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作戦決行

城塞の正面玄関、固く閉ざされた門扉を前にしてプルデンテは領都を眺める。

濃紺のシンプルなドレスは胸元の布地は厚いが、それでも組んだ手を寄せることで、忍ばせているサファイアのネックレスの存在を強く感じた。

領都の兵達は小さな粒ごとき大きさだったが、それでも黒の軍服に鋼鉄の鎧を纏うことで領都の民には紛れなかった。その中で、十ほどの騎馬で駆けるのはオルサコリーナ将軍の部隊。今、西門に到着したと高台の城塞からは見えた。彼らは、門の向こうにいるビセンテ軍と直接交戦する。

南門と東門にも兵士が集っていた。双方とも砲台を慎重に障壁上部に運んでいる。その下で僅かな数で整列しているのは、弓兵だろうか。

プルデンテは目がいい。それは生まれもってのものであり、歳を重ねても、暗がりで書物を読んでも視力が落ちたという感覚はなかった。彼女は認知していないが天性の才能だろう。


「よく見えませんが・・・若奥様と隊長達が練られた作戦の準備中、でしょうか?」


背後に控えているシエナは小さく呻いて、不確かだと言葉を詰まらせる。

プルデンテが振り返れば、彼女は額に手を当て、目も細めることでバジーレ領の軍の動きに注視しているようだった。


「私もはっきりとは見えませんが、オルサコリーナ将軍は率いている部隊と西門の前に控え、南門と東門は矢による掃射と砲撃の準備をしています」


頭を振り戻して障壁に目を向ければ、背後から「若奥様の視力はどれほど凄まじいのですか」という呟きが聞こえた。

その言葉で思い出すのは狩猟祭でのこと。夜間に行われた大熊討伐の様子も、プルデンテには見えていた。ここでやっと自身の視力は異常とまで言えるほどなのだろうか、と彼女は思う。当人だからこそはっきりとは分からない。異常なのかとシエナに聞くべきか。

その思考は、オルサコリーナ将軍が守備隊によって開かれた西門から飛び出したことで霧散した。そのまま動向を見守る。

同時と東門から破壊音が轟いた。南門に確認と顔を向ければ、障壁上部に立ち並ぶ弓兵達がいた。やはり細かくは見えないが、矢による掃射が始まったのだろう。

ただ、次いで響き渡る音に肩を跳ね上げる。それは砲撃が炸裂した音ではなく、地に響く叫び声。同時攻撃を受けた北門以外のビセンテ軍、およそ百五十人の声だろうか。動揺、苦痛、怒号といった感情が混じり合ったような声は、雲のない澄み渡った秋空に轟いている。


「オルサコリーナ将軍の部隊と掃射、砲撃を同時に受けたのだもの。声に出すほどの感情が風に乗って広がるのは必然・・・北門のレジェス・ビセンテに気付かれたでしょう」


「気付かれたとて、すぐさま対応はできないかと。あちら方は混乱状態かと思われます」


「そうだとよろしいのだけど・・・」


胸元の布地を寄せるように、内にあるネックレスを握り締める。

西門が僅かに開き、将軍の部隊が戻ってきた。彼らに死傷者はないようで、騎馬の数は変わらずに東門へと駆けていく。そうすれば、予定通りに西門の障壁上部に弓兵達が向かっていく。南門では、すでに運び終えていた砲台を整備しているのか、兵士が囲んでいた。


「砲弾は全部で二十発。三つの門で分けるため、南門で一発多く放つ・・・その分、東門での将軍達の交戦時間は増える。誰も欠けることなく、どうか一人でも多く撃破してください」


無意識に望みを述べれば、準備が整ったとオルサコリーナ将軍の部隊が東門から飛び出していく。南門での砲撃も始まり、再び轟音が響き始めた。叫び声と交じり合ってプルデンテの耳に届く。


