの砲台で吹き飛ばしたはずだが、ひっ、ははっ、ぜんめつ、してなきゃ、いいなぁ・・・はぁ、ははっ、あ゛っ!?」


不快な音が響く。鍛冶師だった男は頭こそ石畳に押さえつけられていたが、乗り上げていた兵士は、彼の首に膝を動かして力を加えた。もはや苦しそうに語る声はなく、憤怒と顔を歪ませた兵士がその死に顔を見下ろしている。

プルデンテは目線だけを動かし、痛ましい死に様から背いた。


「未熟ですので加減ができず、殺してしまいました。申し訳ございません」


「言い訳には弱すぎる。もう少し考えた言動を取りなさい・・・」


警ら隊長もただ軽く諭すと、少し眉を寄せた顔をプルデンテに向けた。彼女は目線を上げて視線を合わせる。


「東門の隊長は質実剛健な男です。身を挺してでも奥様に脅威が届かぬようにするでしょう。今のうちに城塞へ戻ってください。万が一、貴女の身に何かありましたらアストゥートに顔向けできないだけでなく、厳しい罰を受ける。我々のためにも早く避難していただければ幸いです」


この最中にも、警ら部隊に誘導されて人々は広場から離れていく。参加していなかった者も、疎らな人数で纏まりながら、その進行に合流していく。城塞への避難を続けていた。

人が減ったことで広場の石畳はよく見えて、拘束されたビセンテの内通者達の姿がある。未だ抵抗と身動ぎ、声を張り上げていた。バジーレがビセンテへと帰順することを声高に語っていた。


「逃げたって無駄だよ!!お前ら全員ビセンテの犬になるんだ!!」


「レジェス様の支配となれば、お前も!お前もぉ!!あたしが飼ってやるよぉ!あはははっ!!」


内通者達は老若男女幅広く、十代と思しき子供すらおり、拘束を受けても異常な主張をしていた。プルデンテは隣国はもとより、ビセンテ伯爵領など行ったことはないが、思想の強さから領民全体に洗脳を施しているのかと考えてしまう。


「若奥様、お早く」


耐え難いと感じたのだろう。赤い髪の護衛騎士は、有無を言わせない力で掴んでいたプルデンテの腕を引く。不敬と断じることもできる対応ではあるが、それは彼女を思ってこそ行動であると理解していた。


「警ら隊長、あとは頼みました」


「勿論です。僕はアストゥートの部隊で戦場に出たこともあります。貴女に近付こうとする敵は全員散らしましょう」


一瞬だけ微笑みを浮かべた警ら隊長は、すぐにその端正な顔を引き締める。踵を返して、内通者達を拘束している兵士達に号令をした。部隊の編成を手短に話し、東門から広場までの道に要所を設けた防衛作戦がプルデンテに聞こえる。

すでに移動を始めた彼女は、逞しい体躯の護衛騎士が馬を引く様子を目に捉えた。自身の栗毛の馬が飼い葉を食べながら近付く姿も見える。思わず愛らしく思ってしまい、気も抜けてしまった。


「東門から突破した騎馬が一騎!すぐに止めろ!!」


警ら隊長の張り詰めた声とその内容に、プルデンテの心臓が跳ね上がった。気を緩ませてしまっていたことで、動揺してしまった。

思わず振り返って見れば、黒鹿毛の軍馬が警ら部隊の兵士を二人轢き、騎乗していた男が弓を構える姿を捉えた。


「危ない!」


声を上げてしまう。瞬間、放たれた矢が内通者を拘束していた兵の顔面を撃ち抜いた。彼女が地に倒れ伏すと、拘束を受けた女は足早に軍馬の男に、レジェスに近付いて感極まった表情で何かを訴えている。


「相手は一人!!捕らえろ!!」


警ら隊長が指示を出せば、内通者達を縛り上げた部隊の兵士達は、レジェスへと殺到した。しかし、彼ら一人一人、レジェスに近付く前に強弓によって撃ち抜かれる。軍馬の足元に近付けたとしても、その太い足に蹴散らされ、投げ付けられた手槍に貫かれていた。


「あ・・・」


プルデンテにとって広場は、目の前は戦場となっていた。彼女を守ろうとする兵士達がレジェスに挑むも、誰一人斬り込むことができない。近づく前に矢を受けて、手槍に貫かれて倒れていく。抵抗もできずに殺されていく。


「くそっ」


吐き捨てるように言った警ら隊長が駆け寄った。彼の動きにレジェスはすぐさま反応をして、表情のない真顔で鋭い眼差しを向けて、矢をつがえた弓の弦を引く。

距離を詰めた警ら隊長に矢が放たれた。凄まじい速度のそれを、隊長は剣で薙ぎ払った。更にレジェスに詰めるも、再び矢が放たれて薙ぎ払い、躱すを繰り返す。それ以上、距離が狭まる様子はない。

隊長が呼吸を整えてる隙に、レジェスは兵士の遺体を貫いていた手槍を引き抜いた。その剛腕で隊長も貫こうと思っているようで、騎乗したまま右手で構えている。

その鋭い眼差しは、突撃を図る隊長とプルデンテを交互に見ていた。筋肉逞しい体格に黒鉄色のフルプレートを纏う彼は、非常に雄々しい。にやけた表情を浮かべていないだけで、威圧感と恐ろしさを際立たせている。