「領都では騒音として轟いているでしょう」


「ええ、警ら部隊による通達をしたとは言え、不安を煽っているとは思います。でも、少しでもレジェス・ビセンテの兵を減らさなければ、人々に真の平穏は訪れない」


祈りを込めて頭を垂れる。

死者なくこの難事を乗り切ることを願い、戦場にいる兵達の無事を祈った。

そして、彼女は一瞬の静けさに顔を上げる。欠員なく南門に向かう将軍の部隊を目にした。作戦は滞りなく進んでいると理解して、領都からこちらに向かってくる馬の姿も目にする。

伝令だろうとその場で待ち構えた。城塞の使用人が椅子とテーブルを運び込む姿を捉えるも、座ることはできず、不安を抱えるために立ち尽くしていた。


「ご報告に参りました」


腕章から警ら部隊の兵と分かり、伝達係を任命されたのだとも理解する。プルデンテは了承と頷くことしかできず、彼が周囲を守る護衛騎士達の前で立ち止まり、膝を付く姿を目に映した。


「将軍閣下と守備隊の活躍により、ビセンテ軍の兵十数名を撃破したとのこと。正確な数は検分ができずで不明ではありますが、包囲を仕掛けたビセンテ軍を明確に混乱させているそうです」


「そうですか」


小さな息は安堵によるもの。

人が死したと分かってはいるが、敵兵である。プルデンテが託されたバジーレの土地を奪い、汚そうとする者達である。温情は与えてはならない、追悼するべきではない。少しでも心を寄せれば、判断が鈍ると彼女は思っていた。


「こちらは相手方の弓により三名ほど負傷。重傷者もいますが、全て障壁内でのことですので処置済みです」


「命を落とす方がおらず、安心しました・・・作戦は、砲弾を撃ち終えたために停止となったのでしょうか?」


兵士の背後、眼下に広がる領都の様子から感じ取る。オルサコリーナ将軍の騎馬隊は西門で待機している。南門も東門も砲台を移動させ、代わりに弓兵を用意している。


「北門で動きがありました。三方の門から響いた騒音に勘付いたようすで、レジェス・ビセンテも南門に移動している最中です」


「・・・依然、北門にはビセンテ軍を残して、ですね」


「無傷の部隊です。大将のレジェスは確認のつもりか、近衛兵と移動しています。ただ、近しい西門にオルサコリーナ将軍が控えています。将軍の性格を考えるに、プルデンテ様の指示がなければ自己判断で南門に移動して突撃されるかと思います」


「レジェス・ビセンテの力量は、バジーレ軍でも周知されているのでしょうか?」


兵士は頷くと、僅かに顔を強張らせた。


「こちらにも悪名の轟く剛力の戦士です。ビセンテ伯爵の三人の子息達はビセンテ軍の将にして要。一人で百人力とされています。オルサコリーナ将軍が退かずに突き進みレジェスと交戦となれば、最悪、瀕死の重傷を負う可能性は否めません」


「それは・・・将軍を失うわけにはいきません。その場で待機をお願いします。あちらがどれほど怒号を発しても、門が閉ざされている限り被害はほぼありません。このまま様子を見るべきです」


「畏まりました」


兵士は敬礼をすると、踵を返して馬に騎乗した。伝達のために早馬で駆け出し、その姿が粒子のごとく小さくなるまで時間は掛からなかった。

プルデンテは眼下の領都、障壁の付近に再び視線を戻す。オルサコリーナ将軍が待機状態であるため、他の二門にも動きはなかった。おそらくだが、南門ではレジェスが激しい罵声を発しているだろう。多少言葉を交わしただけでも、激情に駆られる下劣な人間性だと理解している。

将軍は感情豊かではあるが、歴戦の騎士ゆえにレジェスの挑発に乗るはずもなく、その精神は常に落ち着いているとも理解していた。


薄く息を吐き、肩に入っていた力を抜く。プルデンテは兵の動きがないことで、領都全体を見渡して、領都の人々の動向を目にする。

家屋から姿を出し、移動中と見られる者達も障壁へと顔を向けているようだった。彼女の位置から最長距離にある家屋や人々の様子は、流石にはっきりと見えないが足は止めていると分かる。

響き渡った轟音、人の叫び声、剣戟音すら聞こえた人々もいただろう。その喧騒は、籠城を強いらていることで多大な不安となっているはずだ。精神的な疲労、心的外傷に至ることを懸念する。

民とは守るべき人々である。王家の姫であったころから、高貴な身分にある者の義務だと学び、彼女自身も納得して受け入れていた。

例え無能の姫だと嘲り、貶めていた者達だろうとも、守るべき責任と義務がプルデンテにはある。


「この戦いを終えたのなら、領都の人々の支援をしなければ」


そう呟く言葉は、そよ風に吹かれることで掻き消えて、彼女も灰色の髪が踊ることで唇を引き締めた。

その顔にかかる髪の合間から北門が見えた。不意に目を向けたことで映ったといったほうが正しいだろう。

北門の守備隊はレジェスが移動するまで彼の足止めをしていた。つまりは戦いによる疲労はなく、将の不在により、指揮する者はいない。


「本隊から離れるなんて・・・いえ、離れても問題ないと判断をされたのね」


本来の指揮官であるバジーレ辺境伯とアストゥートがいないことで、領都にいる部隊は軽く見られている。レジェスの動きが物語っていた。


「よろしいかしら?」


「はい、いかがされましたか?」


プルデンテは自身の正面左に控えていた護衛騎士に声をかけた。彼女は振り返ると、背筋を伸ばして整然と佇む。


「オルサコリーナ将軍に伝達をお願いします。北門の前を塞ぐビセンテ軍は将が不在により、攻略が可能かと思われます。守備隊と協力して、敵兵を減らしてくだされば幸いです・・・そうお伝えください」


「畏まりました」


護衛騎士は了承と礼をすると、すぐに姿勢を正して駆け出した。馬を調達すべく、厩舎に向かう彼女の後ろ姿を見つめる。


「オルサコリーナ将軍が動き出せば、他三門の守備隊も呼応するでしょう」


正面右にいた護衛騎士の言葉に、プルデンテは頷く。


「バジーレ領軍が如何に連携の取れる軍隊だとよく分かります。将の判断力も軍の統率も国内随一。この地に嫁いできた身ではありますが、非常に誇りに思いますわ」


「若奥様の誇りとなれてバジーレの兵は幸いでございます」


言葉を交わしつつ、その灰色の瞳の目は領都に向ける。

早馬で駆け抜けた護衛騎士がオルサコリーナ将軍に接触した。プルデンテの指示は伝達されたようで、すぐに将軍が馬に騎乗したまま翻り、部隊を引き連れて北門に向かう。その姿に正しく伝わったと分かる。護衛騎士も馬で駆けて戻ってくる姿が見えた。


「前線に向かえば、より良く状況を把握できるのでしょうけれど」


「若奥様、ずっと立っていられては疲労の蓄積も著しいでしょう。紅茶を用意しました。今、毒見係が検査をしますので、椅子におかけになってお待ちくださいませ」


背後から聞こえたシエナの声は大きく、プルデンテの言葉を遮るように食い気味だった。小声で発した言葉が聞かれていたと知り、しくじったと思いつつ、彼女は振り返る。

いつもの毒見係が磁器製のカップに口を付ける姿を見ながら、にこやかなシエナの顔に気後れをしながらも、用意されたテーブルへと足を進めた。




少し冷めた紅茶を飲み、領都の様子に目を向けるプルデンテ。

北門からオルサコリーナ将軍が部隊を引き連れて飛び出す様を目にすれば、東門と西門で矢による掃射が始まった。南門では、障壁の上に誰かしら、確実に守備隊長だろう人物が佇んでいる。移動したレジェスと問答をしているのだろう。

多少の異常はあれど、作戦は滞りなく進んでいると感じた。北門からオルサコリーナ将軍が姿を現し、部隊を引き連れて東門に向かっていく。座っていては見えないと、結局、腰を上げて先程の位置に戻り佇む。