「実力があるとしても、警ら隊長一人では無謀です」


「だからといって我々は加勢できません。若奥様の御身を守ることが」


赤い髪の護衛騎士がプルデンテへと振り返った。その瞬間、レジェスが手槍を遺体に突き刺して、弓に矢をつがえた。


「っ!?まさか・・・護衛騎士!早く奥様を連れて、うっ!!」


別の方角から放たれたと矢が警ら隊長の肩に刺さる。次いで、レジェスの矢がプルデンテの腕を掴む赤い髪の護衛騎士の手を貫いた。


「あぐっ!?」


よく見える目が全てを映していた。しかし、動揺からプルデンテは声に出せない。もはや戦場の只中。そう思い浮かんだときには、赤い髪の護衛騎士が崩れるように身を屈め、若い護衛騎士が咄嗟とプルデンテを庇うように立つ。


「お前達、若奥様を城塞にお連れしろ!」


逞しい体躯の護衛騎士は馬の手綱を離した。彼女は身を翻すと、鞘から剣を引きながらレジェスに立ち向かう。

しかし、彼女はすぐさま立ち止まる。なぜなら、レジェスと同じ意匠の鎧を纏った騎馬兵が二人、彼の背後から近付いてきたからだ。


「東門から抜けてきたか!」


そう呟いた護衛騎士の声に、呆然としていたプルデンテは顔を上げた。背中を見せる護衛騎士の向こう。レジェスを含めた三人の騎馬兵。そして、警ら部隊の兵が倒されたことで、自ら拘束を解いたビセンテの内通者達が集っていた。


「目障りな護衛と、どこぞの部隊の隊長はお前らに任せた・・・俺は、あの着飾った灰色の王女と話がある」


やっと口を開いたレジェスは、非常に整った容貌を強調させていた真顔を緩めると、ゾッとするようないやらしい笑みを浮かべた。

プルデンテには彼が部下達に話した言葉は分からない。ただ、歩兵となった内通者達と二騎の騎馬兵が動き出し、彼女を守る者達に攻撃を始めた。騎馬兵は警ら隊長と護衛騎士と交戦となったが、角材や石、農具など手にした内通者達はプルデンテの側にいる二人の護衛騎士に攻撃を定めた。


「ああ、もう!この程度の石で!!若奥様、すぐに城塞にお戻りください!!」


赤い髪の護衛騎士は矢の貫通する手を庇いつつ、若い護衛騎士は盾になるように佇み、投石を防く。その合間に距離を詰めてきた敵対時に応戦する。

僅かながら足が竦んでいたプルデンテだったが、その意思を汲み取って走り出そうとした。だが、彼女が立ち尽くした栗毛の馬に近付く前に、手槍が足元の石畳を貫いた。馬は驚きで逃げ出し、守るべく戦う者達が気付いたときには、プルデンテの目の前までレジェスは迫っていた。

軍馬による素早い動き。彼女の目は、その動きすら捉えていたが、驚きと動揺で声すら上げられなかった。呆然と、絶望感に苛まれながらも黒鹿毛の軍馬の体を視線でなぞり、騎乗しているレジェスの顔を見上げた。

美形であるはずの顔は笑みによって醜く歪んでいた。勝ち誇ったかのように口角を上げる男は、黒鉄色のガントレットを填めた大きな手を伸ばし、プルデンテの首元、プレートの襟の部分を掴み、凄まじい力で持ち上げた。


「あ、うっ」


引っ張られた感覚、白銀のプレートの金具やベルトが身に食い込む痛み。不安定な体勢から羽飾りのある兜は落ちてしまう。彼女が苦痛の声を漏らすと同時に、金属同士が接触する音と、背中に巻き付く腕の力強さを感じた。


「さて、楽しいお話をしようじゃないか、灰色の王女様。お前は人質でもあるからな、抵抗しないほうが長生きできると思っておけ」


レジェスに胸を合わせるように抱き締められている。そう気付くも、馬が走り出したことで声すら上げられなかった。

風を切るような速度。灰色の瞳の目に、揺れた前髪の毛先が突き刺さる。痛みに目を開けず、抵抗することもできず、ただレジェスに抱えられたまま、プルデンテは連れ拐われた。






およそ十分ほどの走行だっただろうか。ゆっくりと速度が落ちていくことで、顔を打つ風も弱まり、前髪が躍ることもなくなった。レジェスの腕に締め付けられるように抱えられる不快感に、プルデンテは感情を隠さない険しい顔を上げた。

その視界に映ったのは、年月が経っていると分かる石組みの壁。見上げれば、風を受けて回る木と布で組まれた羽根。それは風車を頂く古い塔だった。


(この塔は、領都の南側にある小麦挽き用の施設で、確か外部に対する監視塔も兼ねているとアストゥートが)


「ここは領都にあるビセンテの拠点の一つだそうだ。内部に潜ませていた奴らが管理しているから、バジーレ軍の兵でも簡単に踏み込めないし、まず気付かれないだろうな・・・ここならお前とゆっくり過ごせる」


「ひ、っ・・・」


レジェスはプルデンテの灰色の髪に高い鼻を埋めると匂いを嗅いで、耳の間近で囁いた。

思わず怖気立ったプルデンテは喉を引き攣らせたが、彼は楽しそうに喉を鳴らして笑う。


「さあて、灰色の王女様。ご案内いたします」


上擦った声のレジェスが下馬をすると、その太い腕に締められていた彼女の体は引きずり降ろされた。咄嗟と足に力が入らず、草の芽が生える石の道に崩れ落ちてしまう。


「ぅ、あ・・・」


彼は気にせずに歩き出した。楽しそうにニヤついた表情のまま、強張った表情のプルデンテの体を引きずりながら、バジーレに潜ませていた配下の者達が守る塔の扉へと歩いていく。

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