誰一人欠けることなく、叶うならこれ以降は負傷すらなくビセンテ軍を、殲滅できれば。そう願ってもレジェスがいることで叶わないと分かる。


再び、報告に来た兵士の表情は僅かに硬かった。


「南門で負傷者多数となっています。隊の半数が反撃の矢と投擲により、腕を封じられたことで攻撃の続行が不可能となりました」


「・・・命は、あるのですね?」


「幸いにも。障壁によって守られました」


再び負傷者が出たことに胸を痛める。顔に力が入り、眉間に皺が浮かぶほど険しい顔だとプルデンテは自覚できた。


「戦力以前に、バジーレの民でもある兵士の皆様の負傷されたことを苦しく思います。既に治療所に向かわれたでしょうが、しっかりと処置していただけるようお医者様にお伝えください」


「畏まりました・・・しかし、南門においてはもはや攻撃は不可能でしょう。戦力の半分を、それもレジェス・ビセンテ自身に潰された状態です。これ以上、あの男を刺激すれば、力任せに南門が破壊される恐れもあります」


プルデンテは空を見上げる。太陽の位置から分かるのは、作戦が始まって三時間は経過しているということ。


「本日はこれまで、作戦停止を宣言します。三時間にも及ぶ戦闘行為により、兵士の皆様も疲労が蓄積しているでしょう。無理をすれば更に負傷者が増えます。オルサコリーナ将軍と各隊長にもお伝えください」


「畏まりました・・・プルデンテ様も御身を休めてくださいませ」


「見ていただけの女が、何に疲労を感じているというのですか?貴方も含め、敵兵と対峙する方々こそ労るべきです。しっかり体を休めてくださいませ」


「・・・はい、ありがとうございます」


兵士は敬礼をして、先程と同じく即座に馬で駆け出す。遠ざかる彼の広い背中、領都で様子を伺う人々の姿、障壁を用いて未だに戦闘を続ける将軍の部隊と各守備隊の様子。宣言が伝えられ、守備で残る者以外のバジーレの兵達が下がるまで、プルデンテは見守り続けた。






応接の間にて。プルデンテは、オルサコリーナ将軍と各守備隊長達を迎えた。

報告と集った彼らは軍服こそ着替えたようで、汚れも綻びもない。ただ、顔や手などに小さな傷があり、将軍に至っては左手を覆う包帯から血が滲んでいた。離れた場所から見ていただけでは分からない戦いの傷跡に、プルデンテの胸は痛む。


「皆様、非常に傷付かれていていますね。戦いの凄まじさを強く感じます。領都のために骨身を削って戦い抜いてくださっていることを感謝いたします。本当に、ありがとうございます」


腰を折って深く頭を垂れれば、すぐさま声がかけられた。


「いやいや、抵抗を受けるなど当然のことです。ただ、俺の部隊の兵は半分ほど負傷で戦線離脱となってしまいましたが、これは相手が悪かったと思うしかありませんね」


顔を上げれば、南門の守備隊長が眉間に皺を寄せながら話す。彼の右頬には矢によるものと思われる裂傷がある。


「南門のビセンテ軍から伝達の兵を取り逃がしたことが戦況を変えました。激昂状態だって目に見えて分かるレジェス・ビセンテの手槍と強弓で次々にやられましてね。俺も頭をかち割られそうになりましたよ。あの男は怒りによる精神錯乱なんかにはならない。殺意によって正確性、一撃の鋭さが増すって感じでした」


「北門での問答もレジェスの精神状態に影響を及ぼしたのでしょう。奥様に会わせろの一点張りでして、その語彙の無さを突いてしまいました・・・私の発言が南門での猛攻に拍車をかけたのだと思います」


「は?じゃあ、なんだ。お前のせいで俺は死にかけたってわけ?」


「君が死にかけたのは油断をしていたことに他ならないのでは?」


お互いの報告に、お互いの顔を見合せて睨み合う北門と南門の守備隊長。その視線の強さから火花さえ散っているように見えた。

プルデンテは首を横にゆるゆると振って、引き締めていた唇を開いた。


「口論だとしても争いは止めてください。今は団結の時です」


「勿論です、奥様」


「奥様の御心に不安を抱かせてしまいました。大変申し訳ございません」


彼女の仲裁に、彼らはすぐさま言葉を返して、敬礼により謝罪をする。プルデンテとしては、謝るべきは挑発し合ったお互いだと思う。しかし、譲らないと彼らの視線が物語っているため、追及は止めた。

小さく溜め息を漏らすと、オルサコリーナ将軍に視線を合わせた。手の負傷が痛々しいと思うも、いつもと変わらず快活な表情を浮かべていることから、軽症だったのだろうかと推測する。


「オルサコリーナ将軍の突撃により敵軍は撹乱され、二十名以上の敵兵を撃破したと伺っています。貴方のお力によってバジーレの包囲は弱まったと言っても過言ではありません。ありがとうございます」


「プルデンテ様のお言葉が骨身に染みますなぁ!危うく、どこぞの強弓使いに顔面を撃たれそうにはなりましたが、頭に浮かんだ貴女のお姿が力となりました。放たれた矢を咄嗟に掴んだのも幸い。手のひらの肉は抉り取られましたが、つまりはこの程度で済んだというもの!わははははっ!」


「・・・それって走馬灯じゃない?あと、飛んできた矢って掴めるのかよ?」


「俺に聞くでない」


南門と西門の守備隊長達の密やかな会話は、将軍の盛大な笑い声もあってプルデンテの耳にも届かなかった。


「まあ、それは・・・私からすれば、非常に痛ましいと思います。戦場から一旦退き、負傷の手当てに専念をしてください」


「この程度の傷で休んでいては名が廃るというもの!ただ利き手が使えなくなっただけのこと!右手だろうとも存分に戦えますぞ!」


「そうですか?しかし」


「明日は今日の倍、いや、むしろレジェスを含めた全員を地に伏してやりますとも!わはははははっ!!」


豪胆な将軍の豪快な笑い声が応接の間に響き渡る。守備隊長達は顔を顰め、隣にいる南門の守備隊長に関しては、自身の手で両耳を塞いでもいる。

プルデンテは離れた位置の椅子に腰を下ろしていることで騒々しいとは思わないが、オルサコリーナ将軍の胆力に驚いて言葉を失っていた。


「気持ち良く大笑いをする将軍閣下には申し訳ないが、発言してもよろしいでしょうか?」


手を挙げて声を発したのは警ら部隊の隊長だった。彼は将軍に言葉を送っているが、その顔も眼差しも真っ直ぐにプルデンテへと向けられていた。


「ええ、お聞きします」


「此の度の作戦と戦闘の騒音により、領都の民が不安を訴えています。隊員達による警らの最中、合計して百人近くから相談を受けたと報告されました。籠城に際しての不安と息苦しさもあるようで、領主代理であるプルデンテ様の采配に不満も抱いているようです」


「はあ?奥様は領都と民を守ろうとしているのに何が不満だって言うんだよ?」


警ら隊長の報告に、各守備隊長は表情を険しくさせ、南門の守備隊長に至っては口に漏らした。

口を閉ざしたオルサコリーナ将軍が腕を組んで唸る姿を、プルデンテは目にしつつも納得だと頷いた。


「不満を感じるのは当然でしょう。突如の籠城によって領都の外には出れず、兵が忙しなく動き、障壁の向こうからは戦闘が音として響いてくる。領都の人々は巻き込まれたに過ぎないのです。ビセンテからの侵略者によって包囲されたと知っていても、状況を知ることはできず、包囲が解けるという確証はない。それでは人々が不満も不安も、恐怖すら抱くのは当然のこと」


一呼吸置いて、プルデンテは再び唇を開いた。


「人々の抱く感情を完全に拭い去ることはできずとも、領都に住まう方々だからこそ現状を知るべきです」


声を漏らさず、それでも心配からか険しい顔を向けてくる将軍と守備隊長達に、彼女は穏やかな顔を見せる。


「明日の領都の広場にて、私自らがお話させていただきます。これは皆様が住まうバジーレ辺境伯領を守るための戦いだと、話さねばなりません」

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